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本編
⑤
「――は?」
自分でも驚くほどに間抜けな声だった。
でも、当然だろう。いきなり『本当に親友だと思っているの?』なんて問いかけられたら。
「ノアムの本当の気持ちを聞かせて。俺のこと、親友だって思ってる?」
ルドヴィックの双眸が俺を射抜く。
鼓動がどんどん駆け足になる。嫌な汗が背中を伝った。
「……そりゃあ、もちろん」
声は震えていなかっただろうか。
不安を抱きつつうつむいて答えると、ルドヴィックは「ふぅん」と声を上げる。
面白くなさそうな声に、胸がぎゅうっと苦しくなる。
「そっか。変なこと聞いてごめん」
ルドヴィックが俺の肩に額を押し付ける。ぐりぐりこすりつけるように動かして、俺を上目遣いで見つめた。
「俺とノアムはずっと一緒だよね。これまでも、これからも」
「うん」
うなずくと、ルドヴィックが目を伏せた。
ルドヴィックは美しい。日の光を浴びて輝く金髪も、青の双眸も。
職人の手によってこの世に作り出された芸術品だと聞いても、信じてしまうだろう。
「だったらいいんだ。ノアムが俺の側にいてくれるなら、いいんだ」
「……なんだよ」
「いや、さみしいなって思っただけ」
俺に身を寄せて、ルドヴィックが甘えたような声を出す。
「大人になったら友情が壊れることもあるからさ。俺、怖くって」
「……そっか。けど、俺はルドヴィックの側にいるよ」
もちろん、『親友』として。
「いつかはお互い結婚して家庭を持つだろうけど、そうなっても仲良くしような」
……と、そういえば。
(俺も結婚する必要があるんだっけ。弟がいるとはいえ、長子としての責任はあるし)
俺には十二歳下の弟がいる。かなり年が離れているためか、割と可愛い。
「ノアムって結婚する予定あるの?」
「いや、今のところないよ。それに、俺みたいなのもらってくれるやついるかどうか」
この世界では同性婚が主流だ。ゆえに、俺もどこかの貴族の令息を妻にもらうか、逆に俺がどこかに嫁ぐか……。
「ルドヴィックだったら、すぐに妻をもらえそうだよな」
けど、俺は知っている。
ルドヴィックの元にはリュリュっていうすごくかわいい妻が来るんだっていうことを!
(この調子だと、リュリュはルドヴィックルートに入ってるだろうし)
出逢いを済ませ、ルドヴィックに『運命』とまで言わせているのだ。これはもうハッピーエンド確定だ。気が早い自覚はあります。
「そっか。じゃあ、たとえ話。俺の妻にノアムがなるっていうのはどう?」
「……俺がルドヴィックと結婚するってこと?」
ないないありえない。
「お前が冗談言えるなんてな」
「冗談じゃないけど」
「たとえ話か」
確かに前提があったなぁ。
「うーん、ルドヴィックのことは嫌いじゃないし、むしろ好き」
「じゃあ、あり?」
「けど、今までずっと親友と見てたわけだしな……。いきなりそんな想像できないって」
笑って返すと、ルドヴィックはすねたように顔をそむけた。
「いきなりじゃなかったらいいってこと?」
「時間くれたら、まじめに考えるよ」
「じゃあ、これ課題ね」
「妄想は得意だから、上等だ!」
俺の数少ない特技に妄想がある。役に立ったことはほぼないけど、今は役に立ちそうだ。
「いつか俺と挙式に出てね」
「……うん、出るよ。友人代表スピーチは任せてくれ!」
挙式は無理でも、披露宴ならスピーチの機会も回ってくるかもしれない。
リュリュにルドヴィックの良さが伝わるように、これでもかというほどアピールする予定だ。
「――可愛い声でしてね」
「……意味わかんないんだけど」
可愛い声? スピーチが?
