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2章.嘘つきたちの現実。
05.底知れぬ男
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セキはとてつもなく嫌なやつで、ドSでドMな男だ。指だけでわたしをイカせようとして、イキそうになる直前で止める。
それらを繰り返されて、もはやパンツはびしゃびしゃで役に立ってない。だからと、脱がされてしまった。
それだけに、セキのぶっといのが入ってくると思い込んでいたわたしのお腹は、今か今かとその熱を待ち望んでいた。
だが、セキはスマホのアラームを聞くなり、スッと一連のドスケベな行動をやめてしまった。波が引くがごとく。あっさりと。
「時間だよ、きゆ」
火照った顔で、優しいかたちの目の奥をギラギラさせて、その整った手をぐっしょりと濡らしている愛液を舐めて拭ったあと、ウエットティッシュできれいに拭う。
上品にランチでも食べたような仕草と、漂うセキの色気がチグハグで、わたしはまばたきを忘れて見入っていた。
それから、セキはぼんやりしているわたしのブラとキャミ、深緑色のワンピースをテキパキ直した。乱れた髪をブラシで整えて、なぜかセキのバッグに入っていたわたしのメイク道具で化粧を直してくれた。おざなり適当メイクだったのに、ピッと景気よく引かれたアイラインがこけし顔を盛ってくれている。
セキの女子力が底知れない。おそろしい。
火照りきった身体を持て余しつつも、気持ち的にドン引きしたわたしは、おとなしくストンと車から下ろされてしまった。剥ぎ取られたパンツは車の中だ。
スーツの黒いジャケットを羽織ったセキは、もう涼やかな顔。仕事ができるビジネスマン然としている。
「ほあ……?」
ドスケベで絶倫のセキくんが、今日の今までセックスおよび性的な行為を途中で止めたことはない。突き進んでわたしの後ろの穴すら開花させたド変態男が、時間だからと合体前行動をやめてしまった。
わたしの身体は合体をしてずぶずぶといやらしいことをするものだと思っており、セキの静かなる股間を目で追ってしまう。膨らんでいなければ、変なシワすら寄っていない。
やや冷静になった頭がパニックしかけている。コッドピースをしているのか? それとも気合いで静めたの? もしくは最初から勃ってなかった? あのセキがフニャチンだった? うそだ。
目をギラギラさせて、わたしを追い詰めたセキが勃ってないなんて有り得ない。有史以前より有り得ない。セキは新たな能力を開花させていたのか?
「5分の遅刻だね。レストランに着く頃は10分の遅刻かな? 譲に怒られちゃうね」
お兄ちゃんは時間にうるさい。学生時代より五分前行動を心がけており、公職についてからは20から30分前行動を取るようになった。
わたしとセキにそれを強いることはないけれど、遅刻をひどく嫌って不機嫌になる。朝が弱いわたしが遅刻せずに、義務教育と高校生活を送れたのは、そのおかげだ。
だけど、セキ。わたし……、あんたのせいで身体が疼いてるんだけど。
パンツを失ったワンピースのスカートの奥は、入ってくる風でひんやりとして余計にむずむずする。
車の中だからと、途中からハンカチを銜えさせられ、じゅうぶん声を出せなかったのも、不完全燃焼に拍車をかけている。
恨みを込めて見上げると、セキはまだ熱っぽい顔で微笑む。
「支えてあげるから」
「……なんで……?」
この問いは、なんでやめたのか。であったが、言葉は喉にひっかかって出てこない。
「食事会に行く? って聞いたら、いきたいってきゆが言ったんだよ」
違う。イかせてくれないから、イキたいと言ったまでで、食事会うんぬんなど、まったく記憶にない。政治家が茶を濁す、身に覚えのある〈ꪔ記憶にございません〉とはテーマが違うのだ。
ふわふわの酩酊状態の冷めたいないわたしの身体をセキが支えた。逃げようとした腰をぎゅっと抱かれて、きゅうんとお腹の奥が切なくなってしまった。寄りかかりたくないのに、寄りかかってしまう。
なにをしてくれたんだ、セキのばか。男なら最後までやり遂げろ。寸止めしやがりくださって。
あとでトイレに行って自慰に耽るしかない。バッグの中にバイブでも仕込んでおくんだった。バイブなんて持ってないけど。これまで、オナニーしたい時には便利棒セキくんがいたのだから、わたしが持ってないのは当然なのだ。
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