ダンジョンマスターは魔王ではありません!!

静電気妖怪

文字の大きさ
53 / 66
三章〜神龍伝説爆誕!〜

52話「神龍、同胞に喜をあげる!」

しおりを挟む
 
 切られ立ち上がれなくなった竜兵は【ダンジョン】と言う絶対的な捕食者の餌食となり、膝を着き戦う意欲を失った者もまた【ダンジョン】によってその姿を消した。


「クソッ⋯⋯やはり無限に湧き出てくるのかッ!?」


 数十までは数えていたが百を超えた先からは数えるのもバカらしくなってきた鬼龍は悪態を吐いた。
 切っても斬っても底を見せない竜兵。体力の限界はまだ来ないにしてもいつか終わりが訪れるのは明白だった。


「これでは⋯⋯ッ!?」


 そして、終わらない悪夢を冷ますかのように鬼龍の視界がウァラクと流が対峙している光景を捉えた。


「な、何故にウァラクが神龍の元へ!? あれでは神龍は回復どころではなくなる——ッ!」


 急ぎ流とウァラクの間に入ろうと進路を変えようとするが夥しい数の竜兵がそれを許さなかった。


「「「「グオオォッ!」」」」

「下郎供がッ! 余の邪魔をするなあああぁぁッ!」


 叫び渡る咆哮。
 己に限界を超えるために、己の欲望を叶えるために鬼龍はその姿を変え始めた。


 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾


「ふははははははっ!」
「あははははははっ!」


 鬼龍と竜兵達の戦いを他所にこちらでも高らかな声が上がっていた。


「貴様もこんな所で遊んでいていいのか? 大事な貴様の子供達が無差別に虐殺され、あまつさえこの地に飲み込まれているぞ?」
「問題無いよ。僕は遊びにきたんだよ? なら最初から最後まで楽しみたいじゃないか。それに、僕が生み出す子達は無限だ。僕の魔力が尽きるまではね」
「その魔力⋯⋯いつかは底を見せるぞ? そうなってからでは⋯⋯ククク、貴様が地に落ちる姿が無様に想像できるわ」
「妄想が楽しくできているようで何よりだよ。遠吠えだと思って聞いていてくれて構わないが、今まで倒した竜兵の分は小指の先程度の消費でしか無いよ?」
「全くだ。戯言のような遠吠えは我を倒してから吐くがいい⋯⋯いや、鬼龍を倒せないようでは我の元に来ることもできないだろうがな!」


 お互いの貶し合いや皮肉の言い合い。精神的面を追い込みどうにかして戦いを始めさせようとするウァラクと、どうにかしてウァラクと鬼龍をぶつけたい流。


(だが、ウァラクの言っていることが正しければあの竜兵はそれこそ無限に湧き出るだろう⋯⋯それだけの魔力がウァラクにはある。クソッ、鬼龍が『降龍術』さえ使えればこんな面倒な——!?)


 流は内心で打開策と妥協案を考え始めようとするが幸か不幸か鬼龍と竜兵の戦いに変化が起きた。


「——!? 何? 急に空気が重く⋯⋯それに、少しだが⋯⋯暗くなった?」


 晴天の下⋯⋯と言うほどでは無いが視界が確保された空間に陰鬱な陰が指した。
 それでも、視覚に影響はないが空気が、圧力が、感覚が——重くなる。


(あ、あの形態変化フォルムチェンジは⋯⋯まさか!)


 この不可思議な変化に疑問を唱えるウァラクを他所に流は「早すぎる」と驚愕しながらも「間に合った」と安堵するのだった。


 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾


「「「「「⋯⋯」」」」」


 竜兵と鬼龍の戦いはしばしば静寂が支配していた。
 鬼龍から溢れる圧力プレッシャーに竜兵達は微動だにすることができず、ただ次の変化を見守るしかなかったのだ。


「神龍⋯⋯待っていろ⋯⋯」


 まるで怨念のように鬼龍の口から言葉が漏れた。そして、それをキッカケにするかのように——


「「「「「ーーッ!?」」」」」


 ——鬼龍の体から“何か”が溢れ始めた。
 膨大で濃密な魔力の集合体である“何か”は鬼龍の全てを飲み込むと球体となって膨張を始めた。
 最初は人一人を包む程度の大きさしかなかった球体も異常な早さで体積を広げ周囲を囲っていた竜兵達のすぐ足元まで手を伸ばした。