「今は気にしなくていいから。ノアム大好きだよ」
俺の腕に抱き着いて、ルドヴィックが笑う。
ゲームでは見たことのない表情に、俺の胸が高鳴る。
(前世の記憶が戻って九年か)
最近、俺はおかしい。ルドヴィックに胸きゅんしている。
この世界がゲームの世界だと思えなくなっている。ルドヴィックは推しのはず。
でも――なんだろう、この胸の高鳴りは。これだとまるで、推しではなくて――。
自分でも驚くほどに間抜けな声だった。
でも、当然だろう。いきなり『本当に親友だと思っているの?』なんて問いかけられたら。
「ノアムの本当の気持ちを聞かせて。俺のこと、親友だって思ってる?」
ルドヴィックの双眸が俺を射抜く。
鼓動がどんどん駆け足になる。嫌な汗が背中を伝った。
「……そりゃあ、もちろん」
声は震えていなかっただろうか。
不安を抱きつつうつむいて答えると、ルドヴィックは「ふぅん」と声を上げる。
面白くなさそうな声に、胸がぎゅうっと苦しくなる。
「そっか。変なこと聞いてごめん」
ルドヴィックが俺の肩に額を押し付ける。ぐりぐりこすりつけるように動かして、俺を上目遣いで見つめた。
「俺とノアムはずっと一緒だよね。これまでも、これからも」
「うん」
うなずくと、ルドヴィックが目を伏せた。
ルドヴィックは美しい。日の光を浴びて輝く金髪も、青の双眸も。
職人の手によってこの世に作り出された芸術品だと聞いても、信じてしまうだろう。
「だったらいいんだ。ノアムが俺の側にいてくれるなら、いいんだ」
「……なんだよ」
「いや、さみしいなって思っただけ」
俺に身を寄せて、ルドヴィックが甘えたような声を出す。
「大人になったら友情が壊れることもあるからさ。俺、怖くって」
「……そっか。けど、俺はルドヴィックの側にいるよ」
もちろん、『親友』として。
「いつかはお互い結婚して家庭を持つだろうけど、そうなっても仲良くしような」
……と、そういえば。
(俺も結婚する必要があるんだっけ。弟がいるとはいえ、長子としての責任はあるし)
俺には十二歳下の弟がいる。かなり年が離れているためか、割と可愛い。
「ノアムって結婚する予定あるの?」
「いや、今のところないよ。それに、俺みたいなのもらってくれるやついるかどうか」
この世界では同性婚が主流だ。ゆえに、俺もどこかの貴族の令息を妻にもらうか、逆に俺がどこかに嫁ぐか……。
「ルドヴィックだったら、すぐに妻をもらえそうだよな」
けど、俺は知っている。
ルドヴィックの元にはリュリュっていうすごくかわいい妻が来るんだっていうことを!
(この調子だと、リュリュはルドヴィックルートに入ってるだろうし)
出逢いを済ませ、ルドヴィックに『運命』とまで言わせているのだ。これはもうハッピーエンド確定だ。気が早い自覚はあります。
「そっか。じゃあ、たとえ話。俺の妻にノアムがなるっていうのはどう?」
「……俺がルドヴィックと結婚するってこと?」
ないないありえない。
「お前が冗談言えるなんてな」
「冗談じゃないけど」
「たとえ話か」
確かに前提があったなぁ。
「うーん、ルドヴィックのことは嫌いじゃないし、むしろ好き」
「じゃあ、あり?」
「けど、今までずっと親友と見てたわけだしな……。いきなりそんな想像できないって」
笑って返すと、ルドヴィックはすねたように顔をそむけた。
「いきなりじゃなかったらいいってこと?」
「時間くれたら、まじめに考えるよ」
「じゃあ、これ課題ね」
「妄想は得意だから、上等だ!」
俺の数少ない特技に妄想がある。役に立ったことはほぼないけど、今は役に立ちそうだ。
「いつか俺と挙式に出てね」
「……うん、出るよ。友人代表スピーチは任せてくれ!」
挙式は無理でも、披露宴ならスピーチの機会も回ってくるかもしれない。
リュリュにルドヴィックの良さが伝わるように、これでもかというほどアピールする予定だ。
「――可愛い声でしてね」
「……意味わかんないんだけど」
可愛い声? スピーチが?
「今は気にしなくていいから。ノアム大好きだよ」
俺の腕に抱き着いて、ルドヴィックが笑う。
ゲームでは見たことのない表情に、俺の胸が高鳴る。
(前世の記憶が戻って九年か)
最近、俺はおかしい。ルドヴィックに胸きゅんしている。
この世界がゲームの世界だと思えなくなっている。ルドヴィックは推しのはず。
でも――なんだろう、この胸の高鳴りは。これだとまるで、推しではなくて――。
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