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34 メシマズ問題
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泣いて腫れた目が多少マシになった程度のキールの手を引いてリアムが教室に戻ってきた。鼻をかんだのか赤くなっている。キールの手を繋いでいない方のリアムの手には冷たい水が入ったグラスがあった。わざわざ食堂寄ってたから遅かったのか。俺も水欲しい。クッキーで口の中は水分が枯渇している。
「俺もちょっと水もらってくるわ。フリードもいる?」
「あぁ、じゃあお願いするよ」
教室から出たすぐに給水器があるはずだ。二人がわざわざ食堂に行ってたのは、リアムがキールとの時間を長く過ごしたいからだろう。
そこではたと気付いた。……水を汲むのは料理じゃないから平気だよな……? マルタ食堂での実験がまだなので、何がセーフでどこからアウトなのか分からない。一応先に謝っておくか……。
両手に水を持ったまま席に座る。キールは落ち着いたようで、チラチラと俺を見ながらお菓子を食べている。目が合うと嬉しそうに笑っていて可愛らしい。隣で鋭い眼光を俺に向けるリアムが居なければ、ただの楽しい放課後ティータイムだったのに。あれ? 確か俺もお前の友人だったような……? 違った? 俺の気のせい? 自意識過剰かな???
じくじたる思いになりつつも、キールだけが特別だということを全身で表現しているリアムと、その気持ちを向けられているキールを羨ましく思う。家族以外と関わらないようにしていてずっと一人だったし、人に対してどうこう考えたことも無かったな。だが、友人たちの仲直りをして、自分自身のことも徐々に分かってきた今、なんとなく心に余裕がある気がする。
特別か……特別といったら思い浮かぶのはレオなんだけどな……。信頼してるし、これからのことを考えると運命共同体的な特別な友人だ。少し前までは無かった自分の『特別』に、ちょっとくすぐったい気持ちになる。俺は知り合いも少なくて、生きてきた狭い世界でやっと出会えた俺を大事にしてくれる優しい人。でも他国の王族で冒険者としての経験も豊富な、広い世界を知っているレオにとって、俺のことを特別だと思ってくれてたとしても唯一ではないかもしれない。それを思うと心臓が軽くきゅっと絞られたような感覚がした。……なんだろう…。
「エルぼんやりしてる所悪いけど、お水もらって良い?」
「あ……、あぁごめん。どうぞ。ただ飲む前に忠告することがある」
「何?」
不思議そうな顔をするフリード。話を聞いていたキールも頭を傾げる。ただ水を飲むだけに忠告とか意味分かんないよな。だが公爵家の跡取りを万が一にも昏倒させる訳には行かない。
「俺が与える水がクソまずい可能性がある」
「……? そこの給水器の水だよね?」
「そうだ」
「中に何も入って無いんだよね?」
「汲んだだけだ」
「なら何故そんな可能性が?」
フリードはともかく、他の二人にはリティーダ共和国の話はまだすべきではないし、両家とも俺に良い印象が無い分他国に情報が漏れる可能性もある。愛し子のことや保護魔法とその代償の話はフリードにも出来ない。申し訳ないが曖昧に話すしかないか。
「俺が作った料理は俺以外が食べると何故かすごく不味くなるんだ。キールたちが小さい頃倒れたのもこの性質のせいだ。料理自体には普通の食材しか入ってないから、当時は倒れた原因が分からなくてより怖がらせたのだと思う」
「え!? そんな性質ある?」
「あぁ。呪いかと思って見てもらったが、呪いではないらしい。治せるが、時間が掛かるようで……。まぁ呪いみたいなものだと思ってくれ」
「うーん、申し訳ないけどちょっと信じられないな。倒れるくらい不味いの?」
「いや、子供には強烈かもしれないが、大人ならその場でしばらく動けなくなるくらいだ」
うちの使用人やガルロさんがそんな感じだった。
「じゃあ大丈夫かな」
こく。
俺が止める間もなくフリードが水を一口飲み込む。心の準備をさせてくれ。
「だ……大丈夫か……?」
「うん。普通の水だね」
「良かった……」
俺が本当に焦りホッとしているのを見て、ふざけているのではないと気付いたのだろう。キールが顎に手を当て、真剣な表情で話しかけてくる。
「水を汲むことは料理とは言えないから、水は素材扱いなのかも。その水に何かを足すだけで料理と見なされ、その呪いに近いものが発動するかもしれない」
どうやって証明しようか悩んでいたが、そうすれば良いのか。だがそうなると……。
「もし確かめるなら、誰かが犠牲になることになるんだけど」
過去俺のせいで倒れて丸一日寝込んだキールとリアム、そしてとても尊い身分のフリード。俺としては飲ませたくはない。でもこの事を信じてもらわない限り、仲違いした最初の原因が分からないままになってしまう。一応、両家の両親には6年前に伝えてあるはずなんだけど信じて貰えなかったし。キールが泣きながら謝ってくれた分、俺も自分の否をちゃんと説明して謝りたい。
さて、どうするか……。
「俺もちょっと水もらってくるわ。フリードもいる?」
「あぁ、じゃあお願いするよ」
教室から出たすぐに給水器があるはずだ。二人がわざわざ食堂に行ってたのは、リアムがキールとの時間を長く過ごしたいからだろう。
そこではたと気付いた。……水を汲むのは料理じゃないから平気だよな……? マルタ食堂での実験がまだなので、何がセーフでどこからアウトなのか分からない。一応先に謝っておくか……。
両手に水を持ったまま席に座る。キールは落ち着いたようで、チラチラと俺を見ながらお菓子を食べている。目が合うと嬉しそうに笑っていて可愛らしい。隣で鋭い眼光を俺に向けるリアムが居なければ、ただの楽しい放課後ティータイムだったのに。あれ? 確か俺もお前の友人だったような……? 違った? 俺の気のせい? 自意識過剰かな???
