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第2部:黒薔薇の刻印
第15話:悶絶する騎士
「うそ……本当に? ユリウス――」
信じられなかった。
冷え切っていた頬に、微かな赤みが差し、止まっていた心臓が私の掌の下で力強く脈打ち始めたのだ。
「ロゼノア……様……」
掠れた声で私の名を呼ぶ彼を見た瞬間、張り詰めていた糸が切れた。
私は衝動のままにユリウスに覆いかぶさり、その身体をきつく抱きしめた。
「よかった……! 死なないで、私を置いていかないで……ッ!」
「ぐ、ぅ……」
「離さない。もう二度と、あなたを死なせたりしない!」
彼が苦しげに呻いても、今の私には構っていられなかった。
失う恐怖と、取り戻した安堵。それが混ざり合い、強烈な独占欲となって暴走する。
私は彼の顔を両手で挟み込むと、吸い寄せられるように唇を重ねた。
ただ触れるだけの口づけではない。
貪るように、喰らいつくように。
私は彼の下唇を噛み、強引にこじ開けると、その中へと舌を滑り込ませた。
私の体内で脈打つ『黒薔薇』の魔力が、唾液と共に彼の口内へと流れ込んでいくのが分かった。
命を繋ぎ止めるための、魔力の受け渡し。それはまるで、魂を分け与えるような濃密な儀式だった。
「ロ、ロゼ……ん……ッ、ぁ……!」
生き返ったばかりの彼は、抵抗できなかった。
私の舌が彼の口内を蹂躙し、互いの唾液が混ざり合う。わずかに残る血の味と、甘い蜜が絡み合う、背徳の味。
私は彼の命を握っている。私が生かしている。
その事実に、悦びと全能感が身体を駆け巡った。
「はぁ、ん……ッ! ユリウス、あなたは私のものよ……」
私は唇を離すと、彼の頭を抱き寄せ、自分の胸に強く押し付けた。
レース越しの柔らかな感触と、心臓の鼓動を、彼に刻み込むように。
「ロゼノア、様……っ、近すぎ、ます……」
「いいの。感じて、私の鼓動を。あなたの心臓を動かしているのは、私なのよ」
ふと、私は彼の胸元に目を落とした。
彼は、真新しい騎士団の正装に着替えさせられていた。
深い紺色の軍服に、金の刺繍。禁欲的で重厚なその布地の下、傷はどうなっているのだろうか。
「……見せて、ユリウス」
私は彼の制止も聞かず、きっちりと閉められた金ボタンに指をかけ、上から順に強引に外していった。
硬い襟元を広げ、下着のシャツも捲り上げると、鍛え上げられた逞しい胸板が露わになる。
「なっ……ロゼノア様!?」
「静かにして。……私が治したのよ。確認させて」
無数の矢に貫かれていたはずの場所。そこには、傷一つなかった。
ただ、心臓の上の皮膚にだけ、まるで焼き印のような『黒い薔薇の蔓模様』がうっすらと浮かび上がっていた。
それは、彼が私の魔力で生かされている何よりの証拠。所有の証。
「ああ……なんて綺麗なの……」
私はうっとりと、その黒い痣のような模様を指先でなぞった。
「ッ……!?」
その瞬間、ユリウスの喉仏が激しく上下した。
甘い痺れに耐えるような、艶めかしい反応だ。
「……感じているの? ただ触れただけなのに」
「あ、ぐ……ッ! や、やめて……ください……体が、言うことを……ッ!」
「ふふ、やっぱり。蘇った身体は、主人の魔力に敏感になるみたいね」
私は面白がり、わざと爪を立てて蔓模様をカリカリと引っ掻いた。
そのたびに、最強の騎士であるはずの彼の筋肉が打ち震える。
「お、許し、ください……ロゼノア、様……おかしく、なる……ッ!」
「可愛い反応。……もっと私を感じて」
私は這いつくばるようにして、彼の胸にある刻印に、音を立ててキスをした。
彼がシーツを鷲掴みにし、激しい悪寒に襲われたかのように震える。快感と呪いの支配。それが彼を襲っているのだ。
私の視線が下へと滑り落ちる。そこは異様な存在感を放っていた。
私はためらわず、ベルトに手をかけ、バックルを外した。
