【R18】男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。

すめらぎかなめ

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第1章

第8話

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(えっと、どうしよう。ここは、スルーして帰るべき?)

 自分のスマホをタップする。ディスプレイに映った時間は、午前五時。すごく、中途半端だ。

「というか、一度帰って出社するの、間に合うの……?」

 本当に最悪だ。これが休日だったら……と思って、私は項垂れる。

 そうしていれば、ふと隣から音が聞こえる。もぞもぞと動いたような音で、恐る恐るそちらに視線を向けた。

「あぁ、杏珠さん。おはようございます」
「お、おはよう、ございます……」

 頬を引きつらせつつ、冷静を装ってそう返す。

 ……って、おはようございますじゃない!

(時間的にはおはようで間違いないんだけど)

 そういう問題じゃないけれど、現実逃避だ、現実逃避。

(唯一幸運なことがあるとすれば、今、私が一人暮らしであるということくらいか……)

 普段はお母さんと二人で暮らしているのだけれど、今お母さんはわけあって入院中。そのため、私が家に帰らなくても不審に思う人はない。……不幸中の幸いだ。

「……杏珠さん?」

 副社長……丞さんが私の名前を呼んでこられる。

 ぴくりと肩を跳ねさせて、彼のほうに顔を向ける。彼は寝癖がついた頭を掻きつつ、私を見つめる。

「なにか、連絡でもありましたか?」
「い、いえいえ、そういうわけでは!」

 慌ててスマホのディスプレイを暗くして、曖昧に笑う。

 というか、今の格好がいただけないような気もする。

「あの、えぇっと。服、着てきます……!」

 私は慌ててベッドから下りて、散らばる衣服を拾い上げる。なんだろうか。……こういうシチュエーション自体が初めてなので、どういう反応をすればいいかがわからない。

(シチュエーション自体じゃない、か。……私、男の人とこういう風になるのハジメテだし)

 理想を貫きすぎた結果、処女を貫いていた。あれ、ということは、私のハジメテの人って丞さんになる……の、か?

(うぅ、本当、好みド真ん中だから許せてしまう……!)

 記憶がないのが、ちょっと悲しい。

 私がどういうことを言ったとか、どういう態度だったとか。そういうのは蘇ってこないでいいから、彼の肉体美だけは蘇ってきてほしい。……都合がいいか。

 そう思いつつ衣服と下着を集める。そのまま逃げるようにバスルームに入って、扉を閉めた。

「これ、感じ悪くなかったよね……?」

 とくとくと早足に音を鳴らす心臓。その音を感じつつ、私はそう呟いた。

 そうだ。私の処女云々よりも、今後も彼と顔を合わせるのだ。気まずくならないようにせねばならない。

「一夜だけの関係でも、別に私は良いんだけど……」

 ……本心ではそれは嫌だって思ってる。でも、丞さんほどの人になれば、より取り見取りだ。

 なにも私を選ぶ必要なんてない。それだけは、わかる。

 そんなことを考えて、私はショーツを履いて、ふと気が付く。

「もしかして、ブラ忘れた……?」

 今更この格好で戻るの、気まずい……。

 でも、戻らなくちゃ。ブラウスだけ着るかな。

 そんなことを考えていると、扉がノックされる。私は慌てて返事をする。

「は、はい!」

 上ずったような声だった。緊張がこれでもかというほどに伝わる声で、なんだか恥ずかしい。

 そんな私を他所に、扉が開いて丞さんが顔を見せる。

「その、あんまり、こういうの持ってくるのどうかと思ったんですけど……」

 彼が気まずそうに視線を逸らして、ぶっきらぼうに私に手を差し出す。そこには、私のブラがあった。
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