じくじたる思いになりつつも、キールだけが特別だということを全身で表現しているリアムと、その気持ちを向けられているキールを羨ましく思う。家族以外と関わらないようにしていてずっと一人だったし、人に対してどうこう考えたことも無かったな。だが、友人たちの仲直りをして、自分自身のことも徐々に分かってきた今、なんとなく心に余裕がある気がする。
特別か……特別といったら思い浮かぶのはレオなんだけどな……。信頼してるし、これからのことを考えると運命共同体的な特別な友人だ。少し前までは無かった自分の『特別』に、ちょっとくすぐったい気持ちになる。俺は知り合いも少なくて、生きてきた狭い世界でやっと出会えた俺を大事にしてくれる優しい人。でも他国の王族で冒険者としての経験も豊富な、広い世界を知っているレオにとって、俺のことを特別だと思ってくれてたとしても唯一ではないかもしれない。それを思うと心臓が軽くきゅっと絞られたような感覚がした。……なんだろう…。
「エルぼんやりしてる所悪いけど、お水もらって良い?」
「あ……、あぁごめん。どうぞ。ただ飲む前に忠告することがある」
「何?」
不思議そうな顔をするフリード。話を聞いていたキールも頭を傾げる。ただ水を飲むだけに忠告とか意味分かんないよな。だが公爵家の跡取りを万が一にも昏倒させる訳には行かない。
「俺が与える水がクソまずい可能性がある」
「……? そこの給水器の水だよね?」
「そうだ」
「中に何も入って無いんだよね?」
「汲んだだけだ」
「なら何故そんな可能性が?」
フリードはともかく、他の二人にはリティーダ共和国の話はまだすべきではないし、両家とも俺に良い印象が無い分他国に情報が漏れる可能性もある。愛し子のことや保護魔法とその代償の話はフリードにも出来ない。申し訳ないが曖昧に話すしかないか。
「俺が作った料理は俺以外が食べると何故かすごく不味くなるんだ。キールたちが小さい頃倒れたのもこの性質のせいだ。料理自体には普通の食材しか入ってないから、当時は倒れた原因が分からなくてより怖がらせたのだと思う」
「え!? そんな性質ある?」
「あぁ。呪いかと思って見てもらったが、呪いではないらしい。治せるが、時間が掛かるようで……。まぁ呪いみたいなものだと思ってくれ」
「うーん、申し訳ないけどちょっと信じられないな。倒れるくらい不味いの?」
「いや、子供には強烈かもしれないが、大人ならその場でしばらく動けなくなるくらいだ」
うちの使用人やガルロさんがそんな感じだった。
「じゃあ大丈夫かな」
こく。
俺が止める間もなくフリードが水を一口飲み込む。心の準備をさせてくれ。
「だ……大丈夫か……?」
「うん。普通の水だね」
「良かった……」
俺が本当に焦りホッとしているのを見て、ふざけているのではないと気付いたのだろう。キールが顎に手を当て、真剣な表情で話しかけてくる。
「水を汲むことは料理とは言えないから、水は素材扱いなのかも。その水に何かを足すだけで料理と見なされ、その呪いに近いものが発動するかもしれない」
どうやって証明しようか悩んでいたが、そうすれば良いのか。だがそうなると……。
「もし確かめるなら、誰かが犠牲になることになるんだけど」
過去俺のせいで倒れて丸一日寝込んだキールとリアム、そしてとても尊い身分のフリード。俺としては飲ませたくはない。でもこの事を信じてもらわない限り、仲違いした最初の原因が分からないままになってしまう。一応、両家の両親には6年前に伝えてあるはずなんだけど信じて貰えなかったし。キールが泣きながら謝ってくれた分、俺も自分の否をちゃんと説明して謝りたい。
さて、どうするか……。
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