すると、窮屈なズボンから解放された彼の欲望が弾け出た。
赤黒く充血し、先端から透明な蜜を垂れ流し、ビクビクと脈打っている。
高貴な軍服とは不釣り合いな、凶暴で、逞しい雄の象徴。
「なっ、ロゼノア様!? 何を……ッ、見るな、見ないでください……ッ!」
恥辱に顔を歪めて隠そうとする彼の手を、私はピシャリと叩き落とした。
抵抗できない彼を見下ろす。その無様な姿に、私の背筋がゾクゾクとする。
(……なんて素敵なの)
高潔な騎士が、本能を剥き出しにして私の前で悶えている。
その光景だけで、私自身の奥もじわりと熱を帯びてくるのが分かった。
もっと見たい。この理性の仮面が完全に剥がれ落ちる瞬間を。
「暴れないで。……あなたのその自慢の理性が本物かどうか、私が試してあげる」
私は彼の熱い中心に顔を寄せた。男特有の濃厚な匂いが鼻腔を満たし、それだけでクラリと酔いそうになる。
私はためらわず、その熱く湿った先端に、舌先を這わせた。
「ひぃッ――!?」
ユリウスが、まるで火傷でもしたかのような悲鳴を上げて仰け反った。
シーツを握りしめた拳の関節が白く浮き上がる。
「だ、め……汚い、です……貴女のような高貴な方が、そんな……ッ、あ、ぅッ!?」
「汚くないわ。あなたのものは全部、私のものなんだから」
私は彼の剛直な根元を両手でしっかりと握りしめた。
熱い脈動が掌に伝わる。私は先端の割れ目から溢れる蜜を舌先で掬い取り、敏感な部分を執拗につついた。裏側の筋をザラリとした舌で舐め上げると、彼の腰がビクリと跳ねた。
「あ、ぐ……ッ! ん、んんっ、許し、て……ッ!」
「どうしたの? 冷静な騎士様が、そんなだらしない声を出して」
逃げようとする彼の腰を、私は体重をかけて許さなかった。
彼の苦悶の表情が、私をますます興奮させる。
じっくりと味わった後、私は唇を大きく開き、張り詰めた彼の先端を深々と飲み込んだ。
「――ッ、ぐ、ぁああああッ!?」
熱く湿った口腔で包み込み、頬を窄めて強く吸い上げる。
蜜を啜る音と、空気が漏れる卑猥な水音が、地下室に反響する。
「や、やめ……抜い、て……ッ! これ以上は……あ、あぁ……吸わ、れる……!」
ユリウスの手が私の頭を掴み、引き剥がそうと動く。だが、指先に力が入らず、私の髪をくしゃくしゃと掻き回すだけだ。
いや、むしろ快感に耐えきれず、私の頭を自分の股間に押し付けるような動きになっている。
口内を埋め尽くす圧倒的なボリューム。
私は唇で挟んで吸い付きながら、巧みに舌を絡ませて敏感な箇所を刺激した。
「ひぐッ、ぁ……! そこ、は……! ロゼノア、様……っ、私が、壊れ、てしまう……ッ!」
彼の理性が音を立てて崩壊していくのが分かる。
普段は氷のように冷徹な黒い眼が、今はとろんと濁り、快楽の熱に浮かされて宙を彷徨っている。端正な顔が快感に歪み、黒い髪は乱れ、口からは涎が垂れているのも構わずに喘いでいる。
「はぁ、っ、はぁ……! お許し、ください……もう、抑えきれ、ませ……ッ、あぁん!」
その姿は、あまりにも無防備で、淫らだった。
私の身体も疼く。彼の乱れた姿を見ているだけで、下着の中が濡れていくのが分かる。
このまま彼と一つになりたい。禁忌を犯した共犯者として、堕ちるところまで堕ちてしまいたい。
「抱いて、ユリウス。……あなたも、私が欲しいのでしょう?」
私は濡れた瞳で彼を見つめ、誘った。
私の胸を押し付け、彼の理性を溶かしにかかる。
けれど――。
ガシッ。
私の頭を押さえつけていた手が、急に強い力で私を引き剥がした。
「……ッ、いけません……!」
ユリウスが、荒い息を吐きながら私と距離を取る。
その黒い瞳は、熱に浮かされ、瞳孔が開いている。明らかに異常な興奮状態にあるはずだ。
なのに、その瞳の奥にある「理性」の光だけは、消えていなかった。
「ロゼノア様……貴女は、王妃だ……。王の、妻だ……ッ」
「ユリウス……?」
