【R18】気弱魔法使いはこのたび激重勇者に捕獲されました~最強の勇者さんは僕を愛してやみません~

すめらぎかなめ

文字の大きさ
29 / 73
第1部 第3章 優しい人、不思議な気持ち

 まっすぐな問いかけに僕は言葉を返せない。

 ただ、無意識のうちにまるで縋るみたいにキリアンの衣服をつかんだ。

「少しでいい、教えてくれ」

 乞うような声に、僕の決意がグラグラと揺れる。

「ジェリーの力になりたい」

 神さまに宣言するような。

 真剣な雰囲気の声に、僕はどうするのが正解なのかわからなくなっていた。

「……あの、ね」
「あぁ」
「あの女の人は、僕の故郷の――その、人なんだ」

 故郷は小さな村だった。だから、一人一人の顔も名前も誰もが知っていて。

 どれだけ時間が経っても、人というのは子供時代の面影があるものだ。

 彼女にもあの頃の面影が確かにあった。

「その、いわゆる幼馴染――みたいな、感じ」

 村には小さな子供が少なくて、村の同年代はみんな幼馴染みたいなもので。

 そして、家族に疎まれた僕は、同年代の中でも浮いていた。

 いつもボロボロの衣服を身に纏って、身だしなみもきちんと出来ていない。

 そんな僕を同年代の子供たちは不気味がった。

 両親はこの子は言うことを聞かないとか、この衣服ばっかり着るとか。そうやって誤魔化していた。

 実際は僕に与えられるものは兄のおさがりばかりだったというのに。

「僕には、兄がいたんだ」
「そうか」
「僕は家族から疎まれていて、兄も例外じゃなかった。いつも僕のことをバカにしてきて……」

 思い出すことさえ嫌になる過去のこと。

 けど、キリアンには話さなくちゃっていつの間にか思っていた。

「彼女は、僕の兄のことが好きだったんだ。だから、ぼ、くは」

 これ以上は言えなかった。過去のことを思い出すと、いつだって苦しい。

 師匠と出会うまで、僕はずっとどん底にいた。師匠は僕を日の当たるところに引き上げてくれた恩人でもあるんだ。

「ご、ごめん。僕、今はこれ以上――」

 続きはどうにも話せそうにない。

 そう言おうとして顔を上げると、キリアンは僕を見つめていた。彼の目の奥にこもった感情は「愛おしい」だろうか。

「無理に話させて、悪かったな」

 キリアンが僕の背中を大きな手のひらで撫でる。

「だが、ジェリーのことを知れたことは本当に嬉しい」
「……本当?」
「あぁ。それに俺は、お前が苦しんでいたら苦しみの原因を取り除きたいと思っている」

 なにも、そこまでしなくていい。僕はキリアンと友人になることが出来れば、それだけで満足なのに。

「なにか苦しいこと、辛いこと。そんなことがあったら、俺に命じればいい。――排除しろって」
「キリアン、それは、さすがに」
「俺はジェリーが望むのならば、罪を犯すことだってやってやる」

 そういうことを僕は望んでいるわけじゃないから……!

 慌てふためく僕を見て、キリアンが笑う。もしかして、からかわれたんだろうか?

「とにかく、俺はジェリーの味方でいる。なにがあろうと、どんなことがあろうとも」
「なにが、あっても」
「そうだ。俺はお前に一生を捧げる」

 それはそれでなんだかニュアンスが違うような――と思ったけど。

 この空気を壊す勇気はなくて、僕は首を縦に振った。

「――キリアンは、どうなの?」

 僕もキリアンのことを知りたいと思ってしまう。

 僕だけ話すのは不公平だと思ったのもあるけどさ。

「俺か?」
「うん。キリアンはどういう環境で育ったのかな――って」

 上目遣いになりつつじっとキリアンを見つめて問いかける。彼は天井を見上げた。

 かと思えば、一度だけコホンと咳ばらいをする。

「俺にも幼馴染……が、いたな」

 どこか言いにくそうに彼が言う。キリアンの幼馴染?

「どんな人?」

 ついつい食いついてしまった。僕の態度を見て、キリアンは表情を歪める。

「どんな人と言われてもな。やたらと偉そうで、傲慢で、高飛車で――」
「う、うん」
「わがままで口うるさくて腹の立つやつだ」

 それって全部悪口だよね?

 彼の言葉の真意を尋ねそうになったけど、僕は気が付いてしまった。キリアンの目元が優しいことに。

 キリアンはキリアンで、幼馴染さんのことを大切に思っているんだってわかった。

「キリアンは、その幼馴染さんのことが大切なんだね」
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)

てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。 言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち――― 大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡) 20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!