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3話 銀色の毛並みと、密やかな体温
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「これが私からのお礼なのにまたお礼を貰うなんて……」
「オレがラナちゃんに何かしてあげたくなったの」
「それじゃあ……さっきの狼の姿、また見せてもらいたいな……とか……」
頬杖をついてニコニコとしているリゲルは優しげで、ラナはつい、本音が漏れる。
「え? 物好きだな。じゃあいいよって言うまで目を瞑ってて」
ラナは言われた通り目を瞑って暫く待つ。
「いいよ」とリゲルの低い声が聞こえて目を開けると、人間のような目鼻立ちではなくマズルのある狼の顔立ちに、すっかり全身を体毛に覆われた姿になったリゲルがそこに居た。背中側は銀色でお腹側は白い体毛の神々しい人狼の姿に、ラナは目が離せなくなる。
「わぁ、触ってもいいですか……?」
ラナはテーブル越しに手を伸ばそうとするが、リゲルの手招きに促されるまま立って近寄ると、その膝の上に座らされた。
「好きに触っていいよ」
「わぁ……もふもふ……」
ラナはそっと服の間から溢れる体毛に手を伸ばす。
透き通るような白色の柔らかな毛に、ラナの手が包まれる。顎から首にかけてのふわふわもふもふとした手触りに夢中になってしまう。まるでなにも触れてないかのような滑らかさと、もふもふの感触が不思議で癖になる。
「あ、あの、耳も触っていいですか?」
「いいよ」
耳にも触れてみると柔らかく厚みのある耳の皮膚と毛が、高級な絨毯のような触り心地だった。
優しく折ってみるとピロッとすぐに元に戻り、耳が細かく震えた。
「かっ……可愛い……!」
狼なのに、その仕草のあまりの可愛さに、ラナは目を見張って悶絶する。
「ラナちゃん、イヌ扱いしてるだろ」
「そんなつもりは……!」
「こっちからも触らせて貰おうかな」
「ひゃっ、あっ、くすぐったい……!」
リゲルは背を屈めてラナの首筋にマズルを埋めた。
彼女は体毛が殆ど無いからか、これまで自分に近付いてきた他の種族の女よりもだいぶ匂いは薄い。しかしその匂いには何故か惹き付けられるものがあった。
「リゲルさ……だめだってば……ひゃぁんっ!」
ずっとこの匂いを嗅いでいたいと、スンスンと夢中になって吸っているといいところに触れたのか、ラナが甘い声を上げた。リゲルもやり過ぎたと慌てて顔を上げる。
「わりぃ……やり過ぎ……た……」
「私の方こそ変な声出しちゃって……」
顔を赤くして目を伏せるラナの睫毛が長く、微かに震えているのが堪らなくて、リゲルはその顔をもっとよく見たくなった。顎に手を添えて上を向かせ、思わずその唇を狼の薄い舌で舐め取る。
びくっと体を震わせるラナに、リゲルは己が何をしてしまったのかと気づく。
男に襲われて困っているラナについ、手を出してしまった。
自分でも驚きだった。驚いた拍子に、マズルと体毛が引っ込んでしまうくらいには。
お前もインキュバスと同じ身体目当てだったのかと失望させただろうかと、ラナの様子を見る。
しかしリゲルの予想を裏切り、彼女はそんな表情はしていなかった。
ラナはあれほど男が嫌だったのに、リゲルに唇を奪われて何故嫌悪感が湧かないのか考えていた。
嫌悪感どころか、もっと触れて欲しいとさえ思ってしまう。でもそれは、リゲルが格好いいからではないか――?
