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第2話
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「でも、今は知りたくないならばそれでいい」
ユウはそう言って頭を撫でてくれる。やはりとても落ち着く。この安堵の具合からして、この四人が前世にとって嫌な人ではないのだということを物語っているんだと思う。だが、知りたくないと思うならしょうがない。薄情だとは思う。酷いとも思う。この四人は少し悲しそうなのに、何もしない選択をするのは非道だとも。だけど、今は私のわがままを通してしまいたかった。
「ごめんなさい。いつか必ず四人の事は思い出すから…ごめん」
「謝んな。今の俺らを知ってくれれば今はいいから」
四人の優しさは嬉しくもあり、罪悪感を増させた。
「まぁ今できないことをいつまでもうじうじ考えないで、これからのこと考えよ!!」
ヒナがハキハキとそう告げた。
確かにそっちが大事だった。人を愛すとか以前に監禁されてちゃできないし。
「この牢屋の格子なら簡単にぶっ壊せるでしょ?」
アオイの提案がなんとも凄まじい。だが、そんなことしても逃げられないだろう。
「この家かなり有力貴族だよ?国に追われたら簡単に私死ぬよ…恋とか以前に、追われている奴を好きになれる人を探し出せる確率はほぼゼロだし、別の方法でお願いしたいかな」
「でも出れなかったら意味ないじゃん?」
アオイの言うことは最もだ。そうだなぁ。それがしなくちゃならない状況は出来れば最後の手段にしたい。だけど、私は今限りなく弱い。…………となるとやっぱり。
「十年待って、それでも出してもらえなかったら逃げよう!だから、それまで私は逃げても生きていけるように修行する」
精霊達は私の提案に黙りこくった。え?結構いいと思うんだよね。せっかく使えるようになった魔法の練習だってしたい。魔法だよ?前世でもずっと憧れはあったのだ。極めたい。のめり込みたい。ひとつのことに興味を持つと極めたくなるタチだった。
「別にいいでしょ。でもそれには四人に色々教えてもらわないといけないんだけど…お願いしてもいいかな?」
未だに四人は固まっている。
困ったなぁ。でもこれが妥協策だ。
「お願いします!!」
ガバッと頭を下げて言う。承諾を得るまで絶対頭はあげてなるものか!
「「「「はぁ…………」」」」
ん?ため息のシンクロとか初めて聞いた。地味に初体験。
「分かったよ…どうせダメって言っても引き下がらないし」
ユウが呆れたとばかりに苦笑する。
「俺もそうするほかないとはおもうよ?それに、ナナは決めたことは最後までやり通すもんなぁ」
暖かく微笑むレンは懐かしそうに目を細めている。
「決まったならさっさとやろうか!」
リンが楽しそうに提案した。
でも何からやるのかと思っていると。アオイとユウがニタァっと人の悪そうな顔になった。
「じゃあ、まずはお勉強からだね。まずは一ヶ月以内にこの国の言葉を覚えてもらうよ!」
「それから、魔法の訓練と護身術。あと、この国の歴史と文化とか…やるからには極めるよね?ナナちゃ~ん?」
二人の提案は願ってもないことだ。だが、その笑みが恐ろしくて仕方が無いのは、何故だろうなぁ。更にリンの顔が引きつっている。レンは我関せずというように、ろうそくの火を穏やかな虚ろな目で見ている。
そうして始まったオベンキョウ…………
「じゃあまずは物の名前から」
「よし、じゃあ次はテスト」
「次は応用」
「次は…」
