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61 決闘
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「これより、オルフェス・クロスフェードとレオンによる決闘を始める。武器は木剣のみ。多少の怪我は問題ないが、死に至らしめることは禁止とする。他、二人から追加あれば申し出するように」
「オルフェス様、此度の決闘に私が勝利しましたらティアとの婚姻をお認めください」
「あぁ認めてやるさ。私に勝てたらな!」
お父様が立ち会いの元、決闘の準備が整った。レオはA級冒険者でかなり強いはずだ。そして、お兄様も学校の剣技の授業は常に上位であったし、シャムと共に危険な地域に行けるほど強い。俺は二人が怪我なく終えられることを祈った。
「はじめ!」
最初に仕掛けたのはお兄様だった。木剣を左手で下向きに持ったままレオに走り寄る。近付いた瞬間右手で木剣を下から上へと振り上げる。それを難なく受け止めるレオを一瞥したお兄様はそのままレオの首や関節、急所を狙って木剣を当てに行く。強さの比較は分からないが、体格や対人戦の経験の差を考えると、急所を狙うことは理にかなっているように思える。
一方レオは繰り出されるお兄様からの打撃を受け止めることに集中し、機を狙っているように見える。俺が二人とも怪我して欲しくないって言ったから……自分から攻撃することを控えてるんだろうか……。ばくばくと胸から飛び出しそうな心臓を手で抑え、二人の対決を見守る。
しばらく激しい剣戟の音が響いていたが、お兄様が再びレオの首に目掛けて剣を振るった、その一瞬の間にレオがお兄様の足を払い、剣を薙ぎ払い、地面に叩き倒した。
「ぐっ!」
「まだ、続けますか?」
木剣も無く、完全に体が地に着いた状態では続行不可能だろう。
「いや、私の負けを認めよう。降参する」
「勝者、レオン」
やった……! レオが勝った……! それに本当に二人とも大きな怪我してない……良かった……。
「全然闘いにならなかったな……」
「いえ、剣のスピードも早く、的確に急所に当てる精巧さは類を見ないほどです。ただ、その正確さ故に次の一手が予測出来てしまいました」
「なるほどな、参考にします。あなたのことはまだよく分からないし気に入りませんが、強さとティアへの想いはまぁ少しは認めましょう」
「ありがとうございます。必ず、命を賭してもティアを守り抜きます」
「……婚約者であるティアを独り身にするような情のない男はいりません。必ずティアもお前自身も息災でいるように努めてください」
「はい。敬語は不要です。先程までのように気軽に話してください」
「確か同い年だったな。お前も家の中では楽にして構わない。私の事もオルフェスと呼んで良い」
「分かった、オルフェス。これからもよろしく」
すごい……喧嘩の後に芽生える友情みたいだ……。嬉しくなって二人に近寄るとレオが抱きしめてくれた。お兄様は苦虫を噛み潰したような顔をしているが、特に何も言わない。前に見たお父様と同じ顔してる。
「レオもお兄様もお怪我はありませんか?」
「大丈夫だよ、心配かけたね」
お兄様は地面に倒されていたが大丈夫だろうかと顔を見ると、じっと俺を見ていた。
「ティア、レオンのことが本当に好きかい?」
「はい。初めて全てを預けられる、信じることが出来る、愛しい人が出来たと思いました。不安なこともたくさんありますが、レオとなら大丈夫だと確信しています」
「そうか……ならば何も言うまい。ティアが少しでも泣いたり悲しませたりしたらぶん殴るからそのつもりで」
「ありがとう。オルフェスが認めるくらいの男になれるよう精進する」
これで一件落着と思いきや、いつの間にいたのかシャムがススス……とお兄様の隣に移動してきた。シャムがいるだけで嫌な予感がする。
「オルフェス様、本当に宜しいのですか?」
「可愛いティアを任せるのは気に食わないが、この男以上に頼れる者がいないのも確か。ティアもレオンを好いているのなら私からはもう反対はしない」
「しかし……」
「なんだ」
「入籍前の若い二人が風呂場で二時間以上過ごしていたことと、総額で屋敷が買えるほどの額の揃いのアクセサリーを堂々と見せ付けるのは如何なものかと」
「「なにぃー!!?」」
目の前のお兄様と、決闘の終わりを見届けそのまま帰ろうとしたお父様の声が中庭に響いた。シャムは相変わらずお父様とお兄様ファーストだが、これは単に面白がっているだけだ。この状況に流石のレオも焦っている。
「こ、婚約者同士で一緒に入浴するなど、普通ではないですか……?」
「ナルカデア王国では知りませんが、アキスト王国は婚姻前は慎ましく過ごすんです! ティアの身の安全を図るために隣に部屋を用意したと聞いていたのに、貞操の危機に陥ってるじゃないか。まさか最後まで致していないだろうな、許さんぞ」
「というか国宝だけでも恐ろしいのに、あ、このピアスよく見たら黒水晶じゃないか! 怖い! 二人とも家から出るな!」
お兄様とお父様に詰め寄られてあたふたしているレオが珍しくて面白い。自分の話でもあるし、割と繊細な話題だと思うのに、レオが二人と普通に言い合いしている様子が本当に家族のように近しく感じて嬉しさが勝った。