インキュバスたちが自分を人間という希少性で見ているように、自分も見た目で人を選んでしまっているのではないかという疑問が、ラナの表情を曇らせた。
「なぁ、その顔、嫌じゃなかった?」
「……嫌じゃ、なかったけど……これ以上はだめ……」
「どうして?」
「だって……こういうの、恋人同士がやるものでしょう」
「じゃあラナちゃん、オレの恋人になってよ」
リゲルのその言葉に、ラナは心臓や呼吸が一瞬止まったかのように思えた。だが、すぐにまた鼓動を始めて、息を吐く。彼は、おぼこな自分をからかっているのだろう。
そんな風に思われているとは露知らず、リゲルはラナの髪を一房手に取る。他の種族にはなかなかいない、真っ直ぐで黒い、艶やかな髪だ。
「リゲルさん、いろんな女の子にそう言ってます……?」
「ははは、そう見える?」
「格好いいからモテそうだし……」
「……狼は生涯たった一頭の番を愛するんだ。普通の狼男はそうでもないやつが多いけど、オレは狼の血が濃いのかこれまでそういう関係になった女はいないよ。体を重ねたら本気になっちゃいそうでね」
リゲルの青みがかった瞳で見つめられ、ラナはドッと心拍数が上がる。
「なんで昨日会ったばかりの私にそんな……」
「なんでだろうな。波長が合うってやつ?」
自分でもわからないと笑うリゲルは無垢な少年のようで、その手をすぐにでも取ってしまいたくなった。
しかし、昨日会ったばかりなのだ。昨日の今日で恋人になるには早急すぎると、熱で茹りそうな頭でもわかる。
「――……少し考えさせてください……。こういうのはお友達からじゃだめですか」
「勿論いいぜ」
「じゃあ今日の所は家に帰ります……」
この場にずっといるとリゲルに流されてしまいそうで、ラナはそそくさと持って来たバスケットを手にした。
「お邪魔しまし……」
しかし、ドアを開けると外はもうとっぷりと日が暮れ、家の周りの森は吸い込まれそうな暗闇となっていた。
こんな暗い中を帰るのは怖いが、このままここに居るわけにもいかないとラナが思案していると背後にリゲルが立った。
「暗いし、もう泊まって行きな」
「でも……」
「大丈夫、なんもしねーよ」
「うう……すみません……」
柔らかく微笑むリゲルがドアを閉めた。
泊まると言ってもこの家にはベッドは一つしかない。ラナは暖炉の前の床でを借りて寝るつもりだったが、リゲルがそれを許すはずもなかった。
「女の子を床で寝かせるわけにはいかないだろ」
「でも家主はリゲルさんだし……」
「オレは床で寝るから気にすんな」
「私だって日頃大したところで寝てないので床でも大丈夫です!」
「大したところじゃないって威張って言うことじゃないだろ」
リゲルがけらけらと笑った。しかしこれでは埒が明かない。
「それじゃ、一緒に寝る? オレデカいから狭いだろうけど」
「えっ……そんな……」
ラナはリゲルの提案をすぐには拒否出来なかった。
さっき触らせて貰ったもふもふを感じながら眠れたら、どれだけ幸せなのだろうと過ってしまったからだ。
育った家ではもふもふのチンチラの義兄弟たちとぎゅうぎゅうになって狭い所で寝ていたから、もふもふは恋しい。しかし恋人でもない異性と同衾など、非常識であることも分かっている。
ラナがもじもじと答えあぐねていると、不意にリゲルに抱え上げられて、ベッドに運ばれた。
「え、待って!?」
「すぐに拒否しないってことはその気があるんだろ?」
「そんなことは……」
ベッドにそっと降ろされると体が沈む。リゲルの使っているベッドはラナの家の物よりずっとふかふかだった。
「大丈夫、なんもしねーよ」
「うう……あの、じゃあさっきみたいにまた狼になってくれますか?」
「随分気に入ってんな」
リゲルはラナの目を覆い、狼の姿になった。
「わ、肉球も出るんだ」
覆っていた手を外すと、ラナがリゲルの手を取ってその肉球をぷにぷにと触った。
