黒薔薇の刻印 ~死ぬほど愛される、重すぎる愛の逆ハーレム~【ダークファンタジー】

ALMA

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第2部:黒薔薇の刻印

第15話:悶絶する騎士

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「うそ……本当に? ユリウス――」

 信じられなかった。
 冷え切っていた頬に、微かな赤みが差し、止まっていた心臓が私のてのひらの下で力強く脈打ち始めたのだ。

「ロゼノア……様……」
 掠れた声で私の名を呼ぶ彼を見た瞬間、張り詰めていた糸が切れた。
 私は衝動のままにユリウスに覆いかぶさり、その身体をきつく抱きしめた。

「よかった……! 死なないで、私を置いていかないで……ッ!」
「ぐ、ぅ……」
「離さない。もう二度と、あなたを死なせたりしない!」

 彼が苦しげにうめいても、今の私には構っていられなかった。
 失う恐怖と、取り戻した安堵。それが混ざり合い、強烈な独占欲となって暴走する。

 私は彼の顔を両手で挟み込むと、吸い寄せられるように唇を重ねた。
 ただ触れるだけの口づけではない。
 むさぼるように、喰らいつくように。
 私は彼の下唇を噛み、強引にこじ開けると、その中へと舌を滑り込ませた。

 私の体内で脈打つ『黒薔薇』の魔力が、唾液と共に彼の口内へと流れ込んでいくのが分かった。
 命を繋ぎ止めるための、魔力の受け渡し。それはまるで、魂を分け与えるような濃密な儀式だった。

「ロ、ロゼ……ん……ッ、ぁ……!」

 生き返ったばかりの彼は、抵抗できなかった。
 私の舌が彼の口内を蹂躙じゅうりんし、互いの唾液が混ざり合う。わずかに残る血の味と、甘い蜜が絡み合う、背徳の味。
 私は彼の命を握っている。私が生かしている。
 その事実に、悦びと全能感が身体を駆け巡った。

「はぁ、ん……ッ! ユリウス、あなたは私のものよ……」

 私は唇を離すと、彼の頭を抱き寄せ、自分の胸に強く押し付けた。
 レース越しの柔らかな感触と、心臓の鼓動を、彼に刻み込むように。

「ロゼノア、様……っ、近すぎ、ます……」
「いいの。感じて、私の鼓動を。あなたの心臓を動かしているのは、私なのよ」

 ふと、私は彼の胸元に目を落とした。
 彼は、真新しい騎士団の正装に着替えさせられていた。
 深い紺色の軍服に、金の刺繍。禁欲的で重厚なその布地の下、傷はどうなっているのだろうか。

「……見せて、ユリウス」

 私は彼の制止も聞かず、きっちりと閉められた金ボタンに指をかけ、上から順に強引に外していった。
 硬い襟元を広げ、下着のシャツも捲り上げると、鍛え上げられた逞しい胸板があらわになる。

「なっ……ロゼノア様!?」
「静かにして。……私が治したのよ。確認させて」

 無数の矢に貫かれていたはずの場所。そこには、傷一つなかった。
 ただ、心臓の上の皮膚にだけ、まるで焼き印のような『黒い薔薇のつる模様』がうっすらと浮かび上がっていた。
 それは、彼が私の魔力で生かされている何よりの証拠。所有のあかし

「ああ……なんて綺麗なの……」
 私はうっとりと、その黒い痣のような模様を指先でなぞった。
「ッ……!?」
 その瞬間、ユリウスの喉仏が激しく上下した。
 甘い痺れに耐えるような、なまめかしい反応だ。

「……感じているの? ただ触れただけなのに」
「あ、ぐ……ッ! や、やめて……ください……体が、言うことを……ッ!」
「ふふ、やっぱり。蘇った身体は、主人の魔力に敏感になるみたいね」

 私は面白がり、わざと爪を立てて蔓模様をカリカリと引っ掻いた。
 そのたびに、最強の騎士であるはずの彼の筋肉が打ち震える。

「お、許し、ください……ロゼノア、様……おかしく、なる……ッ!」
「可愛い反応。……もっと私を感じて」

 私は這いつくばるようにして、彼の胸にある刻印に、音を立ててキスをした。
 彼がシーツを鷲掴みにし、激しい悪寒に襲われたかのように震える。快感と呪いの支配。それが彼を襲っているのだ。

