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第4章
どっちがいいの? 2【※】
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「ねぇ、祈」
「な、んだよ……」
俺の衣服をあらかたはぎ取った亜玲が、俺の目を見つめて、俺の名前を呼ぶ。
震えた声で返事をすれば、亜玲は笑った。そして、その手がするりと俺の身体を撫でる。
「祈は、多分。俺の気持ちを、甘く見てるんだ」
「……は?」
意味が分からなかった。その所為で間抜けな声を出すものの、そんなことすぐにどうでもよくなった。
亜玲の手が、俺の肩を押してベッドに押し倒す。ぎしりときしんだベッドの音が、やたらと生々しい。完全に重量オーバーだ。
そのまま亜玲が俺の顎をすくい上げて、口づけてくる。ちゅっと音を立てて、何度も何度も。頭がぼうっとして惚けるような口づけだった。自然と唇が開いて、その隙間から差し込まれる舌。
俺の舌を亜玲が吸い上げて、背中にゾクゾクとしたものが這い上がる。……下肢に熱が溜まったのが嫌というほどにわかってしまう。
「あ、れい……」
「本当は、こんなチョーカーも、はぎ取ってやりたい」
そう言って、亜玲が俺の首元に触れる。チョーカーをきれいな指でなぞって、俺の目を見つめる。
「無理にでも俺の番にして、ほかの奴と添い遂げられないようにしたい」
はっきりとそう言われて、こいつが本気なんだって悟る。いや、本当はずっと前からわかっていた。
亜玲は本気だって。ただ、俺が信じなかっただけだ。亜玲の気持ちを、中途半端に受け取って、保留にしたのはほかでもない俺だ。
「どうせだし、祈は俺なしじゃ生きられないようになればいいんだよ」
亜玲がそう囁いて、噛みつくように俺の唇に口づけてくる。唇を食まれて、ぶるりと背筋が震えた。
「……ぁ、あれい」
「どう? 俺に触れられたほうが、気持ちいいでしょ?」
奴の手が俺の下着のナカに差し込まれて、陰茎に触れる。そこはすっかり熱を持って昂っていた。
……否定できるわけがない。否定できる要素がない。
「こんなに反応させられるの、俺だけだよね?」
確証にも似た言葉で、問いかけられる。けれど、その声は震えていた。……まるで、恐る恐るといった雰囲気だった。
多分、亜玲は怖いんだ。俺に拒絶されることが。奏輔を選ばれることが。
(なんだこいつ。……いつだって自信満々なくせに、こういうときは……)
何処となく弱々しくて、まるで縋るような声だった。
それに気が付いて、俺は亜玲の胸倉をつかむ。亜玲は、ぽかんとしつつ俺を見つめている。
「お前、最低だよ」
「……いの、り?」
「俺の人生めちゃくちゃにしておいて、今更こんな風に腑抜けになるなんて」
欲しいんだったら、最後まで手を伸ばせ。それが、俺が伝えたいことだ。
「さっきも言ったけど、欲しいんだったら最後まで手を伸ばせ。……強引にでも、奪い取れ」
亜玲の目をしっかりと見つめてそう言う。……亜玲の目から、はらりと涙が零れた。
亜玲はそれに気が付いているのだろうか? そのままはらはらと涙を零し続けて、かと思えばハッとしたように目元を拭う。
「祈……」
「俺は、本気になった亜玲だったら、拒絶しない」
……そう、なんだろう。きっと。
今まで俺の幸せを壊してきた亜玲は、嫌いだ。でも、本気で俺のことが好きで、大好きで、愛してくれる亜玲は嫌いじゃない。
「なぁ、本気になってよ」
亜玲の両頬を挟み込んで、亜玲にそう囁きかける。
「俺のこと欲しいんだろ? ……どんな手段を使ってでも奪え。……今までみたいに、な?」
最後は優しく訴えかけるように。
俺の言葉を聞いた亜玲は、涙を拭う。
「……お、れ」
「……うん」
「祈のこと、好きなんだ。……兄貴にも、奪われたくない」
「……あぁ」
「だから、ねぇ、祈。……俺と、付き合ってよ」