「この姿を怖がらないの、女の子では珍しいんだぜ?」
狭いベッドで、自然とリゲルに腕枕をされるように密着することになる。ラナは気恥ずかしさより、リゲルの手を借りて、その肉球を触って観察するのに夢中だ。リゲルの手はチンチラの肉球とは全く違う形で厚みや硬さがあり、指先には当然立派な爪もあって逞しい。
「そうなの? 確かに強そうですもんね。体も大きいし怖いかもだけど、リゲルさんは優しいし可愛いから怖くないかも」
「さっき付き合ってって言った相手にそういうことを言うって、ラナちゃんも相当な悪女だな」
「えっ! 変な意味はないんだけど……」
恋愛経験がなさそうな顔をして、無意識に人を煽ることには長けているラナにリゲルも調子が狂う。
「まだ眠くないし、ラナちゃんの身の上話でも聞かせてよ」
「いいけど、リゲルさんのことも教えてくださいね」
「リゲル」
「ん?」
「さんなんて付けるなよ。それと敬語もいらない」
「う、うん……。リ、リゲル……」
「そう。そう呼んで」
ラナは確認するようにその名前を口にした。リゲルが満足そうに笑い、ラナの頬を撫でた。
「リゲルはどうしてあの酒場で働いているの?」
「そうだな、適当にフラフラとその日暮らしして街の奴等がトール・ボールしてるのに混ざってたら、監督にトール・ボールチームに入れってスカウトされて、監督が酒場やってるって言うから酒場なら働いてもいいかなってことで雇って貰って、なんとなくやってる感じ」
「だいぶふんわり生きてるのね」
街ではなくこんな誰も住んでいない森に住み、ひとりの時間を愛している。その掴みどころのない雰囲気通り、リゲルは何かに縛られる生活を好まなさそうだった。
「ラナちゃんは何の仕事してんの?」
「私は図書館で働いてる」
「へぇ、似合いそう。家族は?」
「今はいなくて、一人暮らし」
「そっか……」
そうしてぽつぽつとお互いのことを話しているとラナの反応が鈍くなり、眠たくてうとうとしているのがわかった。
「ラナちゃんもう寝ていいよ」
「んん……もふもふ……」
寝ぼけながらぬくもりを求めてすり寄ってくるラナにリゲルは顔をほころばせ、彼女を抱き締めて自らも目を閉じた。
本当なら満月も近い今のような時期は心も体もざわついて眠れないのに、彼女がいると不思議と穏やかだった。
「オレがラナちゃんに何かしてあげたくなったの」
「それじゃあ……さっきの狼の姿、また見せてもらいたいな……とか……」
頬杖をついてニコニコとしているリゲルは優しげで、ラナはつい、本音が漏れる。
「え? 物好きだな。じゃあいいよって言うまで目を瞑ってて」
ラナは言われた通り目を瞑って暫く待つ。
「いいよ」とリゲルの低い声が聞こえて目を開けると、人間のような目鼻立ちではなくマズルのある狼の顔立ちに、すっかり全身を体毛に覆われた姿になったリゲルがそこに居た。背中側は銀色でお腹側は白い体毛の神々しい人狼の姿に、ラナは目が離せなくなる。
「わぁ、触ってもいいですか……?」
ラナはテーブル越しに手を伸ばそうとするが、リゲルの手招きに促されるまま立って近寄ると、その膝の上に座らされた。
「好きに触っていいよ」
「わぁ……もふもふ……」
ラナはそっと服の間から溢れる体毛に手を伸ばす。
透き通るような白色の柔らかな毛に、ラナの手が包まれる。顎から首にかけてのふわふわもふもふとした手触りに夢中になってしまう。まるでなにも触れてないかのような滑らかさと、もふもふの感触が不思議で癖になる。
「あ、あの、耳も触っていいですか?」
「いいよ」
耳にも触れてみると柔らかく厚みのある耳の皮膚と毛が、高級な絨毯のような触り心地だった。
優しく折ってみるとピロッとすぐに元に戻り、耳が細かく震えた。
「かっ……可愛い……!」
狼なのに、その仕草のあまりの可愛さに、ラナは目を見張って悶絶する。
「ラナちゃん、イヌ扱いしてるだろ」