ハッキリ言おう。スパルタすぎる。朝起きたら服を着替え、いつの間にか置いてある朝ごはん(冷めてるけどレンがあっためる)を食べると、すぐに勉強開始。それからは無休憩で夜ご飯が届くまで勉強。水はアオイが出してくれる。因みに食事に毒はないし服も綺麗だしなんだかんだ手厚い。侍女とかが持ってくるのではなく覆面のガッツリ装備した衛兵が持ってくるけど。掃除については、覚えた言葉で
「掃除用具が欲しいです」
と頼んだら翌日の朝には置いてあった。勉強している間にレンが掃除してくれている。魔法は夜ご飯を食べ終わったあとにヒナに教えて貰った。ヒナは丁寧で、中々分かりやすい。暇さえあれば魔法を駆使しているうちに上手くなっていると思う。因みに魔力切れとかないのか聞いたら
「魔力っていうのは血液と同じなんだ。ヒナ達が母親的な感じで魔力を注いだらその魔力達はずっと循環している訳ね?だから、魔法を使うってことはは血液で言う酸素をとりこむ活動とおんなじ。魔力は尽きることはなくて、ナナが持っている魔力分たくさんの魔法が使えるんだよ。因みに普通に一人の精霊の加護を受けてる人間より、四人の加護を受けたナナは四倍の魔力を持ってるよ」
「精霊の魔力とかはどうなっているの?」
「無限大」
「わぁ」
そんな感じだった。因みに、精霊達は浮いたり出来るけど物の間をすり抜けることは出来ないから牢からは私と同じく出れない。だが、精霊は食事とか排便とかしないので、まぁいっか程度に思っている。
そんなこんなしているうちに一年がたった。勿論牢からは出してもらえていない。でも運動とかはだだっ広い部屋のおかげで出来るし魔法を駆使すれば浮いたりどんなに堅いものを物を切ったりすることも簡単になった。普通の空気と魔法での空気の抵抗が上手く出来ずにいた頃は部屋が荒れまくって、その度にレンが掃除してくれた。学力もあれからメニューが変わらずサクサク進み、こちらの言葉は難なく覚えられた。脳が若いっていいねぇ。
そして二年目になると逃げた時料理できるように、と衛兵さんに調理器具一式と食材を頼むようにした。また、このご時世、紙は高価で、書き練習以外は使わないので勉強とかは口頭でひたすら覚えていたら記憶力はめっちゃ上がった。
そして三年目
未だに外へは出れないまま六歳になった。元々両親は私に興味が無いと言った感じだったし、しょうがないと思い始めた。誕生日だけは勉強と訓練をやめて一日中精霊が祝ってくれた。
しかし
四年目になる前日の夜ご飯に事件は起きた。
「やぁ、私の忌々しい娘よ」
そう言って現れたのは四年前より格段にハゲ散らかした父だった。隣には、相変わらず無関心と言った態度の母と、私より年下のかわいい男の子と女の子。双子なのだろう顔が似ている。
そして私にも。ここには鏡はないが、顔を洗う時に水に映る自分の容姿には、私は満足していた。美形だったからだ。自分で言うのもなんだが前世は中々悲惨というか…ふれないでくれ。
まぁ、私の兄妹なんだろう。あどけない雰囲気でオドオドしている。四歳くらいだろうか。何故この双子を連れてきたのだろう…?
嫌な予感がする。でも、まさか殺されるとかないだろうな?全力で抵抗するぞ、こっちは。一応世界も背負っているしなぁ。
「何の用ですか?今更」
忌々しいなどと言われたが、こっちからしてもアンタらは忌々しい。しかしそう聞くと両親は怪訝な顔をしてしまう。
「やはり、一人で暴れ回ったり喋ったりしているというのは本当のようだな」
あ。そいえば精霊たち見えないんだっけ?そうなると私のすること全部奇行だよなぁ。一人で一日中喋って魔法使って笑ってるわけだし。しかも知識は増えていくし。話せない言葉が話せているし。考えてみると私やべぇやつじゃん。いいけど別に。
「はっ。まぁいい。貴様には明日から王宮で過ごしてもらう」
「王宮?殺しに来たんじゃないんですか?」
「貴様みたいな得体の知れないものを殺して呪われたくないのだよ」
「アハハハハハハハ!!
