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第1話
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カタカタカタ…ウィーンガガガガ
機会の音と人がパソコンを奏でる音が無駄に快適な部屋で響き渡る。
日本
二〇八五年
ここまで来ると少子高齢化は進みすぎていた。ニートをなんとかすると言っても労働時間18時間に耐えられなかったり、子供を甘やかしすぎる金持ちが顔をでかくして子供たん達を守っているので、減る訳もなく。
将来有望な者は海外へ行き、そうでないものは大人しく社畜を極めるか。二択だった。何故ならスラム街が出来ないのだ。無駄な設備だけは整い地球を汚すなんたらは行けないとかで野宿などできない。人権問題が発生するからニートを無理やり外へは出せない。老人への年金も莫大。
アンバランスな形で発達した日本には幸せ、娯楽は金持ちのものだった。歴史は繰り返すとでも言うように、名前こそ表立っては言えないが貴族、奴隷といった身分格差が存在した。そんな中余裕のある政治家は無駄なことしか議論しない。かと言って社畜達は刃向かえるほど体力もない。もはやこれから廃れていく以外道の見えない日本では自殺者、過労死者は人口比率を見ずとも言わずと知れた死者数世界一の国となった。例に漏れずに私〔山口奈々〕は過労死した。
走馬灯と言える記憶は、私が忘れてはならない過ちをしたその瞬間のもの。私は失ってはならない大切なものを壊してしまった。その時から私は幸せなんてものを求めなかった。権利などなかったから。
そして終わった奈々の人生を、今度は有力貴族の娘〔トリシア・ラ・ナナリー〕として思い出した。だが入ってくる情報量は凄まじかった。また、記憶とともに熱いナニカが流し込まれる感覚に陥った。それらの衝撃は三歳で耐えられるわけがなく、呻きながら倒れ込んだ。
ナナは記憶の波に溺れていた。大半はパソコン仕事の記憶。だが、記憶が幼いものになっていくにつれ、気持ちが沈むのがわかった。
(嫌だ。知りたくない)
直感でそう思った瞬間に、私の脳内で見ているものではなく眼で見ているものに変化があった。いきなり何も無いところからぼんやりと人影が現れ始め、ハッキリとそれらが見えるようになった。それらというのは四人の美男美女だった。そのうち一番小さい子と目が会った。すると、知りたくなかった遠ざけた記憶の蓋が開いた。それは『過ちの記憶』だ。そしてその記憶が流れてきた。そして理解した。
(ああ、思い出した。私は─────)
思ったことを最後まで確認させはしないとでも言うように金色の光が、溢れてしまった『過ちの記憶』を一番大きなの重厚な扉の中へと戻していく。それと共に私の痛みも同じ扉にしまっていく。そして、それら全てがしまわれた時、私はただ安堵した。そして喪失感を味わった。
(何かを忘れてしまった。亡くしてしまった。それは思い出さなければいけないのに見たくないもの…なんだっけ)
私は無意識のうちにボロボロと涙を声もなく流してしまっていた。もう大丈夫な筈なのに、何かが足りない。唐突に何かに縋りたくなった。だから、私が咄嗟に今の両親を見たのはしょうがないと思う。
しかし両親には気味が悪いというような目を向けられた。更に、両親に何やら指示された侍従に私は今いる部屋を連れだされた。
私は正直縋りたかった両親にこんな対応をされて、孤独感に襲われた。
(私はこの世で誰にも助けてもらえないのか)
自覚したら怖くて仕方がなかった。ブルブル震える足は竦んで動かないのに侍従は止まらず私を引きずりながら歩く。