「そんなつもりは……!」
「こっちからも触らせて貰おうかな」
「ひゃっ、あっ、くすぐったい……!」
リゲルは背を屈めてラナの首筋にマズルを埋めた。
彼女は体毛が殆ど無いからか、これまで自分に近付いてきた他の種族の女よりもだいぶ匂いは薄い。しかしその匂いには何故か惹き付けられるものがあった。
「リゲルさ……だめだってば……ひゃぁんっ!」
ずっとこの匂いを嗅いでいたいと、スンスンと夢中になって吸っているといいところに触れたのか、ラナが甘い声を上げた。リゲルもやり過ぎたと慌てて顔を上げる。
「わりぃ……やり過ぎ……た……」
「私の方こそ変な声出しちゃって……」
顔を赤くして目を伏せるラナの睫毛が長く、微かに震えているのが堪らなくて、リゲルはその顔をもっとよく見たくなった。顎に手を添えて上を向かせ、思わずその唇を狼の薄い舌で舐め取る。
びくっと体を震わせるラナに、リゲルは己が何をしてしまったのかと気づく。
男に襲われて困っているラナについ、手を出してしまった。
自分でも驚きだった。驚いた拍子に、マズルと体毛が引っ込んでしまうくらいには。
お前もインキュバスと同じ身体目当てだったのかと失望させただろうかと、ラナの様子を見る。
しかしリゲルの予想を裏切り、彼女はそんな表情はしていなかった。
ラナはあれほど男が嫌だったのに、リゲルに唇を奪われて何故嫌悪感が湧かないのか考えていた。
嫌悪感どころか、もっと触れて欲しいとさえ思ってしまう。でもそれは、リゲルが格好いいからではないか――?
インキュバスたちが自分を人間という希少性で見ているように、自分も見た目で人を選んでしまっているのではないかという疑問が、ラナの表情を曇らせた。
「なぁ、その顔、嫌じゃなかった?」
「……嫌じゃ、なかったけど……これ以上はだめ……」
「どうして?」
「だって……こういうの、恋人同士がやるものでしょう」
「じゃあラナちゃん、オレの恋人になってよ」
リゲルのその言葉に、ラナは心臓や呼吸が一瞬止まったかのように思えた。だが、すぐにまた鼓動を始めて、息を吐く。彼は、おぼこな自分をからかっているのだろう。
そんな風に思われているとは露知らず、リゲルはラナの髪を一房手に取る。他の種族にはなかなかいない、真っ直ぐで黒い、艶やかな髪だ。
「リゲルさん、いろんな女の子にそう言ってます……?」
「ははは、そう見える?」
「格好いいからモテそうだし……」
「……狼は生涯たった一頭の番を愛するんだ。普通の狼男はそうでもないやつが多いけど、オレは狼の血が濃いのかこれまでそういう関係になった女はいないよ。体を重ねたら本気になっちゃいそうでね」
リゲルの青みがかった瞳で見つめられ、ラナはドッと心拍数が上がる。
「なんで昨日会ったばかりの私にそんな……」
「なんでだろうな。波長が合うってやつ?」
自分でもわからないと笑うリゲルは無垢な少年のようで、その手をすぐにでも取ってしまいたくなった。
しかし、昨日会ったばかりなのだ。昨日の今日で恋人になるには早急すぎると、熱で茹りそうな頭でもわかる。
「――……少し考えさせてください……。こういうのはお友達からじゃだめですか」
「勿論いいぜ」
「じゃあ今日の所は家に帰ります……」
この場にずっといるとリゲルに流されてしまいそうで、ラナはそそくさと持って来たバスケットを手にした。
「お邪魔しまし……」
しかし、ドアを開けると外はもうとっぷりと日が暮れ、家の周りの森は吸い込まれそうな暗闇となっていた。
こんな暗い中を帰るのは怖いが、このままここに居るわけにもいかないとラナが思案していると背後にリゲルが立った。
「暗いし、もう泊まって行きな」
「でも……」
「大丈夫、なんもしねーよ」
「うう……すみません……」
柔らかく微笑むリゲルがドアを閉めた。