勘がいいですねぇ。その通りですよ!私を殺したら世界が滅びますよ?良かったですね~愚行をしなくて」
ここぞとばかりにバカにしてやる。餓鬼らしい言動だが溜まっていた鬱憤を晴らすくらいいいだろう。
「貴様がそうして笑っていられるのも今のうちさ」
「?まぁ、なんでもいいですけど」
そう言いながら手を薙ぎ払う。その瞬間風が細い刀のようになり、父親の首を皮一枚掠めて行った。血がたら~と流れた瞬間父は悲鳴をあげ、尻餅をついた。愚かなその姿を見るのは愉快だった。隣の精霊達も今は何も言わず殺気を両親に向けている。耐えきれなくなったのか母親は双子と夫を置いて逃げていった。
私はここで魔法を使うべきではなかったと後で思い知る。
「衛兵を連れて来ないとは馬鹿なことを…手元が狂ったらあなたは今死んでいましたよ?」
「ばっっ、ばけもの!!」
「貴方がそれ言っちゃいます?ていうか王宮がなんちゃらというのは?」
「あ…それはな。陛下が貴様についているセイレイについて研究がしたいかららしい」
無様な格好で言っていることに私は恐怖を覚えた。何故陛下が精霊について知っているんだ?
「研究?何をするんですか」
「…それは…知らない」
随分正直で無能だ。精霊達を目で確認したらしょうがないというように渋々頷いたので、ため息をついて私は王宮行きを承諾した。
「その子らは私の兄妹ですか?こんな危ない所に連れてくるとは馬鹿ですか」
「ちがうの…、ぼくたち、おねえちゃんにあいたくて」
一生懸命答える姿は、焦っている。何だか悪いことを言ってしまった。
「父様、貴方は先に帰ってください。邪魔です」
「ああ、分かった」
嬉々としてそれを受け入れ双子を置いていくこの両親の非道さは最悪だと思った。
「おいで」
優しく言うと大人しく双子は寄ってきた。格子越しにだったが二人の頭を撫でてあげるとにぱーっと笑ってくれた。超かわいい。
「名前、教えてくれる?」
「ぼくはレオ」
「わたしはニーナ」
「そっかぁ、いい名前だね!今は何歳なの?」
「「よっつ!!」」
やばいかわいい。ほんとにかわいい。頬がゆるゆるなのが自分でわかる。つまりこの子達は私が投獄されてからできた子なんだ。でも不思議だった。なんでそんなに懐いてくれるのか。会ったことは無いはずなのに。
「二人はどーして私に会いたかったの?」
「おうじさまがね!おねーちゃんのお話いっぱいしてくれたの!だからぼくたちずっとおねーちゃんに会いたかったの」
「じゃあ、私はこんなに可愛い子達が逢いに来てくれるように言ってくれた王子様にお礼言わなきゃね」
「きっとすぐあえるよ!」
すぐ?ああ、明日ここを出るのか。その時、微かな音が聞こえてそっそを見ると衛兵が双子を迎えに来た。手招きしている。
「さて、会いに来てくれてありがとう。愛してるよ、レオ、ニーナ。本当はもっと話したいけどさよならだ」
そう言って頭を撫でると二人は不思議そうに私を見ながらまたにぱーっと笑った。
「じゃあね、もう戻った方がいいよ」
「まって!はいこれ、おにーちゃんがおねーちゃんにプレゼントだって!またね!!ぜったいまた会おうね!」
二人は『また』を主張して帰って行った。あとは古い銀製の腕輪を貰った。だが、今後は多分会えないだろう。
「可愛いねぇ…私に兄弟ができていたとは」
「ナナ、明日はいいのか?逃げなくて」
「もし、王宮でも閉じ込められたら逃げるけど…様子による」
「そうか…」
ユウは心配そうにしている。レンも同じように心配している。アオイも、ヒナも。だから私は真剣な表情を作った。
「逃げるにしても王宮に行くにしても危険度は変わらない。臆してないで強気で行こう」