私の涙は止まらなかった。すると、さっき現れた四人は両親のとった行動に目を見開いて呆然としていたが、ハッとしたように、さっき目のあった美少女が侍従の手を叩き落とし、蹴り飛ばした。そうするや四人は私を囲み、中でも年長(?)の美青年が私の涙をそっと拭ってくれた。同い年ぐらいのもう一人の美青年は私の頭を撫でてくれている。知らない相手にこんなふうにされているのに違和感はなかった。
(誰だろう…分からない。でもとても安心する)
私の涙は止まった。だが、そこでいきなり衛兵達に剣を向けられた。そして、何やら口々に叫んだりしているが言葉の意味がわからずに困惑していると、四人がそれぞれ警戒態勢に入り衛兵達を睨んでいる。もしかしなくても、侍従を蹴っ飛ばしたことが原因だろう。だが、ここはあちら側の言うとうりにすべきな気がする。何故かと言えば、三歳までの記憶もあるのだが、このトリシア家。かなりの有力貴族だ。敵に回せばこの先殺されてしまうだろう。この四人が恐れの対象なのか中心にいる私が対象なのか謎だが、今は戦闘を避けたい。
「ねぇ、あの人たちの要求を聞こう。戦ってはダメ」
衛兵には通じないだろうが、この四人ならば日本語でも通じると思い話しかける。
「ナナがそういうのなら」
そう言って年長(?)美青年が渋々戦闘態勢を解くと、ほかの三人も解いた。これなら大丈夫だろうと安心して一歩踏み出すと年長(?)美青年に
「動くな!!」
と注意された。私は言われた通り踏み出そうとした足をそうっと戻す。年長(?)美青年は補足をするように付け足してくれた。
「アイツらに俺たちの姿は見えていない。とりあえず、『サタハゥラ』と言え。『今は、言うことを聞きます』という意味だから」
私は頷いて教えて貰った言葉を言った。
「サタハゥラ」
言った瞬間、衛兵達戸惑いつつも剣を下ろし、一番偉そうな格好の男が前へ出てついてこいというように歩き出した。たった一言でこうなったことに驚いていると、また年長(?)美青年が教えてくれた。
「さっきの言葉はこの国では絶対に守らないと自分が死ぬ、呪いの言葉として扱われている。実際そんな力はないから安心しろ」
「なるほど」
前を歩く衛兵には聞こえないように呟く。そうして歩くうちに地下室に着いた。衛兵は無慈悲にも私を部屋に入れると(四人は勝手に普通に入った)、ガチャんと音を立てて鍵を閉めて地上に戻って行った。閉じ込められた部屋は質素だが清潔感があり、広かった。灯りもちらほらとついていた。風呂もベッドもキッチンもある。日本のホテルのスイートルームが地下にある感じだ。側面は全て牢屋らしい、頑丈な格子があるが。
でも今一番気になるのはこの四人のことだった。
「ねぇ」
「なんぞやほい?」
さっき思ったけど私の声幼っ。
そして返してきた美青年の返しがなんとも言えない。
「あなた達誰なんです?というかなんなんですか。ユーレイ的な?」
「当たらずとも遠からず…俺らは精霊だよ。ナナへの加護も与えてる」
「ファッ?」
私の返しは正しい。絶対に。危機感とか吹っ飛んでもしょうがないと思う。そして異世界なんだなぁと納得(という名の現実逃避を)した。
「自己紹介した方が早いか。俺は闇の精霊で、【夕顔】という。ユウって呼んでくれ」
さっき助言をくれた年長(?)美青年が挨拶してくれた。闇らしく黒髪黒目で短髪の髪だった。薄く笑うとゾっとする色気がある。
「じゃあ次は俺かなぁ。俺は炎の精霊。【木蓮】レンでいいよ」
さっき頭を撫でてくれた美青年だ。ふわっとしたオレンジの髪に赤い目だった。優しげな笑顔が落ち着く。ユウとは同じぐらいの年に見えるが謎だ。
「次はうち~。水の精霊だze!