泊まると言ってもこの家にはベッドは一つしかない。ラナは暖炉の前の床でを借りて寝るつもりだったが、リゲルがそれを許すはずもなかった。
「女の子を床で寝かせるわけにはいかないだろ」
「でも家主はリゲルさんだし……」
「オレは床で寝るから気にすんな」
「私だって日頃大したところで寝てないので床でも大丈夫です!」
「大したところじゃないって威張って言うことじゃないだろ」
リゲルがけらけらと笑った。しかしこれでは埒が明かない。
「それじゃ、一緒に寝る? オレデカいから狭いだろうけど」
「えっ……そんな……」
ラナはリゲルの提案をすぐには拒否出来なかった。
さっき触らせて貰ったもふもふを感じながら眠れたら、どれだけ幸せなのだろうと過ってしまったからだ。
育った家ではもふもふのチンチラの義兄弟たちとぎゅうぎゅうになって狭い所で寝ていたから、もふもふは恋しい。しかし恋人でもない異性と同衾など、非常識であることも分かっている。
ラナがもじもじと答えあぐねていると、不意にリゲルに抱え上げられて、ベッドに運ばれた。
「え、待って!?」
「すぐに拒否しないってことはその気があるんだろ?」
「そんなことは……」
ベッドにそっと降ろされると体が沈む。リゲルの使っているベッドはラナの家の物よりずっとふかふかだった。
「大丈夫、なんもしねーよ」
「うう……あの、じゃあさっきみたいにまた狼になってくれますか?」
「随分気に入ってんな」
リゲルはラナの目を覆い、狼の姿になった。
「わ、肉球も出るんだ」
覆っていた手を外すと、ラナがリゲルの手を取ってその肉球をぷにぷにと触った。
「この姿を怖がらないの、女の子では珍しいんだぜ?」
狭いベッドで、自然とリゲルに腕枕をされるように密着することになる。ラナは気恥ずかしさより、リゲルの手を借りて、その肉球を触って観察するのに夢中だ。リゲルの手はチンチラの肉球とは全く違う形で厚みや硬さがあり、指先には当然立派な爪もあって逞しい。
「そうなの? 確かに強そうですもんね。体も大きいし怖いかもだけど、リゲルさんは優しいし可愛いから怖くないかも」
「さっき付き合ってって言った相手にそういうことを言うって、ラナちゃんも相当な悪女だな」
「えっ! 変な意味はないんだけど……」
恋愛経験がなさそうな顔をして、無意識に人を煽ることには長けているラナにリゲルも調子が狂う。
「まだ眠くないし、ラナちゃんの身の上話でも聞かせてよ」
「いいけど、リゲルさんのことも教えてくださいね」
「リゲル」
「ん?」
「さんなんて付けるなよ。それと敬語もいらない」
「う、うん……。リ、リゲル……」
「そう。そう呼んで」
ラナは確認するようにその名前を口にした。リゲルが満足そうに笑い、ラナの頬を撫でた。
「リゲルはどうしてあの酒場で働いているの?」
「そうだな、適当にフラフラとその日暮らしして街の奴等がトール・ボールしてるのに混ざってたら、監督にトール・ボールチームに入れってスカウトされて、監督が酒場やってるって言うから酒場なら働いてもいいかなってことで雇って貰って、なんとなくやってる感じ」
「だいぶふんわり生きてるのね」
街ではなくこんな誰も住んでいない森に住み、ひとりの時間を愛している。その掴みどころのない雰囲気通り、リゲルは何かに縛られる生活を好まなさそうだった。
「ラナちゃんは何の仕事してんの?」
「私は図書館で働いてる」
「へぇ、似合いそう。家族は?」
「今はいなくて、一人暮らし」
「そっか……」
そうしてぽつぽつとお互いのことを話しているとラナの反応が鈍くなり、眠たくてうとうとしているのがわかった。
「ラナちゃんもう寝ていいよ」
「んん……もふもふ……」
寝ぼけながらぬくもりを求めてすり寄ってくるラナにリゲルは顔をほころばせ、彼女を抱き締めて自らも目を閉じた。
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