キスと乳首

恩陀ドラック

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番外編2.兄で悩む

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 小さい頃の晴采は非常に恥ずかしがり屋で恋愛要素が大の苦手だった。ラブストーリーは見ない。ラブシーンなど以ての外。一緒にいて付き合わされる逸瑠は不満だった。その反動もあり、逸瑠は昔から恋愛に興味津々だった。

 恋愛がおままごとだった時代には両手でも数えきれないほどの彼女がいた。だんだんと女の子たちが大人になって恋に現実味が帯びてくると、そう簡単にお付き合いできなくなってくる。さらに悪い事に、まだ幼く充分な分別を身につけていなかった逸瑠は、オープンな性格が故にやらしー事への興味までオープンにしてしまった。反省して女子の前では下ネタ禁止にしたのだが後の祭り。女子からは距離を置かれ、不遇の小学生時代を過ごすこととなった。

 中学校に上がる頃の逸瑠は、明るくて人当たりが良くて運動ができて頭も悪くないかわいい系イケメンになっていた。不用意な言動もすっかり過去のものとなり、ようやくモテ始めた。やらしー事への興味は変わっていない。早く彼女を作って色々したい。男同士でするやらしー遊びも楽しいけど、あれはあくまで親しい仲間内での悪ふざけ、自慰の延長という枠を出ない。やっぱり女の子の体が気になる。映像ではわからない女の子の感触を確かめたい。

 この年になっても兄から恋愛系の話は一切聞いたことがなかった。どうやらオナニーはしているようだし、乳首であんなことになったので潔癖ではないのは確かだ。ちなみに晴采の乳首開発に着手したのは今年の夏の初め頃。男の乳首が性感帯であることを知って、好奇心と出来心に逆らえなかった。邪魔だから取ろうと思ったのは本当だけど何年も前の話だ。

 その気になれば彼女の一人や二人すぐにできそうなのに、性欲だってちゃんとあるのに、奥手すぎる。兄のそういう部分だけは理解できないなぁと思っていたのだが、ちゅーされて謎がすべて解けた。兄は自分に恋していたのだ。逸瑠は悩んだ。兄弟で付き合うのはちょっとおかしい気がするし、同性を恋愛対象にするつもりもなかった。だって男同士じゃセックスできない。やらしー遊び以上のことをしてみたくてたまらない逸瑠にとっては大問題だ。学校での休み時間、いつも一緒にふざける友人たちが心配して逸瑠を囲んだ。


「逸瑠どうしたんだよ。今日は大人しいね」

「昨日告白されたんだけど、どうしようか悩んでるんだ」

「えっ、すげえ!!  相手誰!?」


 分別ある逸瑠は上手いことぼかして、相手は年上で立場上大っぴらに付き合えないことだけ明かした。


「なんだよそれ。なんかエロい」

「付き合っちゃえよ!」

「無責任だなあ」

「逸瑠はその人のこと好きじゃないの?」


 もちろん兄のことは大好きだ。兄以上に自分を可愛がってくれる存在はこの先絶対に現れないだろう。兄であることに目をつぶれば、晴采はきっと最高の恋人になるに違いない。兄の乳首をいじろうと思ったことや兄とするやらしー遊びがあんなに楽しいのは、自分も心の奥底では兄を、兄としてではなく好きだったからなのかも知れない。


『ずっと逸瑠とちゅーしたかった』


 そう言っていた兄。物心ついた頃には既に溺愛が始まっていた。どれだけ長い間恋心を隠していたのか。他の誰にも目もくれず、四つ年下の弟が成長するまで手を出さずによく待っていてくれた。改めて兄の愛の深さに胸が震える。あれだけ盲目的に愛情を注いでくれる兄と一緒なら障害を乗り越えられそうな気がしてきた。


「OKしてみようかな……」



 まさか振られるとは思ってもみなかった。人生でこんなにがっかりしたことはない。こっちはいつか女の子とセックスするという夢を諦めてまでちゅーをしたのに。弟に片思いして恋人を作らなかったとか、全然勘違い。度が過ぎるだけで根は健全なブラコンだった。なんだよもう!

 逸瑠はなんとなく気付いてしまった。恋人という肩書があろうとなかろうとお兄ちゃんとの関係は変わらなくね?  ということに。振られてもずっと兄と弟だ。生涯縁が切れることはない。恋人ができたらしてみたいこと、手を繋ぐ、デートする、キスをする、イチャイチャする。全部やってるし、今後もやるだろう。案の定やらしー事もさせてくれた。なんだか吹っ切れた。



 次の日、友達に振られたと報告したら驚かれた。その数時間後に彩希から告白を受けて、今度は自分が驚かされた。逸瑠の恋バナを小耳に挟んで、もたもたしていたら誰かにもっていかれるかもと危機感が湧いたのだそうだ。彩希とは小学生の頃から仲が良い。同じ白亜紀好きとして話が合った。逸瑠も彩希をかわいいとは思っていたが、彩希は逸瑠の過去の言動を知っている。会話も専ら白亜紀中心の中生代ばかりだし恋愛関係にはならないだろうと思っていた。嬉しい誤算だ。

 兄弟には両親から、女性を大切にするよう徹底した教育がなされている。貞操観念はもちろん母親が植え付けた。どんなに変態的欲望を抱いたとしても女性への接し方は紳士である。心配されるような行為を逸瑠が彩希に強いることはなかった。普通のやらしー事はした。


 晴采が恋人を連れて来たのは本当に驚いたし、安心もした。あの通りのブラコンだから、弟に恋人ができたらまた泣いちゃうんじゃないかって心配だった。ただ相手が男っていうのは理解できない。だってセックスできないのに。まあ本人たちがそれでいいならいいだろう。健吾はいい奴っぽいし、安心して兄を任せられる。

 お互い惚気たり恋の悩みを相談したり。兄とのそんな未来を思い描いて逸瑠は楽しい気分になった。男同士でもセックスできると知って晴采を困らせるのはまだ先の話である。






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