名前は【水葵】アオイって呼んでくれぃ」
なんとなくキャラブレブレ。テンション高いし。
髪は白に青がかった綺麗な色だ。後ろで一つにまとめている。見た目は女子高生くらいだが小柄で少しキリッとしていて凛々しい印象だ。笑うと可愛い。侍従の手をたたき落とした子のお姉ちゃんに見える。顔がなんか似てる。雰囲気も。確信できるほどの要素はないんだけど…そう思った。
「最後はヒナだね!光の精霊で名前は【雛芥子】よろしくナナ!」
侍従の手を叩き落とした子だ。活発な印象のヒナ。灯りに照らされると淡く金色に輝く髪の持ち主だ。アオイと同じように後ろでひとつに束ねているがアオイより髪は短い。年齢でいえば中学生だ。やはりアオイと全体的に似ていて凛々しい印象がある。
そして最後は自分だった。
まずは知りたいことを一緒に質問した。
「ナナです。よろしく。…精霊の加護ってなんなの?」
それにはユウが答えてくれた。爆弾発言とともに。
「ナナが魔法が使えるようになったのと、前世の記憶を思い出せること。二十歳までに人を愛し愛されないと俺達がこの世界を滅ぼしちゃうよって感じかな」
「へ?」
「契約がそういうルールなの。あ、前世の記憶は俺達が管理してるから」
「どんな契約…。恋とかしたことないんだけど」
「そこは頑張れ」
なんとも言えない。まず監禁されているから恋とか出来ないと思うのはナナだけ?そんなはずはないと思うのだが。そして二つの気になる言葉。
一つ目
「魔法ってなんの魔法が使えるの?」
「ナナの属性は風だね。ちなみにこの世界で魔法を使える人間はナナだけだよ」
「加護をくれた精霊と属性が違うんだね?」
「うん。加護を与えた時に器となる身体に魔力を流し込んだだけで、属性は本来その器が持っているものによって変わるね」
「そういうものなのねぇ。どうしてナナしか使えないの?」
「ん~。精霊の加護があれば魔法が使えるようになるけど、基本精霊は人と関わらないから。恋が実らないと世界を壊さなきゃいけないって言うのが面倒臭いのもあるし、世界を壊してしまうと必然的に自分も死ななきゃならないからね…基本めんどくさがり屋の精霊にはリスクが大きいんだよ」
なるほど。ここで死のリスクを背負って四人同時に加護をくれたことに納得できるのは、やはり二つ目の疑問と関係していて。
二つ目
「…………記憶の管理ってさ。『奈々』の記憶のこと?」
「今世も前世もどっちも」
「ならさ…なにかいじったでしょ。特に前世の記憶」
「うん」
「それ、思い出したいんだけど…………今、大事なことを忘れてるよね?」
その問いに四人は揃って困ったように、哀しそうに笑った。そして、長い沈黙の後、ユウが静かに答えてくれた。
「俺達はね、確かに記憶の管理ができる。だけど、それはナナが心の底から『知りたい』とか『思い出したい』と思ったら思い出せるものなんだ。それが出来ないならそれはナナがさっき見た記憶の中で知りたくないと思った記憶だよ。…………俺達はナナが知りたくないことを教えることは出来ない」
その答えを聞いて私は残念だと思うより、安堵の方が大きかった。しかし、知りたくない事柄だけはわかった。
【この四人の正体】
それが私が最も知りたくないことだ。それだけがハッキリとわかった。人と本来関わることの無い精霊達が私を加護する理由、彼らの正体が私の前世と関係している。
機会の音と人がパソコンを奏でる音が無駄に快適な部屋で響き渡る。
日本
二〇八五年
ここまで来ると少子高齢化は進みすぎていた。ニートをなんとかすると言っても労働時間18時間に耐えられなかったり、子供を甘やかしすぎる金持ちが顔をでかくして子供たん達を守っているので、減る訳もなく。
将来有望な者は海外へ行き、そうでないものは大人しく社畜を極めるか。二択だった。何故ならスラム街が出来ないのだ。無駄な設備だけは整い地球を汚すなんたらは行けないとかで野宿などできない。人権問題が発生するからニートを無理やり外へは出せない。老人への年金も莫大。
アンバランスな形で発達した日本には幸せ、娯楽は金持ちのものだった。歴史は繰り返すとでも言うように、名前こそ表立っては言えないが貴族、奴隷といった身分格差が存在した。そんな中余裕のある政治家は無駄なことしか議論しない。かと言って社畜達は刃向かえるほど体力もない。もはやこれから廃れていく以外道の見えない日本では自殺者、過労死者は人口比率を見ずとも言わずと知れた死者数世界一の国となった。例に漏れずに私〔山口奈々〕は過労死した。
走馬灯と言える記憶は、私が忘れてはならない過ちをしたその瞬間のもの。私は失ってはならない大切なものを壊してしまった。その時から私は幸せなんてものを求めなかった。権利などなかったから。
そして終わった奈々の人生を、今度は有力貴族の娘〔トリシア・ラ・ナナリー〕として思い出した。だが入ってくる情報量は凄まじかった。また、記憶とともに熱いナニカが流し込まれる感覚に陥った。それらの衝撃は三歳で耐えられるわけがなく、呻きながら倒れ込んだ。
ナナは記憶の波に溺れていた。大半はパソコン仕事の記憶。だが、記憶が幼いものになっていくにつれ、気持ちが沈むのがわかった。
(嫌だ。知りたくない)
