道楽で滅ぼす話

のけもの

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省略してもいいはなし のつづき

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 X-18アルビレイオス。連星系の内にあり太陽に近いこの惑星は大昔に偉大なだれかによってテラフォーミング処理が行われ、辛うじて人が住める程度の環境に整っていた。それももう、大分昔の話である。
 非常に安定し、その特性から半永久的なエネルギーと成り得る資源が発見されてからこの惑星はいくつかの組織に目を付けられ、先住民を盛大に巻き込んだ紛争地帯に早変わりした。

 アルビレイオスの先住民はバッタによく似た透けた翅を持ち、蟷螂のような頭部を持った外骨格生物であり、この星に入植を始めた当初の技術力は幾星霜の世代交代で衰退し、星の海への脱出法も無かった。
 それ故に、当たり前だが彼らは軍靴の音を立てて迫りくる、鎧を着込んだ外敵共に粗末な衝撃波発生器と投石器を武器に立ち向かい、駆逐された。



「虫野郎とはいえ酷ぇ話だ。なぁ」
そう呼び掛けられた兵士の一人が砂嵐によるノイズに顔を顰めながら声の主の方を向いた。
「やった張本人が言う事か。それに、マンティス焼きは美味かっただろ」
「確かに。確かに美味かった。合成タンパクなんか目じゃねえくらいにな。エビみたいな味だった」
「虫系食う度にそれ言ってるよな」
 肩を並べて歩く男たちの中から笑いが起こる。肩部パッドには皆一様に同じ紋章がつき、細部は違えど統一された装備を着込んでいた。―――企業と契約を結んだ傭兵たちである。
 男たちの笑い声が止むのを見計らってか、先頭を歩く兵士の一人が手で制止させる。
アーマーの肩章から上官、隊長と思しき兵士の眼前、バリケードが築かれた少し先には先住民たちが築いた寺院と、それを取り囲むように建てられた村があった。あちこちから火の手が上がり、傭兵たちとは違う意匠の装備を着た者たちが先住民たちをしており、流れ弾か、それとも狙って撃ったか、時折風切り音と共にプラズマ火球がオゾン臭をまき散らしながら飛んでくる。
「酷ぇ話だろ?なぁ」
「現在進行形でな。……まぁ、もっと悪くなるけど」

「総員聞け。……ドジャーズ、トイボックス。前へ出ろ」
 先ほどより同僚と軽口を言い合っていた男達が前に出た。アーマーの外装は他の傭兵達と大差なく、背のコンテナが他の兵士との明確な相違点だろう。
「これから連中の巣をする訳だが、広報担当からの」
「ラブコールですか」
「あの美人からか?だったら良かったんだが、違う。広報担当からの指示で新製品のテストを行ってもらう。仕様書には目を通したな」
「確認済みです。XM27-A、戦術核兵器」
 冗談に余裕を滲ませた態度で返し、隊長が続ける。隊長の問いに二人は頷き、肩越しに背中のコンテナを見る。
「その通り。従来の歩兵携行地雷Gマインと大差ない重量、サイズで戦術核弾頭並みの威力を持つ新製品、の試作品だが、それを今回実地試験しろ、との事だ」
「「えぇ……」」
「当たり前だがアーマーのシールド残量には気をつけろ。冗談じゃなく命綱だぞ。商品開発部が出したXM27の試算出力は1.5メガトンだが断言できる、低く見積もりすぎだ。賭けてもいい」
「「えぇ……」」
 増設装甲を施されたバイザー越しに嫌な顔をする二人に隊長は警告する。遥かな昔に確立された手法の爆弾ですら実際には遥かに強力であり、それと同時に遥かに危険な代物であったと。 

 二人は困惑した声を漏らしつつ、半ばうんざりしながらそれぞれ隊長に向き直る。
「まず対応班が制圧射撃をし、その隙にお前たち二人は熱光学迷彩クローキングデバイスで潜入、置き土産をして帰ってくる。危険手当とは別に報酬を出すと言っていたぞ。……さぁ気合を入れろ!ロック&ロード!」
「……マンティス焼きはお預けか。ロック&ロード!」
「巣ごと消し飛ぶか、或いは……消し飛ぶかだな。……バカいってないで行くか、ロック&ロード!」
 愚痴に冗談で返し、男たちは口々に声にする。ライフルのセーフティと充填を確認しながら。
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