【R18】女騎士から聖女にジョブチェンジしたら、悪魔な上司が溺愛してくるのですが?

すめらぎかなめ

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第1章 女騎士から聖女にジョブチェンジ!?

意識して、意識されて 2

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 騎士であったとしても、本気の殺意を浴びることは滅多にない。特に、最近の王国はほのぼのとしており、戦などとも無縁だった。

 その所為で、セレーナは自身の身に降りかかったことに、すぐに反応できないでいた。

「……その女、殺す」

 男性は血走った目でセレーナを見つめ、そう告げた。

 彼のその目には本気の殺意がこもっており、セレーナの心が冷たくなっていく。

「セレーナ嬢。……狙われる原因に、なにか心当たりは?」

 視線を男性に向けたまま、アッシュはセレーナにそう問いかけてくる。

 だからこそ、セレーナは「あ、ありません!」と言って首をぶんぶんと横に振った。

(そうよ。恨まれることはあったとしても、命を狙われるまでなんて、そんな……!)

 騎士という職業柄、恨まれることは多々ある。けれど、殺されるまでに発展することがないようにとセレーナは心がけていた。

 それは、アッシュも知っているはず。いや、少し違う。

(アッシュ隊長がそうするようにと、念押しされていたから……)

 アッシュは常々騎士たちに「恨みを買うことは仕方がないです。でも、殺意にだけは発展しないようにしてください」と念押ししていた。もちろんセレーナもその教えは守っていたし、変な行動をしたこともない。

 さらにプライベートでも人に殺されるほどの恨みを買った覚えはない。そもそも、セレーナがプライベートで関わるのは家族やご近所さんだけだ。

「セレーナ嬢、じっとしていてくださいね」

 恐怖から震えてしまうセレーナを、アッシュが片手でぎゅっと抱きしめる。

 もう片方の手で器用に剣を扱いながら、男性の攻撃を流していくその様はさすがとしか言いようがない。

「邪魔をするな!」

 男性の声に、確かな焦りの感情が帯びていく。

 だが、セレーナにはそんなこと気にする余裕もなかった。

 土壇場でこういうことに巻き込まれたことがないためか、セレーナはびくびくとすることしか出来ない。

(わ、たし……)

 もしも誰かほかの人が襲われていたのならば、セレーナは臆せず助けに向かっただろう。しかし、自分が狙われるとそうはいかない。

 それを、嫌というほどに実感してしまう。

「クソッ、その女を殺さないと、俺は、俺はっ……!」

 男性がやけくそになったように、剣を振り回す。

 対するアッシュは特に焦る様子もなく受け流し、一瞬の隙をついて男性の剣を弾き飛ばしてしまった。

 その後、アッシュはその剣の切っ先を男性に向ける。

「……クソッ」
「大人しくしてください。俺も、あんまり手荒な真似はしたくないので」

 冷静な声。でも、その言葉の節々に宿っている怒りの感情。

 多分、彼は自分の部下が狙われたことに怒っているのだ。彼は悪魔のようなしごきをするものの、人一倍部下を大切に思う隊長だから。

「先ほどの言葉を聞くに、あなたは誰かにこの子を殺すようにと命じられたんですよね? その人物の名前を、吐いてください」

 地を這うような低い声で、アッシュがそう告げる。

 そうすれば、男性が「……ぁ、あ」と声を上げる。けれど、なにかがおかしい。

「ぁ、がはっ!」
「おい!」

 その男性は、その場に血を吐いて倒れてしまった。

 それを見て、セレーナは咄嗟にアッシュの腕の中から抜け出し、男性に駆け寄る。……慌てて脈と息を確認するものの、どうやらもうすでに息はないらしい。

「……アッシュ隊長!」

 焦りを帯びた声で彼の名前を呼ぶと、アッシュは持っていた剣をなにも言わずにさやに戻した。

「セレーナ嬢。至急、騎士団のほうに連絡を」
「は、はいっ!」

 アッシュの指示を受け、セレーナが通信機器を使って騎士団第三部隊に連絡を取ろうとする。

 だが、上手く手が動かない。狙われたことに対する恐怖心からなのか、はたまた目の前で人が絶命したことに対する恐怖なのか。それは定かではないものの、今のセレーナは冷静ではなかった。

(落ち着け、落ち着くのよ、私……!)

 自分自身にそう言い聞かせ、セレーナは必死に通信機器を動かしていく。ようやく騎士団の第三部隊につながり、セレーナは震える声で支離滅裂な状況説明をする。

「えぇっと、だから、その……」

 セレーナが焦りからしどろもどろになっていることを理解してか、アッシュがセレーナの手から通信機器を奪い取る。

「アッシュです。至急、騎士をこちらに手配してください。ここは……」

 アッシュの淡々とした指示を聞いて、セレーナは自分の実力不足を思い知らされてしまう。

(命を、狙われただけなのに……)

 それは、一般人であれば狼狽え、おかしくなっても当然だといえるシチュエーション。が、セレーナは騎士である。こんなことがあっても、狼狽えてはいけないはずなのに――。

「セレーナ嬢」

 要請を終えたらしく、アッシュが声をかけてくる。……きっと、怒られる。

 そう思いセレーナが目を伏せ、「はい」と返事をすると、彼はセレーナの手首を掴んだ。

「とりあえず、この場はほかの部下たちに任せます。警官も駆けつけてくれましたし」
「……はい」
「今は、セレーナ嬢のケアのほうが大切です。……少し、人ごみから離れましょうか」

 そんなことを言うと、アッシュはセレーナの手を引いて場所を移動していく。

 駆けつけた警官に事の説明だけを済ませたアッシュは、セレーナのことを人ごみから連れ出してくれた。
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