「たとえ命を救われたとしても……この身が焼けつくほど貴女を求めていても……ッ! これ以上の不義は、騎士として許されない……!」
彼は歯を食いしばり、苦悶の表情で私を拒絶した。
その額には玉のような汗が浮かび、全身が小刻みに痙攣している。
本能は私を喰らいたいと叫んでいるのに、鋼のような精神力がそれを必死に抑え込んでいるのだ。
「……ユリウス」
「お下がりください……! これ以上そばにいたら、私は……貴女を……ッ」
彼は顔を背け、自分の腕を爪が食い込むほど強く掴んで耐えている。
その姿は、痛々しいほど高潔で、そしてどうしようもなく美しかった。
(……ああ。なんて強い人)
私は拒絶されたにも関わらず、さらに胸の奥が熱くなるのを感じた。
胸の刻印に口づけされ、急所を愛撫され、あれほど乱れたのに、最後の一線だけは譲らない。
術の強制力にすら抗う、気高い魂。
まだ、彼は完全には私のものになっていない。
その時、私の脳裏に『黒薔薇の書』の一節が蘇った。
『黒薔薇の刻印。……失われし命を繋ぎ止める、禁断の術……』
『蘇りし者は……術者を唯一の絶対者と認識し、尽きることのない渇望と忠誠を捧げることになるだろう……』
(尽きることのない渇望……)
私は乱れたドレスを直し、熱いため息をついた。
今はまだ、その理性で耐えられるかもしれない。
けれど、この渇きは永遠に続く。
私がそばにいる限り、彼は永遠に満たされない飢えに苦しむことになる。
(……いい気味だわ。私を拒絶した罰よ)
私は再び彼に近づき、上目遣いで、快楽に悶絶する彼を見上げた。
「……分かったわ、ユリウス。許してあげる」
「はぁ、はぁ……感謝、します……」
「でも、我慢するのは毒よ……んっ」
私は再び、彼の張り詰めた楔を咥え込んだ。
今度は、容赦しなかった。
喉の奥で締め上げ、舌で転がし、彼を限界の淵へと追い詰める。
「あっ、あっ、あっ! だめ、そんなに吸われたら……ッ! ロゼノア様、出ます……ッ! 貴女の口の中に、出てしまう……ッ!」
彼はシーツが破れんばかりに爪を立て、足の指を丸めて絶叫した。
「あ、あぁッ……! ロゼノア様、許して、許してくだ……さいッ……! あぁぁぁぁぁ――ッ!!」
「んっ、んーッ!(出しなさい、私の全部で受け止めてあげる!)」
私は喉を開き、吸いつく力を強めた。
彼の腰が弓なりに跳ね上がり、ビクビクと激しく痙攣する。
ドクンッ、ドクンッ!
喉の奥に、熱いものが勢いよく注ぎ込まれた。
それは、尽きることのない渇望と、彼から溢れ出る熱い生命力。
私は一滴も漏らさず、そのすべてを飲み干した。
――ゴクリ。
喉が鳴る音が、静寂に戻った部屋に響いた。
「ハァ……、ハァ……ッ、ぅ……」
ユリウスは白目を剥きかけ、魂が抜けたように脱力してベッドに沈んでいる。全身は汗でびっしょりと濡れ、呼吸は荒いままだ。
私は口角から垂れた白いものを指で拭い、それを舐め取って艶然と微笑んだ。
「……ふふ。愛おしい人」
「……あ……私は……なんということを……申し訳、ありません……」
彼は焦点の合わない目で私を見つめ、絶望と快感の余韻に打ち震えていた。
騎士としての誇りは守ったつもりでも、結局は王妃に奉仕させ、出してしまった。
その背徳的な事実は、彼を私という主人の泥沼に、さらに深く引きずり込むだろう。
最後に、彼の先端に残る滴をペロッと舐め上げると、ユリウスは「ひうっ……!」と喉を鳴らし、ビクリと腰を跳ねさせた。
「ふふ、今日はここまでにしておくわ。……でも、忘れないで」
私は、精根尽き果てた彼の額に、ねっとりとしたキスを落とした。
「あなたの命も、この身体も、すべて私のもの。……あなたはもう、私なしでは生きられないのよ」
私は彼を残し、安置所を後にした。
悶えるユリウスの姿を思い出しながら、私は背徳的な喜びに身を震わせた。
信じられなかった。
冷え切っていた頬に、微かな赤みが差し、止まっていた心臓が私の掌の下で力強く脈打ち始めたのだ。