「「「「了解」」」」
そうして明日に備えて私は寝た。
ユウはそう言って頭を撫でてくれる。やはりとても落ち着く。この安堵の具合からして、この四人が前世にとって嫌な人ではないのだということを物語っているんだと思う。だが、知りたくないと思うならしょうがない。薄情だとは思う。酷いとも思う。この四人は少し悲しそうなのに、何もしない選択をするのは非道だとも。だけど、今は私のわがままを通してしまいたかった。
「ごめんなさい。いつか必ず四人の事は思い出すから…ごめん」
「謝んな。今の俺らを知ってくれれば今はいいから」
四人の優しさは嬉しくもあり、罪悪感を増させた。
「まぁ今できないことをいつまでもうじうじ考えないで、これからのこと考えよ!!」
ヒナがハキハキとそう告げた。
確かにそっちが大事だった。人を愛すとか以前に監禁されてちゃできないし。
「この牢屋の格子なら簡単にぶっ壊せるでしょ?」
アオイの提案がなんとも凄まじい。だが、そんなことしても逃げられないだろう。
「この家かなり有力貴族だよ?国に追われたら簡単に私死ぬよ…恋とか以前に、追われている奴を好きになれる人を探し出せる確率はほぼゼロだし、別の方法でお願いしたいかな」
「でも出れなかったら意味ないじゃん?」
アオイの言うことは最もだ。そうだなぁ。それがしなくちゃならない状況は出来れば最後の手段にしたい。だけど、私は今限りなく弱い。…………となるとやっぱり。
「十年待って、それでも出してもらえなかったら逃げよう!だから、それまで私は逃げても生きていけるように修行する」
精霊達は私の提案に黙りこくった。え?結構いいと思うんだよね。せっかく使えるようになった魔法の練習だってしたい。魔法だよ?前世でもずっと憧れはあったのだ。極めたい。のめり込みたい。ひとつのことに興味を持つと極めたくなるタチだった。
「別にいいでしょ。でもそれには四人に色々教えてもらわないといけないんだけど…お願いしてもいいかな?」
未だに四人は固まっている。
困ったなぁ。でもこれが妥協策だ。
「お願いします!!」
ガバッと頭を下げて言う。承諾を得るまで絶対頭はあげてなるものか!
「「「「はぁ…………」」」」
ん?ため息のシンクロとか初めて聞いた。地味に初体験。
「分かったよ…どうせダメって言っても引き下がらないし」
ユウが呆れたとばかりに苦笑する。
「俺もそうするほかないとはおもうよ?それに、ナナは決めたことは最後までやり通すもんなぁ」
暖かく微笑むレンは懐かしそうに目を細めている。
「決まったならさっさとやろうか!」
リンが楽しそうに提案した。
でも何からやるのかと思っていると。アオイとユウがニタァっと人の悪そうな顔になった。
「じゃあ、まずはお勉強からだね。まずは一ヶ月以内にこの国の言葉を覚えてもらうよ!」
「それから、魔法の訓練と護身術。あと、この国の歴史と文化とか…やるからには極めるよね?ナナちゃ~ん?」
二人の提案は願ってもないことだ。だが、その笑みが恐ろしくて仕方が無いのは、何故だろうなぁ。更にリンの顔が引きつっている。レンは我関せずというように、ろうそくの火を穏やかな虚ろな目で見ている。
そうして始まったオベンキョウ…………
「じゃあまずは物の名前から」
「よし、じゃあ次はテスト」
「次は応用」
「次は…」
ハッキリ言おう。スパルタすぎる。朝起きたら服を着替え、いつの間にか置いてある朝ごはん(冷めてるけどレンがあっためる)を食べると、すぐに勉強開始。それからは無休憩で夜ご飯が届くまで勉強。水はアオイが出してくれる。因みに食事に毒はないし服も綺麗だしなんだかんだ手厚い。侍女とかが持ってくるのではなく覆面のガッツリ装備した衛兵が持ってくるけど。掃除については、覚えた言葉で