 私の視線が下へと滑り落ちる。そこは異様な存在感を放っていた。
 私はためらわず、ベルトに手をかけ、バックルを外した。
 すると、窮屈なズボンから解放された彼の欲望が弾け出た。
 赤黒く充血し、先端から透明な蜜を垂れ流し、ビクビクと脈打っている。
 高貴な軍服とは不釣り合いな、凶暴で、たくましい雄の象徴。

「なっ、ロゼノア様!? 何を……ッ、見るな、見ないでください……ッ!」

 恥辱に顔をゆがめて隠そうとする彼の手を、私はピシャリと叩き落とした。
 抵抗できない彼を見下ろす。その無様な姿に、私の背筋がゾクゾクとする。

(……なんて素敵なの)

 高潔な騎士が、本能を剥き出しにして私の前でもだえている。
 その光景だけで、私自身の奥もじわりと熱を帯びてくるのが分かった。
 もっと見たい。この理性の仮面が完全に剥がれ落ちる瞬間を。

「暴れないで。……あなたのその自慢の理性が本物かどうか、私が試してあげる」

 私は彼の熱い中心に顔を寄せた。男特有の濃厚な匂いが鼻腔を満たし、それだけでクラリと酔いそうになる。
 私はためらわず、その熱く湿った先端に、舌先を這わせた。

「ひぃッ――!?」
 ユリウスが、まるで火傷でもしたかのような悲鳴を上げてけ反った。
 シーツを握りしめた拳の関節が白く浮き上がる。

「だ、め……汚い、です……貴女のような高貴な方が、そんな……ッ、あ、ぅッ!?」
「汚くないわ。あなたのものは全部、私のものなんだから」

 私は彼の剛直な根元を両手でしっかりと握りしめた。
 熱い脈動が掌に伝わる。私は先端の割れ目から溢れる蜜を舌先で掬い取り、敏感な部分を執拗につついた。裏側の筋をザラリとした舌で舐め上げると、彼の腰がビクリと跳ねた。

「あ、ぐ……ッ! ん、んんっ、許し、て……ッ!」
「どうしたの? 冷静な騎士様が、そんなだらしない声を出して」

 逃げようとする彼の腰を、私は体重をかけて許さなかった。
 彼の苦悶の表情が、私をますます興奮させる。
 じっくりと味わった後、私は唇を大きく開き、張り詰めた彼の先端を深々と飲み込んだ。

「――ッ、ぐ、ぁああああッ!?」

 熱く湿った口腔で包み込み、頬を窄めて強く吸い上げる。
 蜜をすする音と、空気が漏れる卑猥な水音が、地下室に反響する。

「や、やめ……抜い、て……ッ! これ以上は……あ、あぁ……吸わ、れる……!」

 ユリウスの手が私の頭を掴み、引き剥がそうと動く。だが、指先に力が入らず、私の髪をくしゃくしゃと掻き回すだけだ。
 いや、むしろ快感に耐えきれず、私の頭を自分の股間に押し付けるような動きになっている。
 口内を埋め尽くす圧倒的なボリューム。
 私は唇で挟んで吸い付きながら、巧みに舌を絡ませて敏感な箇所を刺激した。

「ひぐッ、ぁ……! そこ、は……! ロゼノア、様……っ、私が、壊れ、てしまう……ッ!」

 彼の理性が音を立てて崩壊していくのが分かる。
 普段は氷のように冷徹な黒い眼が、今はとろんと濁り、快楽の熱に浮かされて宙を彷徨さまよっている。端正な顔が快感に歪み、黒い髪は乱れ、口からはよだれが垂れているのも構わずにあえいでいる。

「はぁ、っ、はぁ……! お許し、ください……もう、抑えきれ、ませ……ッ、あぁん!」

 その姿は、あまりにも無防備で、みだらだった。
 私の身体も疼く。彼の乱れた姿を見ているだけで、下着の中が濡れていくのが分かる。
 このまま彼と一つになりたい。禁忌を犯した共犯者として、堕ちるところまで堕ちてしまいたい。

「抱いて、ユリウス。……あなたも、私が欲しいのでしょう?」
 私は濡れた瞳で彼を見つめ、誘った。
 私の胸を押し付け、彼の理性を溶かしにかかる。

 けれど――。
 ガシッ。

 私の頭を押さえつけていた手が、急に強い力で私を引き剥がした。

「……ッ、いけません……!」

 ユリウスが、荒い息を吐きながら私と距離を取る。
 その黒い瞳は、熱に浮かされ、瞳孔が開いている。明らかに異常な興奮状態にあるはずだ。
 なのに、その瞳の奥にある「理性」の光だけは、消えていなかった。