「ロゼノア……様……」
掠れた声で私の名を呼ぶ彼を見た瞬間、張り詰めていた糸が切れた。
私は衝動のままにユリウスに覆いかぶさり、その身体をきつく抱きしめた。
「よかった……! 死なないで、私を置いていかないで……ッ!」
「ぐ、ぅ……」
「離さない。もう二度と、あなたを死なせたりしない!」
彼が苦しげに呻いても、今の私には構っていられなかった。
失う恐怖と、取り戻した安堵。それが混ざり合い、強烈な独占欲となって暴走する。
私は彼の顔を両手で挟み込むと、吸い寄せられるように唇を重ねた。
ただ触れるだけの口づけではない。
貪るように、喰らいつくように。
私は彼の下唇を噛み、強引にこじ開けると、その中へと舌を滑り込ませた。
私の体内で脈打つ『黒薔薇』の魔力が、唾液と共に彼の口内へと流れ込んでいくのが分かった。
命を繋ぎ止めるための、魔力の受け渡し。それはまるで、魂を分け与えるような濃密な儀式だった。
「ロ、ロゼ……ん……ッ、ぁ……!」
生き返ったばかりの彼は、抵抗できなかった。
私の舌が彼の口内を蹂躙し、互いの唾液が混ざり合う。わずかに残る血の味と、甘い蜜が絡み合う、背徳の味。
私は彼の命を握っている。私が生かしている。
その事実に、悦びと全能感が身体を駆け巡った。
「はぁ、ん……ッ! ユリウス、あなたは私のものよ……」
私は唇を離すと、彼の頭を抱き寄せ、自分の胸に強く押し付けた。
レース越しの柔らかな感触と、心臓の鼓動を、彼に刻み込むように。
「ロゼノア、様……っ、近すぎ、ます……」
「いいの。感じて、私の鼓動を。あなたの心臓を動かしているのは、私なのよ」
ふと、私は彼の胸元に目を落とした。
彼は、真新しい騎士団の正装に着替えさせられていた。
深い紺色の軍服に、金の刺繍。禁欲的で重厚なその布地の下、傷はどうなっているのだろうか。
「……見せて、ユリウス」
私は彼の制止も聞かず、きっちりと閉められた金ボタンに指をかけ、上から順に強引に外していった。
硬い襟元を広げ、下着のシャツも捲り上げると、鍛え上げられた逞しい胸板が露わになる。
「なっ……ロゼノア様!?」
「静かにして。……私が治したのよ。確認させて」
無数の矢に貫かれていたはずの場所。そこには、傷一つなかった。
ただ、心臓の上の皮膚にだけ、まるで焼き印のような『黒い薔薇の蔓模様』がうっすらと浮かび上がっていた。
それは、彼が私の魔力で生かされている何よりの証拠。所有の証。
「ああ……なんて綺麗なの……」
私はうっとりと、その黒い痣のような模様を指先でなぞった。
「ッ……!?」
その瞬間、ユリウスの喉仏が激しく上下した。
甘い痺れに耐えるような、艶めかしい反応だ。
「……感じているの? ただ触れただけなのに」
「あ、ぐ……ッ! や、やめて……ください……体が、言うことを……ッ!」
「ふふ、やっぱり。蘇った身体は、主人の魔力に敏感になるみたいね」
私は面白がり、わざと爪を立てて蔓模様をカリカリと引っ掻いた。
そのたびに、最強の騎士であるはずの彼の筋肉が打ち震える。
「お、許し、ください……ロゼノア、様……おかしく、なる……ッ!」
「可愛い反応。……もっと私を感じて」
私は這いつくばるようにして、彼の胸にある刻印に、音を立ててキスをした。
彼がシーツを鷲掴みにし、激しい悪寒に襲われたかのように震える。快感と呪いの支配。それが彼を襲っているのだ。
私の視線が下へと滑り落ちる。そこは異様な存在感を放っていた。
私はためらわず、ベルトに手をかけ、バックルを外した。
すると、窮屈なズボンから解放された彼の欲望が弾け出た。
赤黒く充血し、先端から透明な蜜を垂れ流し、ビクビクと脈打っている。
高貴な軍服とは不釣り合いな、凶暴で、逞しい雄の象徴。
「なっ、ロゼノア様!? 何を……ッ、見るな、見ないでください……ッ!」