「⋯⋯グ、グルルルッ!」


 存在そのものから発せられる恐怖か、それとも個体に捧げられた使命故か一体の竜兵が迫り来る球体に蛮刀を向けた。しかし、


「グルアァ!?」


 振り下ろした蛮刀は球体を切るどころか球体に触れた刀身が綺麗に消えていた。そして——



「が、ガアアアアアッッ!?」

 ——膨張した球体がその竜兵を捉えてしまった。
 刻一刻と体を消失させられていく竜兵はその喉から戦士としては醜くも生命としては悲痛な叫びを上げる。


「ガ、ガガガ⋯⋯ルゥ⋯⋯」


 まるで「助けてくれ」と言わんばかりに目を見開き、近くにいる同胞へ手を伸ばすが⋯⋯⋯⋯届くこともなく球体が全てを飲み込んだ。
 そしてそれが始まりとなった。


「「「「「ガアアァッ!」」」」」
 同胞を殺された恨み、目の前で手を伸ばされたのに助けることのできなかった後悔、それらを感じさせるように竜兵達が特攻を仕掛けたのだ。しかし、


「ガアアァッ!」
「グルアアアァっ!」
「ギャッ!」


 一体、また一体と叫びを上げ、死に、そして貪食される。
 そこにあるのはただ無情に、非情に、痕跡すらも残さない程に飲み込む“何か”だ。

 そして、“何か”のタチが悪いのは徐々にその大きさを肥大化させていることだった。
 それは、安寧と平穏を貪る愚かな只人が至福の限りを尽くし⋯⋯傲慢な貴族になるかのようだ。

 そして、その大きさがある程度——ウァラクの乗る竜とほぼ同等の大きさになったころに肥大化は収まった。

「⋯⋯神龍、今行くぞッ!」


 “何か”から低く、重い声が発せられた瞬間——天に一体の龍が昇った。


 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾


「何が起きている⋯⋯?」


 突如出現した謎の黒い球体。それは瞬く間に体積を広げ竜兵達を喰い散らかした。
 ウァラクとしてもその中心に鬼龍が居たことは視認していたため犯人の特定は容易だった。しかし、


(コイツ、ああなる事を読んでいた?)


 戦いのきっかけを幾ら吹っかけても乗ってこない流を見ていればその考えに至るのは仕方ないだろう。だからこそ分からないこともあった。


(じゃあどうして態々口先だけの戦いに投じた? ああなる事が分かっていたなら実際に戦っても結果は同じだったはず⋯⋯なぜ?)


 そう、それは時間の稼ぎ方だった。結果としては同じであっても結びつける過程が気に入らなかったのだ。
 そして、次の瞬間には黒い球体から天に昇るように一本の直線が引かれた。


(アレは⋯⋯⋯⋯龍ッ!?)


 それがなんであるかを察するには十分すぎる衝撃だった。まさかまさか、人間が龍に化けるとは思いもしなかったからだ。


(竜や龍が人間に化けるならいざ知れず、人間が龍に化けるとは⋯⋯面白い!)


 心中で歓喜に震えながらも一体の黒龍が織り成す所業を目に焼き付けた。
 まずはじめに起きたのはことだった。
 そして次に起きたのは竜兵が二度と顔を出す事がなくなったことだった。


(アレは重力魔法? だが何かおかしい⋯⋯重力魔法なら周囲へ見てわかる変化が起きるはずだ)


 ウァラクが思っているのはクレーターのことである。重力魔法を使えば当然のように力の痕跡が残る。
 しかし、今回は竜兵達が自ら潰れたようにも見えるほどに何も起きていない。そして、新たな竜兵も出ることを嫌がっているかのように現れない。


(この陰鬱な空気もそうだ⋯⋯なんだこの気味の悪さは⋯⋯)


 黒い球体が現れてから感じるようになった澱んだ世界。
 そんな場所の急に放り投げられたウァラクは不穏で不快な感情を感じざるを得なかった。


 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾


「何が起きている⋯⋯?」


 ウァラクの驚きを隣で聞いていた流は疑問と歓喜を半々に感じていた。
 流の中で第一段階は限界まで疲弊すること。これは無限に湧き出る竜兵との戦闘で得られるものだった。
 そして、第二段階に絶対的な強者と戦い自己を確立させることにあった。そこである程度の助言はするものの考えられる未来では大部分がそこで完成する。だが⋯⋯、


(あの程度で全ての段階を超えたのか?)


 現実は小説よりも奇なり。そう感じざるを得ない流であった。


(これではまるで最初から使えた⋯⋯いやいや、奴のステータスには『降龍術』は無かった。かと言って、あの雑兵が奴にとって強者となりうるかというとそんなはずはないと思うんだが⋯⋯)


 結果もそうだが過程も大事にしている流からしてみればどうしても辿り着いてしまう場所であった。ある程度拳や剣を交えただけに特にだ。


(まあ、今はそれは必要ないか。今回は鬼龍は『降龍術』を手に入れた。これで反撃と出るか!)


 竜兵を片ずけ一直線に流の元に駆けつける黒龍を見て流の口角は上がっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...