極悪令息と呼ばれていることとメシマズは直接関係ありません

ちゃちゃ

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3 いざ街へ

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 自称料理研究家(6年料理に没頭しているのだから自称して良いだろう)である俺は食材にも調理器具にも拘る男だ。
 
 家が広く貿易を行っている為、各国様々な調理器具を取り寄せることが出来る。伯爵家かつこの家に生まれた幸運を感じる。運命的だ。
 
 だが食材はそうはいかない。やはり自らの足で、目で、新鮮で面白い(? )食材を勝ち取り、目利きの力を備えることがメシウマへの第一歩……!
 
 数年前から食材を探しに街へ出るようになった。貴族街の人々は俺のことを知ってる、というより黒髪の極悪伯爵令息という存在を知っている。揉め事回避と、俺を怖がった結果買い物が出来なくなることを防ぐために、俺は外出時にスプレーで髪を茶色にし、目に入れると虹彩の色が変わる目薬をさした。赤茶っぽい目になった。レンガ色みたいな。
 
 スプレーは専用のシャンプーで落ちるし、目は半日で元に戻る。半日を過ぎそうなら再度目薬をさす必要がある。
 
 今までは子どもということもあって従者が着いてきたが、16歳の誕生日を迎え、成人を理由にめでたく一人で街へ出かけられるようになった。これで時間や周りを気にせず色んな場所を回ることが出来る。
 
『お金持ちの平民』に見えるような、シンプルだが質の良い白のシャツとタイトめの黒のパンツを着て、めくるめく食材探検へと出掛けた。

 
 ここの調味料、品揃え良くてありがたいなぁ。父さんにお願いしたら他国の調味料も取り寄せてもらえるけど、受け取るにも買い足すにも時間かかるし、近くにお店があるだけで嬉しい。
 
 今日は一人なので、あまりたくさんは買えない。なので今まで行ったことないお店を見て回ることにした。ここは貴族街なので、しっかり建てられた店舗が多い。目利きを上げるという名目でお店で特に何も買わずに回って行く。冷やかしではない、吟味に吟味を重ねて本日のベストを買いたいのだ。
 
 一通り貴族街を回ると、そのまま平民街に出た。
 平民街へはあまり来たことがない。貴族はほとんどこちらまで来ないし、黒髪の極悪令息の話は平民にはあまり広がっていないようだ(それも時間の問題だが)。ただ、貴族の使用人等は来ることも多いだろうから気を付けるに越したことはない。
 貴族街とは違い、露店や簡易的な店、こざっぱりとした開放感ある建物が多い。貴族街では石やレンガ造りが多いが、平民街の建物の多くは木材で作られていた。
 露店で謎肉の串焼きを買い、食べながら見て回る。先程あった調味料類は見当たらず、見た事ない野菜や果物、食べられるか分からない草花、魔物やうさぎの肉などが並べられている。
 
「おじさん、この草って食べられるの?」
「ん? あぁ、もちろんだ。シバナという薬草で滋養強壮にもよく、ちょっと癖がある。汁物に合う。こっちはタバカリそう。匂いがキツいが味は美味い。焼いて肉と一緒に食べると消化にも良い」
「へー! 凄いな! この2つの薬草をください」
「了解。包むからちょっと待ってな。150リラで良い。一見さんだし男前だからまけてやるよ。その分また来てくれ」
「いいのか!? やったー! 絶対また来ます」
 
 俺の住むアキスト王国の通貨はリラ。100リラでリンゴ1個くらいが買える。1000リラで1人分の美味しい肉が、1万リラで良い酒が買える。
 思いがけずまけてもらい、包んでもらった薬草を胸にウキウキで食事処を探す。貴族の食事は普段から食べてて予想が付くけど、平民の人たちは普段どんなものを食べているのだろう。
 国の「豊かさ」の目安は「食事」にあると言われている。それも、金回りがよい貴族ではなく、一般的な生活や商売を営む平民たちが、美味しく温かな食事を無理なく食べられているのが良いとされている。ここアキスト王国はどの水準だろうか。
 
 知らない料理にも出会えるかもしれないとニコニコしながら歩みを進めていると、何故だか外に出ている人みんなに見られてる気がする。え! 悪魔のような極悪伯爵子息の似顔絵張り出されたりしてないよね!? ヘラヘラ笑いながら歩いてたのが奇妙に映ったのかな。
 笑顔を引っ込めて、キョロキョロと左右に目を動かしながら食事処を探す。露店は多いんだけどな……。としばらく歩いた所で良い香りが漂ってきた。香ばしい匂いに食欲が刺激され、お腹が鳴った。
 そう言えば今日は朝食べてからまた何も食べてないな……。
 
 匂いに釣られるまま、その匂いの元となる場所まで足を動かした。
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