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9.恋人といく①
しおりを挟む「恋人がいたら他で性的行為をすべきではない」という価値観を逸瑠も持ち合わせていたお陰で、予想していた波乱は起きなかった。また晴采を丸め込もうとしたらどう言い負かしてやろうかと身構えていた健吾は、拍子抜けしてデスクの椅子に腰掛けた。
「言おうとしてたこと、全部弟くんが先に言っちゃったな」
「ははっ……そうだね……」
自嘲気味に晴采は笑った。聞かされる側になってはじめて自分がどれだけ残酷な仕打ちをしようとしていたのか理解した。たまたま健吾がいたから耐えられている。そうでなかったら受け止めきれなかった。そんな事を逸瑠にしようとしていたのだと思うとぞっとする。逸瑠にも恋人ができて本当によかった。
「ああーっ、俺の逸瑠に恋人がぁ! まだそんな年じゃないと思ってたのにどんどん俺の手を離れ……あああぁ~」
晴采はベッドに突っ伏して身悶えた。逸瑠が立派に成長していく喜びと同時に、いつまでも甘えん坊のかわいい弟を独り占めしたいという相反する感情が晴采の中には有った。
「あんなにお兄ちゃんお兄ちゃん言って、今までお兄ちゃんが一番だったのに! お兄ちゃん大好きっていつまで言ってくれるかなぁ……あーん逸瑠ー!!」
「しれっと女の子つかまえてきたことについては何か思わない?」
「ああ、かわいい子だったね。逸瑠にはあれくらいじゃないと。あ、健吾も負けないくらい格好いいよ」
「そりゃどうも。でもそっか、俺が晴采の立場だったら発狂しそうだけど、そうだよな、晴采はどっちもいけるんだよな……」
昔から逸瑠が恋するのはいつだって女の子だった。好きな子、気になる子が現れるたび両親に報告するのを横で聞いているから間違いない。逸瑠が恋人を作るなら相手は当然女の子だと思っていたし、それについては何の引っ掛かりも感じていなかった。相手が女の子だから殊更腹が立つなどということはなく、同性でも同じ気持ちになっていただろう。
「いずれ逸瑠が誰かのものになることはわかってたんだ。でも、でもさあ……!」
また悶えはじめた晴采の頭を、健吾の手が優しく撫でた。
「あの子たちのことで晴采が悩んでも仕方ないだろう。幸せそうだったじゃないか。見守ってやったら?」
「だってぇぇ!」
「ブラコンの晴采にとってたいへんな日だってのはわかるけど、俺たちにとっても大事な日なんだよ。特に俺なんかはずっと好きだった子と恋人になれて、その子の部屋で二人きりで」
「健……ん……」
顔を上げた晴采は覆い被さってきた健吾に口を塞がれた。薄い胸の肉を揉まれて、気持ちよくはないのに何故かいやらしい気分になってしまう。
「好きだよ晴采。今は俺のことだけ考えて」
口付けが首筋、鎖骨と下がっていき、ボタンも上から一つ、二つと外された。健吾のキスが乳首に近付くにつれ高まる鼓動。早く食べてほしくて勃起した乳首は吐息がかかっただけでも晴采を感じさせる。尖らせた舌先が乳輪の淵をなぞった。
「健吾」
焦らされた晴采の物欲しそうな表情を見て、健吾は満足気に目を細めた。
「あっ!!」
温かい口の中に乳首が含まれた。吸われて、弾かれて、圧されて、捏ねられて、まだ脱がされてない下半身があっという間にきつくなる。気付いた健吾が下の方に移動して制服のパンツを脱がせた。剥き出しになる、真ん中がはしたなく膨らんだ晴采のボクサーパンツ。貴重な逸品を見つけた愛好家のように、健吾はほうと息を吐いた。
健吾の掌が素肌の太腿を撫で上げ、裾から侵入させた指がぎりぎりをくすぐる。そのたびにカウパーがじわりと漏れて下着の色を濃く変えていった。
「かわいい」
「恥ずかしいよ……」
健吾がボクサーパンツを脱がしにかかったとき晴采は少しほっとした。おかしな話だが、下着に染みを作るのを観察されるより裸にされる方がマシに思えた。腰を浮かせて脱がすのに協力する。
「これが晴采のっ……!!」
物凄い勢いでガン見されている。逸瑠とは一緒にお風呂に入る仲だから、お互いの裸への興味はあまりなかった。こんなにも股間を凝視されるのは初めてだ。まだ明るい時間だし普通に、いやかなり恥ずかしい。裸の方がマシなんてことは全然なかった。自分も踊り場で健吾のモノをガン見していただけに見るなとも言えない。頑張って耐えた。
健吾が手早く服を脱いで晴采に身体を密着させた。そして二人の間に挟まれた二本の男根を揉み込むように腰を振る。気持ちいい。性器と性器が触れ合う卑猥さと至近距離から自分を見下ろす雄の色気に中てられて、晴采の興奮も高まる。
「気持ちいい?」
「きもちぃ、けんご、ん、あ、あ……」
このままいけばもう少しで、というところで健吾が体勢を変えてしまった。
「きて晴采」
「ん……えへへ」
「なに?」
「だって膝に乗るのって久しぶり」
膝に乗ると言っても二人の体格差はそこまで大きくない。晴采はベッドに膝を着いて、胡坐をかいた健吾に跨っている状態だ。それでも小さい子供の頃を思い出して楽しくなった。相手が親から恋人に変わっても愛されてる充足感は変わらない。
「ああーっ、健吾ぉ……!!」
仰け反る晴采の背中を抱き寄せて、健吾はたっぷりと乳首を味わった。晴采は下半身を密着させて小刻みに腰を振る。健吾のお腹に裏筋が擦れて気持ちいい。根元に当たる健吾の男根もがちがちで熱くて興奮する。
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