なんだろうか。こういうの、むず痒いというか。そんなことを思いながら、俺は亜玲の両頬を挟むのを止めて、その手を取った。
「な、んだよ……」
俺の衣服をあらかたはぎ取った亜玲が、俺の目を見つめて、俺の名前を呼ぶ。
震えた声で返事をすれば、亜玲は笑った。そして、その手がするりと俺の身体を撫でる。
「祈は、多分。俺の気持ちを、甘く見てるんだ」
「……は?」
意味が分からなかった。その所為で間抜けな声を出すものの、そんなことすぐにどうでもよくなった。
亜玲の手が、俺の肩を押してベッドに押し倒す。ぎしりときしんだベッドの音が、やたらと生々しい。完全に重量オーバーだ。
そのまま亜玲が俺の顎をすくい上げて、口づけてくる。ちゅっと音を立てて、何度も何度も。頭がぼうっとして惚けるような口づけだった。自然と唇が開いて、その隙間から差し込まれる舌。
俺の舌を亜玲が吸い上げて、背中にゾクゾクとしたものが這い上がる。……下肢に熱が溜まったのが嫌というほどにわかってしまう。
「あ、れい……」
「本当は、こんなチョーカーも、はぎ取ってやりたい」
そう言って、亜玲が俺の首元に触れる。チョーカーをきれいな指でなぞって、俺の目を見つめる。
「無理にでも俺の番にして、ほかの奴と添い遂げられないようにしたい」
はっきりとそう言われて、こいつが本気なんだって悟る。いや、本当はずっと前からわかっていた。
亜玲は本気だって。ただ、俺が信じなかっただけだ。亜玲の気持ちを、中途半端に受け取って、保留にしたのはほかでもない俺だ。
「どうせだし、祈は俺なしじゃ生きられないようになればいいんだよ」
亜玲がそう囁いて、噛みつくように俺の唇に口づけてくる。唇を食まれて、ぶるりと背筋が震えた。
「……ぁ、あれい」
「どう? 俺に触れられたほうが、気持ちいいでしょ?」
奴の手が俺の下着のナカに差し込まれて、陰茎に触れる。そこはすっかり熱を持って昂っていた。
……否定できるわけがない。否定できる要素がない。
「こんなに反応させられるの、俺だけだよね?」
確証にも似た言葉で、問いかけられる。けれど、その声は震えていた。……まるで、恐る恐るといった雰囲気だった。
多分、亜玲は怖いんだ。俺に拒絶されることが。奏輔を選ばれることが。
(なんだこいつ。……いつだって自信満々なくせに、こういうときは……)
何処となく弱々しくて、まるで縋るような声だった。
それに気が付いて、俺は亜玲の胸倉をつかむ。亜玲は、ぽかんとしつつ俺を見つめている。
「お前、最低だよ」
「……いの、り?」
「俺の人生めちゃくちゃにしておいて、今更こんな風に腑抜けになるなんて」
欲しいんだったら、最後まで手を伸ばせ。それが、俺が伝えたいことだ。
「さっきも言ったけど、欲しいんだったら最後まで手を伸ばせ。……強引にでも、奪い取れ」
亜玲の目をしっかりと見つめてそう言う。……亜玲の目から、はらりと涙が零れた。
亜玲はそれに気が付いているのだろうか? そのままはらはらと涙を零し続けて、かと思えばハッとしたように目元を拭う。
「祈……」
「俺は、本気になった亜玲だったら、拒絶しない」
……そう、なんだろう。きっと。
今まで俺の幸せを壊してきた亜玲は、嫌いだ。でも、本気で俺のことが好きで、大好きで、愛してくれる亜玲は嫌いじゃない。
「なぁ、本気になってよ」
亜玲の両頬を挟み込んで、亜玲にそう囁きかける。
「俺のこと欲しいんだろ? ……どんな手段を使ってでも奪え。……今までみたいに、な?」
最後は優しく訴えかけるように。
俺の言葉を聞いた亜玲は、涙を拭う。
「……お、れ」
「……うん」
「祈のこと、好きなんだ。……兄貴にも、奪われたくない」
「……あぁ」
「だから、ねぇ、祈。……俺と、付き合ってよ」
なんだろうか。こういうの、むず痒いというか。そんなことを思いながら、俺は亜玲の両頬を挟むのを止めて、その手を取った。
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