残暑はもうなく、庭の草花も秋めいてきて、お昼だというのに風が吹くと肌寒さを感じた。このまま寒さが厳しくなると、レナセール国は、シドやラキくんたちはどうなるだろうか。元気だろうか。遠くの空を見ながらそんな心配をしていたが、お兄様がレオの顔をばちこーんと殴ったのを見て、慌てて駆け寄ったのだった。
「オルフェス様、此度の決闘に私が勝利しましたらティアとの婚姻をお認めください」
「あぁ認めてやるさ。私に勝てたらな!」
お父様が立ち会いの元、決闘の準備が整った。レオはA級冒険者でかなり強いはずだ。そして、お兄様も学校の剣技の授業は常に上位であったし、シャムと共に危険な地域に行けるほど強い。俺は二人が怪我なく終えられることを祈った。
「はじめ!」
最初に仕掛けたのはお兄様だった。木剣を左手で下向きに持ったままレオに走り寄る。近付いた瞬間右手で木剣を下から上へと振り上げる。それを難なく受け止めるレオを一瞥したお兄様はそのままレオの首や関節、急所を狙って木剣を当てに行く。強さの比較は分からないが、体格や対人戦の経験の差を考えると、急所を狙うことは理にかなっているように思える。
一方レオは繰り出されるお兄様からの打撃を受け止めることに集中し、機を狙っているように見える。俺が二人とも怪我して欲しくないって言ったから……自分から攻撃することを控えてるんだろうか……。ばくばくと胸から飛び出しそうな心臓を手で抑え、二人の対決を見守る。
しばらく激しい剣戟の音が響いていたが、お兄様が再びレオの首に目掛けて剣を振るった、その一瞬の間にレオがお兄様の足を払い、剣を薙ぎ払い、地面に叩き倒した。
「ぐっ!」
「まだ、続けますか?」
木剣も無く、完全に体が地に着いた状態では続行不可能だろう。
「いや、私の負けを認めよう。降参する」
「勝者、レオン」
やった……! レオが勝った……! それに本当に二人とも大きな怪我してない……良かった……。
「全然闘いにならなかったな……」
「いえ、剣のスピードも早く、的確に急所に当てる精巧さは類を見ないほどです。ただ、その正確さ故に次の一手が予測出来てしまいました」
「なるほどな、参考にします。あなたのことはまだよく分からないし気に入りませんが、強さとティアへの想いはまぁ少しは認めましょう」
「ありがとうございます。必ず、命を賭してもティアを守り抜きます」
「……婚約者であるティアを独り身にするような情のない男はいりません。必ずティアもお前自身も息災でいるように努めてください」
「はい。敬語は不要です。先程までのように気軽に話してください」
「確か同い年だったな。お前も家の中では楽にして構わない。私の事もオルフェスと呼んで良い」
「分かった、オルフェス。これからもよろしく」
すごい……喧嘩の後に芽生える友情みたいだ……。嬉しくなって二人に近寄るとレオが抱きしめてくれた。お兄様は苦虫を噛み潰したような顔をしているが、特に何も言わない。前に見たお父様と同じ顔してる。
「レオもお兄様もお怪我はありませんか?」
「大丈夫だよ、心配かけたね」
お兄様は地面に倒されていたが大丈夫だろうかと顔を見ると、じっと俺を見ていた。
「ティア、レオンのことが本当に好きかい?」
「はい。初めて全てを預けられる、信じることが出来る、愛しい人が出来たと思いました。不安なこともたくさんありますが、レオとなら大丈夫だと確信しています」
「そうか……ならば何も言うまい。ティアが少しでも泣いたり悲しませたりしたらぶん殴るからそのつもりで」
「ありがとう。オルフェスが認めるくらいの男になれるよう精進する」
これで一件落着と思いきや、いつの間にいたのかシャムがススス……とお兄様の隣に移動してきた。シャムがいるだけで嫌な予感がする。
「オルフェス様、本当に宜しいのですか?」
「可愛いティアを任せるのは気に食わないが、この男以上に頼れる者がいないのも確か。ティアもレオンを好いているのなら私からはもう反対はしない」
「しかし……」
「なんだ」
「入籍前の若い二人が風呂場で二時間以上過ごしていたことと、総額で屋敷が買えるほどの額の揃いのアクセサリーを堂々と見せ付けるのは如何なものかと」
「「なにぃー!!?」」
目の前のお兄様と、決闘の終わりを見届けそのまま帰ろうとしたお父様の声が中庭に響いた。シャムは相変わらずお父様とお兄様ファーストだが、これは単に面白がっているだけだ。この状況に流石のレオも焦っている。
「こ、婚約者同士で一緒に入浴するなど、普通ではないですか……?」
「ナルカデア王国では知りませんが、アキスト王国は婚姻前は慎ましく過ごすんです! ティアの身の安全を図るために隣に部屋を用意したと聞いていたのに、貞操の危機に陥ってるじゃないか。まさか最後まで致していないだろうな、許さんぞ」
「というか国宝だけでも恐ろしいのに、あ、このピアスよく見たら黒水晶じゃないか! 怖い! 二人とも家から出るな!」
お兄様とお父様に詰め寄られてあたふたしているレオが珍しくて面白い。自分の話でもあるし、割と繊細な話題だと思うのに、レオが二人と普通に言い合いしている様子が本当に家族のように近しく感じて嬉しさが勝った。
残暑はもうなく、庭の草花も秋めいてきて、お昼だというのに風が吹くと肌寒さを感じた。このまま寒さが厳しくなると、レナセール国は、シドやラキくんたちはどうなるだろうか。元気だろうか。遠くの空を見ながらそんな心配をしていたが、お兄様がレオの顔をばちこーんと殴ったのを見て、慌てて駆け寄ったのだった。
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