直感でそう思った瞬間に、私の脳内で見ているものではなく眼で見ているものに変化があった。いきなり何も無いところからぼんやりと人影が現れ始め、ハッキリとそれらが見えるようになった。それらというのは四人の美男美女だった。そのうち一番小さい子と目が会った。すると、知りたくなかった遠ざけた記憶の蓋が開いた。それは『過ちの記憶』だ。そしてその記憶が流れてきた。そして理解した。
(ああ、思い出した。私は─────)
思ったことを最後まで確認させはしないとでも言うように金色の光が、溢れてしまった『過ちの記憶』を一番大きなの重厚な扉の中へと戻していく。それと共に私の痛みも同じ扉にしまっていく。そして、それら全てがしまわれた時、私はただ安堵した。そして喪失感を味わった。
(何かを忘れてしまった。亡くしてしまった。それは思い出さなければいけないのに見たくないもの…なんだっけ)
私は無意識のうちにボロボロと涙を声もなく流してしまっていた。もう大丈夫な筈なのに、何かが足りない。唐突に何かに縋りたくなった。だから、私が咄嗟に今の両親を見たのはしょうがないと思う。
しかし両親には気味が悪いというような目を向けられた。更に、両親に何やら指示された侍従に私は今いる部屋を連れだされた。
私は正直縋りたかった両親にこんな対応をされて、孤独感に襲われた。
(私はこの世で誰にも助けてもらえないのか)
自覚したら怖くて仕方がなかった。ブルブル震える足は竦んで動かないのに侍従は止まらず私を引きずりながら歩く。
私の涙は止まらなかった。すると、さっき現れた四人は両親のとった行動に目を見開いて呆然としていたが、ハッとしたように、さっき目のあった美少女が侍従の手を叩き落とし、蹴り飛ばした。そうするや四人は私を囲み、中でも年長(?)の美青年が私の涙をそっと拭ってくれた。同い年ぐらいのもう一人の美青年は私の頭を撫でてくれている。知らない相手にこんなふうにされているのに違和感はなかった。
(誰だろう…分からない。でもとても安心する)
私の涙は止まった。だが、そこでいきなり衛兵達に剣を向けられた。そして、何やら口々に叫んだりしているが言葉の意味がわからずに困惑していると、四人がそれぞれ警戒態勢に入り衛兵達を睨んでいる。もしかしなくても、侍従を蹴っ飛ばしたことが原因だろう。だが、ここはあちら側の言うとうりにすべきな気がする。何故かと言えば、三歳までの記憶もあるのだが、このトリシア家。かなりの有力貴族だ。敵に回せばこの先殺されてしまうだろう。この四人が恐れの対象なのか中心にいる私が対象なのか謎だが、今は戦闘を避けたい。
「ねぇ、あの人たちの要求を聞こう。戦ってはダメ」
衛兵には通じないだろうが、この四人ならば日本語でも通じると思い話しかける。
「ナナがそういうのなら」
そう言って年長(?)美青年が渋々戦闘態勢を解くと、ほかの三人も解いた。これなら大丈夫だろうと安心して一歩踏み出すと年長(?)美青年に
「動くな!!」
と注意された。私は言われた通り踏み出そうとした足をそうっと戻す。年長(?)美青年は補足をするように付け足してくれた。
「アイツらに俺たちの姿は見えていない。とりあえず、『サタハゥラ』と言え。『今は、言うことを聞きます』という意味だから」
私は頷いて教えて貰った言葉を言った。
「サタハゥラ」
言った瞬間、衛兵達戸惑いつつも剣を下ろし、一番偉そうな格好の男が前へ出てついてこいというように歩き出した。たった一言でこうなったことに驚いていると、また年長(?)美青年が教えてくれた。
「さっきの言葉はこの国では絶対に守らないと自分が死ぬ、呪いの言葉として扱われている。実際そんな力はないから安心しろ」
「なるほど」
前を歩く衛兵には聞こえないように呟く。そうして歩くうちに地下室に着いた。衛兵は無慈悲にも私を部屋に入れると(四人は勝手に普通に入った)、ガチャんと音を立てて鍵を閉めて地上に戻って行った。閉じ込められた部屋は質素だが清潔感があり、広かった。灯りもちらほらとついていた。風呂もベッドもキッチンもある。日本のホテルのスイートルームが地下にある感じだ。側面は全て牢屋らしい、頑丈な格子があるが。
でも今一番気になるのはこの四人のことだった。
「ねぇ」
「なんぞやほい?」
さっき思ったけど私の声幼っ。
そして返してきた美青年の返しがなんとも言えない。
「あなた達誰なんです?というかなんなんですか。ユーレイ的な?」
「当たらずとも遠からず…俺らは精霊だよ。ナナへの加護も与えてる」
「ファッ?」
私の返しは正しい。絶対に。危機感とか吹っ飛んでもしょうがないと思う。そして異世界なんだなぁと納得(という名の現実逃避を)した。
「自己紹介した方が早いか。俺は闇の精霊で、【夕顔】という。ユウって呼んでくれ」
さっき助言をくれた年長(?)美青年が挨拶してくれた。闇らしく黒髪黒目で短髪の髪だった。薄く笑うとゾっとする色気がある。
「じゃあ次は俺かなぁ。俺は炎の精霊。【木蓮】レンでいいよ」
さっき頭を撫でてくれた美青年だ。ふわっとしたオレンジの髪に赤い目だった。優しげな笑顔が落ち着く。ユウとは同じぐらいの年に見えるが謎だ。
「次はうち~。水の精霊だze!