「掃除用具が欲しいです」
と頼んだら翌日の朝には置いてあった。勉強している間にレンが掃除してくれている。魔法は夜ご飯を食べ終わったあとにヒナに教えて貰った。ヒナは丁寧で、中々分かりやすい。暇さえあれば魔法を駆使しているうちに上手くなっていると思う。因みに魔力切れとかないのか聞いたら
「魔力っていうのは血液と同じなんだ。ヒナ達が母親的な感じで魔力を注いだらその魔力達はずっと循環している訳ね?だから、魔法を使うってことはは血液で言う酸素をとりこむ活動とおんなじ。魔力は尽きることはなくて、ナナが持っている魔力分たくさんの魔法が使えるんだよ。因みに普通に一人の精霊の加護を受けてる人間より、四人の加護を受けたナナは四倍の魔力を持ってるよ」
「精霊の魔力とかはどうなっているの?」
「無限大」
「わぁ」
そんな感じだった。因みに、精霊達は浮いたり出来るけど物の間をすり抜けることは出来ないから牢からは私と同じく出れない。だが、精霊は食事とか排便とかしないので、まぁいっか程度に思っている。
そんなこんなしているうちに一年がたった。勿論牢からは出してもらえていない。でも運動とかはだだっ広い部屋のおかげで出来るし魔法を駆使すれば浮いたりどんなに堅いものを物を切ったりすることも簡単になった。普通の空気と魔法での空気の抵抗が上手く出来ずにいた頃は部屋が荒れまくって、その度にレンが掃除してくれた。学力もあれからメニューが変わらずサクサク進み、こちらの言葉は難なく覚えられた。脳が若いっていいねぇ。
そして二年目になると逃げた時料理できるように、と衛兵さんに調理器具一式と食材を頼むようにした。また、このご時世、紙は高価で、書き練習以外は使わないので勉強とかは口頭でひたすら覚えていたら記憶力はめっちゃ上がった。
そして三年目
未だに外へは出れないまま六歳になった。元々両親は私に興味が無いと言った感じだったし、しょうがないと思い始めた。誕生日だけは勉強と訓練をやめて一日中精霊が祝ってくれた。
しかし
四年目になる前日の夜ご飯に事件は起きた。
「やぁ、私の忌々しい娘よ」
そう言って現れたのは四年前より格段にハゲ散らかした父だった。隣には、相変わらず無関心と言った態度の母と、私より年下のかわいい男の子と女の子。双子なのだろう顔が似ている。
そして私にも。ここには鏡はないが、顔を洗う時に水に映る自分の容姿には、私は満足していた。美形だったからだ。自分で言うのもなんだが前世は中々悲惨というか…ふれないでくれ。
まぁ、私の兄妹なんだろう。あどけない雰囲気でオドオドしている。四歳くらいだろうか。何故この双子を連れてきたのだろう…?
嫌な予感がする。でも、まさか殺されるとかないだろうな?全力で抵抗するぞ、こっちは。一応世界も背負っているしなぁ。
「何の用ですか?今更」
忌々しいなどと言われたが、こっちからしてもアンタらは忌々しい。しかしそう聞くと両親は怪訝な顔をしてしまう。
「やはり、一人で暴れ回ったり喋ったりしているというのは本当のようだな」
あ。そいえば精霊たち見えないんだっけ?そうなると私のすること全部奇行だよなぁ。一人で一日中喋って魔法使って笑ってるわけだし。しかも知識は増えていくし。話せない言葉が話せているし。考えてみると私やべぇやつじゃん。いいけど別に。
「はっ。まぁいい。貴様には明日から王宮で過ごしてもらう」
「王宮?殺しに来たんじゃないんですか?」
「貴様みたいな得体の知れないものを殺して呪われたくないのだよ」
「アハハハハハハハ!!