恥辱に顔を歪めて隠そうとする彼の手を、私はピシャリと叩き落とした。
抵抗できない彼を見下ろす。その無様な姿に、私の背筋がゾクゾクとする。
(……なんて素敵なの)
高潔な騎士が、本能を剥き出しにして私の前で悶えている。
その光景だけで、私自身の奥もじわりと熱を帯びてくるのが分かった。
もっと見たい。この理性の仮面が完全に剥がれ落ちる瞬間を。
「暴れないで。……あなたのその自慢の理性が本物かどうか、私が試してあげる」
私は彼の熱い中心に顔を寄せた。男特有の濃厚な匂いが鼻腔を満たし、それだけでクラリと酔いそうになる。
私はためらわず、その熱く湿った先端に、舌先を這わせた。
「ひぃッ――!?」
ユリウスが、まるで火傷でもしたかのような悲鳴を上げて仰け反った。
シーツを握りしめた拳の関節が白く浮き上がる。
「だ、め……汚い、です……貴女のような高貴な方が、そんな……ッ、あ、ぅッ!?」
「汚くないわ。あなたのものは全部、私のものなんだから」
私は彼の剛直な根元を両手でしっかりと握りしめた。
熱い脈動が掌に伝わる。私は先端の割れ目から溢れる蜜を舌先で掬い取り、敏感な部分を執拗につついた。裏側の筋をザラリとした舌で舐め上げると、彼の腰がビクリと跳ねた。
「あ、ぐ……ッ! ん、んんっ、許し、て……ッ!」
「どうしたの? 冷静な騎士様が、そんなだらしない声を出して」
逃げようとする彼の腰を、私は体重をかけて許さなかった。
彼の苦悶の表情が、私をますます興奮させる。
じっくりと味わった後、私は唇を大きく開き、張り詰めた彼の先端を深々と飲み込んだ。
「――ッ、ぐ、ぁああああッ!?」
熱く湿った口腔で包み込み、頬を窄めて強く吸い上げる。
蜜を啜る音と、空気が漏れる卑猥な水音が、地下室に反響する。
「や、やめ……抜い、て……ッ! これ以上は……あ、あぁ……吸わ、れる……!」
ユリウスの手が私の頭を掴み、引き剥がそうと動く。だが、指先に力が入らず、私の髪をくしゃくしゃと掻き回すだけだ。
いや、むしろ快感に耐えきれず、私の頭を自分の股間に押し付けるような動きになっている。
口内を埋め尽くす圧倒的なボリューム。
私は唇で挟んで吸い付きながら、巧みに舌を絡ませて敏感な箇所を刺激した。
「ひぐッ、ぁ……! そこ、は……! ロゼノア、様……っ、私が、壊れ、てしまう……ッ!」
彼の理性が音を立てて崩壊していくのが分かる。
普段は氷のように冷徹な黒い眼が、今はとろんと濁り、快楽の熱に浮かされて宙を彷徨っている。端正な顔が快感に歪み、黒い髪は乱れ、口からは涎が垂れているのも構わずに喘いでいる。
「はぁ、っ、はぁ……! お許し、ください……もう、抑えきれ、ませ……ッ、あぁん!」
その姿は、あまりにも無防備で、淫らだった。
私の身体も疼く。彼の乱れた姿を見ているだけで、下着の中が濡れていくのが分かる。
このまま彼と一つになりたい。禁忌を犯した共犯者として、堕ちるところまで堕ちてしまいたい。
「抱いて、ユリウス。……あなたも、私が欲しいのでしょう?」
私は濡れた瞳で彼を見つめ、誘った。
私の胸を押し付け、彼の理性を溶かしにかかる。
けれど――。
ガシッ。
私の頭を押さえつけていた手が、急に強い力で私を引き剥がした。
「……ッ、いけません……!」
ユリウスが、荒い息を吐きながら私と距離を取る。
その黒い瞳は、熱に浮かされ、瞳孔が開いている。明らかに異常な興奮状態にあるはずだ。
なのに、その瞳の奥にある「理性」の光だけは、消えていなかった。
「ロゼノア様……貴女は、王妃だ……。王の、妻だ……ッ」
「ユリウス……?」
「たとえ命を救われたとしても……この身が焼けつくほど貴女を求めていても……ッ! これ以上の不義は、騎士として許されない……!」
彼は歯を食いしばり、苦悶の表情で私を拒絶した。
その額には玉のような汗が浮かび、全身が小刻みに痙攣している。