「ロゼノア様……貴女は、王妃だ……。王の、妻だ……ッ」
「ユリウス……?」
「たとえ命を救われたとしても……この身が焼けつくほど貴女を求めていても……ッ! これ以上の不義は、騎士として許されない……!」

 彼は歯を食いしばり、苦悶の表情で私を拒絶した。
 その額には玉のような汗が浮かび、全身が小刻みに痙攣けいれんしている。
 本能は私を喰らいたいと叫んでいるのに、鋼のような精神力がそれを必死に抑え込んでいるのだ。

「……ユリウス」
「お下がりください……! これ以上そばにいたら、私は……貴女を……ッ」

 彼は顔を背け、自分の腕を爪が食い込むほど強く掴んで耐えている。
 その姿は、痛々しいほど高潔で、そしてどうしようもなく美しかった。

(……ああ。なんて強い人)

 私は拒絶されたにも関わらず、さらに胸の奥が熱くなるのを感じた。
 胸の刻印に口づけされ、急所を愛撫され、あれほど乱れたのに、最後の一線だけは譲らない。
 術の強制力にすらあらがう、気高い魂。
 まだ、彼は完全には私のものになっていない。

 その時、私の脳裏に『黒薔薇の書』の一節が蘇った。

『黒薔薇の刻印。……失われし命を繋ぎ止める、禁断の術……』
『蘇りし者は……術者を唯一の絶対者と認識し、尽きることのない渇望と忠誠を捧げることになるだろう……』

(尽きることのない渇望……)

 私は乱れたドレスを直し、熱いため息をついた。
 今はまだ、その理性で耐えられるかもしれない。
 けれど、この渇きは永遠に続く。
 私がそばにいる限り、彼は永遠に満たされない飢えに苦しむことになる。

(……いい気味だわ。私を拒絶した罰よ)

 私は再び彼に近づき、上目遣いで、快楽に悶絶もんぜつする彼を見上げた。

「……分かったわ、ユリウス。許してあげる」
「はぁ、はぁ……感謝、します……」
「でも、我慢するのは毒よ……んっ」

 私は再び、彼の張り詰めたくさびくわえ込んだ。
 今度は、容赦しなかった。
 喉の奥で締め上げ、舌で転がし、彼を限界の淵へと追い詰める。

「あっ、あっ、あっ! だめ、そんなに吸われたら……ッ! ロゼノア様、出ます……ッ! 貴女の口の中に、出てしまう……ッ!」

 彼はシーツが破れんばかりに爪を立て、足の指を丸めて絶叫した。

「あ、あぁッ……! ロゼノア様、許して、許してくだ……さいッ……! あぁぁぁぁぁ――ッ!!」
「んっ、んーッ!(出しなさい、私の全部で受け止めてあげる!)」

 私は喉を開き、吸いつく力を強めた。
 彼の腰が弓なりに跳ね上がり、ビクビクと激しく痙攣する。
 ドクンッ、ドクンッ!
 喉の奥に、熱いものが勢いよく注ぎ込まれた。
 それは、尽きることのない渇望と、彼から溢れ出る熱い生命力。
 私は一滴も漏らさず、そのすべてを飲み干した。

 ――ゴクリ。
 喉が鳴る音が、静寂に戻った部屋に響いた。

「ハァ……、ハァ……ッ、ぅ……」

 ユリウスは白目を剥きかけ、魂が抜けたように脱力してベッドに沈んでいる。全身は汗でびっしょりと濡れ、呼吸は荒いままだ。
 私は口角から垂れた白いものを指で拭い、それを舐め取って艶然えんぜんと微笑んだ。

「……ふふ。愛おしい人」
「……あ……私は……なんということを……申し訳、ありません……」

 彼は焦点の合わない目で私を見つめ、絶望と快感の余韻に打ち震えていた。
 騎士としての誇りは守ったつもりでも、結局は王妃に奉仕させ、出してしまった。
 その背徳的な事実は、彼を私という主人の泥沼に、さらに深く引きずり込むだろう。

 最後に、彼の先端に残るしずくをペロッと舐め上げると、ユリウスは「ひうっ……!」と喉を鳴らし、ビクリと腰を跳ねさせた。

「ふふ、今日はここまでにしておくわ。……でも、忘れないで」

 私は、精根尽き果てた彼の額に、ねっとりとしたキスを落とした。

「あなたの命も、この身体も、すべて私のもの。……あなたはもう、私なしでは生きられないのよ」

 私は彼を残し、安置所を後にした。
 悶えるユリウスの姿を思い出しながら、私は背徳的な喜びに身を震わせた。
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