名前は【水葵】アオイって呼んでくれぃ」
なんとなくキャラブレブレ。テンション高いし。
髪は白に青がかった綺麗な色だ。後ろで一つにまとめている。見た目は女子高生くらいだが小柄で少しキリッとしていて凛々しい印象だ。笑うと可愛い。侍従の手をたたき落とした子のお姉ちゃんに見える。顔がなんか似てる。雰囲気も。確信できるほどの要素はないんだけど…そう思った。
「最後はヒナだね!光の精霊で名前は【雛芥子】よろしくナナ!」
侍従の手を叩き落とした子だ。活発な印象のヒナ。灯りに照らされると淡く金色に輝く髪の持ち主だ。アオイと同じように後ろでひとつに束ねているがアオイより髪は短い。年齢でいえば中学生だ。やはりアオイと全体的に似ていて凛々しい印象がある。
そして最後は自分だった。
まずは知りたいことを一緒に質問した。
「ナナです。よろしく。…精霊の加護ってなんなの?」
それにはユウが答えてくれた。爆弾発言とともに。
「ナナが魔法が使えるようになったのと、前世の記憶を思い出せること。二十歳までに人を愛し愛されないと俺達がこの世界を滅ぼしちゃうよって感じかな」
「へ?」
「契約がそういうルールなの。あ、前世の記憶は俺達が管理してるから」
「どんな契約…。恋とかしたことないんだけど」
「そこは頑張れ」
なんとも言えない。まず監禁されているから恋とか出来ないと思うのはナナだけ?そんなはずはないと思うのだが。そして二つの気になる言葉。
一つ目
「魔法ってなんの魔法が使えるの?」
「ナナの属性は風だね。ちなみにこの世界で魔法を使える人間はナナだけだよ」
「加護をくれた精霊と属性が違うんだね?」
「うん。加護を与えた時に器となる身体に魔力を流し込んだだけで、属性は本来その器が持っているものによって変わるね」
「そういうものなのねぇ。どうしてナナしか使えないの?」
「ん~。精霊の加護があれば魔法が使えるようになるけど、基本精霊は人と関わらないから。恋が実らないと世界を壊さなきゃいけないって言うのが面倒臭いのもあるし、世界を壊してしまうと必然的に自分も死ななきゃならないからね…基本めんどくさがり屋の精霊にはリスクが大きいんだよ」
なるほど。ここで死のリスクを背負って四人同時に加護をくれたことに納得できるのは、やはり二つ目の疑問と関係していて。
二つ目
「…………記憶の管理ってさ。『奈々』の記憶のこと?」
「今世も前世もどっちも」
「ならさ…なにかいじったでしょ。特に前世の記憶」
「うん」
「それ、思い出したいんだけど…………今、大事なことを忘れてるよね?」
その問いに四人は揃って困ったように、哀しそうに笑った。そして、長い沈黙の後、ユウが静かに答えてくれた。
「俺達はね、確かに記憶の管理ができる。だけど、それはナナが心の底から『知りたい』とか『思い出したい』と思ったら思い出せるものなんだ。それが出来ないならそれはナナがさっき見た記憶の中で知りたくないと思った記憶だよ。…………俺達はナナが知りたくないことを教えることは出来ない」
その答えを聞いて私は残念だと思うより、安堵の方が大きかった。しかし、知りたくない事柄だけはわかった。
【この四人の正体】
それが私が最も知りたくないことだ。それだけがハッキリとわかった。人と本来関わることの無い精霊達が私を加護する理由、彼らの正体が私の前世と関係している。
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