本能は私を喰らいたいと叫んでいるのに、鋼のような精神力がそれを必死に抑え込んでいるのだ。
「……ユリウス」
「お下がりください……! これ以上そばにいたら、私は……貴女を……ッ」
彼は顔を背け、自分の腕を爪が食い込むほど強く掴んで耐えている。
その姿は、痛々しいほど高潔で、そしてどうしようもなく美しかった。
(……ああ。なんて強い人)
私は拒絶されたにも関わらず、さらに胸の奥が熱くなるのを感じた。
胸の刻印に口づけされ、急所を愛撫され、あれほど乱れたのに、最後の一線だけは譲らない。
術の強制力にすら抗う、気高い魂。
まだ、彼は完全には私のものになっていない。
その時、私の脳裏に『黒薔薇の書』の一節が蘇った。
『黒薔薇の刻印。……失われし命を繋ぎ止める、禁断の術……』
『蘇りし者は……術者を唯一の絶対者と認識し、尽きることのない渇望と忠誠を捧げることになるだろう……』
(尽きることのない渇望……)
私は乱れたドレスを直し、熱いため息をついた。
今はまだ、その理性で耐えられるかもしれない。
けれど、この渇きは永遠に続く。
私がそばにいる限り、彼は永遠に満たされない飢えに苦しむことになる。
(……いい気味だわ。私を拒絶した罰よ)
私は再び彼に近づき、上目遣いで、快楽に悶絶する彼を見上げた。
「……分かったわ、ユリウス。許してあげる」
「はぁ、はぁ……感謝、します……」
「でも、我慢するのは毒よ……んっ」
私は再び、彼の張り詰めた楔を咥え込んだ。
今度は、容赦しなかった。
喉の奥で締め上げ、舌で転がし、彼を限界の淵へと追い詰める。
「あっ、あっ、あっ! だめ、そんなに吸われたら……ッ! ロゼノア様、出ます……ッ! 貴女の口の中に、出てしまう……ッ!」
彼はシーツが破れんばかりに爪を立て、足の指を丸めて絶叫した。
「あ、あぁッ……! ロゼノア様、許して、許してくだ……さいッ……! あぁぁぁぁぁ――ッ!!」
「んっ、んーッ!(出しなさい、私の全部で受け止めてあげる!)」
私は喉を開き、吸いつく力を強めた。
彼の腰が弓なりに跳ね上がり、ビクビクと激しく痙攣する。
ドクンッ、ドクンッ!
喉の奥に、熱いものが勢いよく注ぎ込まれた。
それは、尽きることのない渇望と、彼から溢れ出る熱い生命力。
私は一滴も漏らさず、そのすべてを飲み干した。
――ゴクリ。
喉が鳴る音が、静寂に戻った部屋に響いた。
「ハァ……、ハァ……ッ、ぅ……」
ユリウスは白目を剥きかけ、魂が抜けたように脱力してベッドに沈んでいる。全身は汗でびっしょりと濡れ、呼吸は荒いままだ。
私は口角から垂れた白いものを指で拭い、それを舐め取って艶然と微笑んだ。
「……ふふ。愛おしい人」
「……あ……私は……なんということを……申し訳、ありません……」
彼は焦点の合わない目で私を見つめ、絶望と快感の余韻に打ち震えていた。
騎士としての誇りは守ったつもりでも、結局は王妃に奉仕させ、出してしまった。
その背徳的な事実は、彼を私という主人の泥沼に、さらに深く引きずり込むだろう。
最後に、彼の先端に残る滴をペロッと舐め上げると、ユリウスは「ひうっ……!」と喉を鳴らし、ビクリと腰を跳ねさせた。
「ふふ、今日はここまでにしておくわ。……でも、忘れないで」
私は、精根尽き果てた彼の額に、ねっとりとしたキスを落とした。
「あなたの命も、この身体も、すべて私のもの。……あなたはもう、私なしでは生きられないのよ」
私は彼を残し、安置所を後にした。
悶えるユリウスの姿を思い出しながら、私は背徳的な喜びに身を震わせた。
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この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
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