勘がいいですねぇ。その通りですよ!私を殺したら世界が滅びますよ?良かったですね~愚行をしなくて」
ここぞとばかりにバカにしてやる。餓鬼らしい言動だが溜まっていた鬱憤を晴らすくらいいいだろう。
「貴様がそうして笑っていられるのも今のうちさ」
「?まぁ、なんでもいいですけど」
そう言いながら手を薙ぎ払う。その瞬間風が細い刀のようになり、父親の首を皮一枚掠めて行った。血がたら~と流れた瞬間父は悲鳴をあげ、尻餅をついた。愚かなその姿を見るのは愉快だった。隣の精霊達も今は何も言わず殺気を両親に向けている。耐えきれなくなったのか母親は双子と夫を置いて逃げていった。
私はここで魔法を使うべきではなかったと後で思い知る。
「衛兵を連れて来ないとは馬鹿なことを…手元が狂ったらあなたは今死んでいましたよ?」
「ばっっ、ばけもの!!」
「貴方がそれ言っちゃいます?ていうか王宮がなんちゃらというのは?」
「あ…それはな。陛下が貴様についているセイレイについて研究がしたいかららしい」
無様な格好で言っていることに私は恐怖を覚えた。何故陛下が精霊について知っているんだ?
「研究?何をするんですか」
「…それは…知らない」
随分正直で無能だ。精霊達を目で確認したらしょうがないというように渋々頷いたので、ため息をついて私は王宮行きを承諾した。
「その子らは私の兄妹ですか?こんな危ない所に連れてくるとは馬鹿ですか」
「ちがうの…、ぼくたち、おねえちゃんにあいたくて」
一生懸命答える姿は、焦っている。何だか悪いことを言ってしまった。
「父様、貴方は先に帰ってください。邪魔です」
「ああ、分かった」
嬉々としてそれを受け入れ双子を置いていくこの両親の非道さは最悪だと思った。
「おいで」
優しく言うと大人しく双子は寄ってきた。格子越しにだったが二人の頭を撫でてあげるとにぱーっと笑ってくれた。超かわいい。
「名前、教えてくれる?」
「ぼくはレオ」
「わたしはニーナ」
「そっかぁ、いい名前だね!今は何歳なの?」
「「よっつ!!」」
やばいかわいい。ほんとにかわいい。頬がゆるゆるなのが自分でわかる。つまりこの子達は私が投獄されてからできた子なんだ。でも不思議だった。なんでそんなに懐いてくれるのか。会ったことは無いはずなのに。
「二人はどーして私に会いたかったの?」
「おうじさまがね!おねーちゃんのお話いっぱいしてくれたの!だからぼくたちずっとおねーちゃんに会いたかったの」
「じゃあ、私はこんなに可愛い子達が逢いに来てくれるように言ってくれた王子様にお礼言わなきゃね」
「きっとすぐあえるよ!」
すぐ?ああ、明日ここを出るのか。その時、微かな音が聞こえてそっそを見ると衛兵が双子を迎えに来た。手招きしている。
「さて、会いに来てくれてありがとう。愛してるよ、レオ、ニーナ。本当はもっと話したいけどさよならだ」
そう言って頭を撫でると二人は不思議そうに私を見ながらまたにぱーっと笑った。
「じゃあね、もう戻った方がいいよ」
「まって!はいこれ、おにーちゃんがおねーちゃんにプレゼントだって!またね!!ぜったいまた会おうね!」
二人は『また』を主張して帰って行った。あとは古い銀製の腕輪を貰った。だが、今後は多分会えないだろう。
「可愛いねぇ…私に兄弟ができていたとは」
「ナナ、明日はいいのか?逃げなくて」
「もし、王宮でも閉じ込められたら逃げるけど…様子による」
「そうか…」
ユウは心配そうにしている。レンも同じように心配している。アオイも、ヒナも。だから私は真剣な表情を作った。
「逃げるにしても王宮に行くにしても危険度は変わらない。臆してないで強気で行こう」
「「「「了解」」」」
そうして明日に備えて私は寝た。
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