62 / 191
51 公爵令嬢は出世する
しおりを挟む
今日私は、とても大事な話があると言ってお父様に呼び出しされた。
お父様の書斎に向かうと、何故かお母様も一緒にいた。
2人とも表情が少し強張っている。
あ、これ絶対叱られるパターンのヤツだ…
でも、最近私は何か叱られるような事をしただろうか?
ピザパーティーの時の庭の石窯の件はもう叱られ済で、今では庭師のおっちゃんが上手いこと庭とマッチさせてくれてるし、魔導具を自力で作ろうとして失敗した衝撃で実験棟の窓ガラス吹き飛ばした時のは、何事も無かった様に自分で窓を作り直しておいたし、我が家の馬車の乗り心地を良くするために勝手にスプリングをつけようとして分解した時のは、1日じゃ間に合わないと思って途中でちゃんと元に戻しておいたし…
リッカが口を滑らせてなければ、何も問題ないはずなんだけど…
「今日、私と母さん2人が王宮へ呼び出しされたんだが、国王陛下からフランについて少し大変な事を言われてね…」
えっ、何を言われたの?
もしかして、発電機の件すっかり忘れてるから激おこだとか?
「…陛下が、フランの功績を称えて、爵位と領地を与えると言っている。」
…え?
……え??
ええぇー⁉︎
「ど、どうしてそんな事になったんですか⁉︎」
「フランは、ケーラ先生のお父さんのアルヴァン元子爵が、爵位と領地を剥奪されている事は知っているよな?
そこの領地に新しく陞爵した別の子爵がついた事で、その子爵が元々持っていた男爵領が数年程領主不在の状態になっているんだ。
そこで、数々の食品や調理法、機械の発明、スポーツと言った娯楽の発展や学童院での功績を称えて、陛下がフラン自身に男爵位と領地を宛てがうと仰っている。」
な、なんだってー⁉︎
「わ、私、領主になるんですか⁉︎」
「そう言う事になる。」
「で、でも私、領主だなんてした事がありませんよ⁉︎」
「当たり前だろ、させた覚えがない。
陛下直々に7歳で領主に指名された人物だなんて、前代未聞だ。」
領主だなんて無理だって!
と言うか、統治とか俺も経験した事ないし、そんな事してたら実験や研究する時間が減っちゃうじゃんか!
「フランがこの話を受け入れるのであれば、父も母も全面的に協力しようとは思っているけど、フランが嫌だと言うなら、この件をお断りしようと思っているわ。」
「幸い、まだこの事を知っているのは我々3人だけだ、今ならまだ引き返せる。」
「…お父様とお母様はこのお話を聞いた時、どう思われましたか?」
「フランは非常に優秀だが、発明と統治の才能は別物だ。
ましてやたった7歳という幼い領主に、領民が付いて来てくれるかも怪しい。」
「母は反対をしています。
領地には少なくない数の一般の方が住んでいるわ。
領民の生活のかかっている地で、今の我が家のように実験をしてしまうのではと不安でならないもの。」
いくら実験オタクだからといって、領民の生活圏を脅かすような実験はしないって。
「…因みに、場所はどこなんですか?」
「フィアンマ公爵領からひとつ挟んだ隣の海沿いの小さな領地だ。
主な産業は水産業、とは言っても、漁村が数か所ある程の貧しい領地だよ。」
…海沿い?
…水産業?
「お父様、お母様。
私、成人する迄に領地経営学を習得してみせます。
なので、このお話、お受けしてもよろしいでしょうか。」
「い、いきなりどうしたんだ?」
「なぜ急にこのお話を受けようと思ったの?」
「水産業が主な貧しい領地と聞いて、やりたい事があるんです。
もし私の爵位と領地の授与に不満があるようでしたら、後にお兄様に爵位と領地はお譲りします。
お願いします、やらせてください。」
「…フラン。
ひとつだけ聞きたい事がある。」
「はい、何でしょうか。」
「お前は、この小さな領地に住す人達の命を預かるという責任を取る覚悟はあるのか?」
「私が統治しないと、そこに住む人達は貧しいままなんですよね?」
…
……
………
深く呼吸をして、長い沈黙を最初に破ったのは、お父様だった。
「わかった、この話を受けるよう、陛下に伝えておく。
褒賞式の日取りや予定は、追って伝えよう。」
「ありがとうございます。」
部屋に戻った私は、早速その地を確認した。
地球でいう所のチリのような形をした、海に面した面が長い地域。
距離はフィアンマ公爵領と一つ飛び隣だけど、そこまで遠距離というほどでもない。
この小さな土地が、私の領地。
海沿いと聞いた瞬間、胸が躍った。
また一つ、いや、幾つものジャンクフードがここで誕生する事になるだろう。
今から楽しみだ。
領地経営の方はお父様にしばらくお願いして、領民の為にも私の為にも、まずは特産品を作ってしまおう!
お父様の書斎に向かうと、何故かお母様も一緒にいた。
2人とも表情が少し強張っている。
あ、これ絶対叱られるパターンのヤツだ…
でも、最近私は何か叱られるような事をしただろうか?
ピザパーティーの時の庭の石窯の件はもう叱られ済で、今では庭師のおっちゃんが上手いこと庭とマッチさせてくれてるし、魔導具を自力で作ろうとして失敗した衝撃で実験棟の窓ガラス吹き飛ばした時のは、何事も無かった様に自分で窓を作り直しておいたし、我が家の馬車の乗り心地を良くするために勝手にスプリングをつけようとして分解した時のは、1日じゃ間に合わないと思って途中でちゃんと元に戻しておいたし…
リッカが口を滑らせてなければ、何も問題ないはずなんだけど…
「今日、私と母さん2人が王宮へ呼び出しされたんだが、国王陛下からフランについて少し大変な事を言われてね…」
えっ、何を言われたの?
もしかして、発電機の件すっかり忘れてるから激おこだとか?
「…陛下が、フランの功績を称えて、爵位と領地を与えると言っている。」
…え?
……え??
ええぇー⁉︎
「ど、どうしてそんな事になったんですか⁉︎」
「フランは、ケーラ先生のお父さんのアルヴァン元子爵が、爵位と領地を剥奪されている事は知っているよな?
そこの領地に新しく陞爵した別の子爵がついた事で、その子爵が元々持っていた男爵領が数年程領主不在の状態になっているんだ。
そこで、数々の食品や調理法、機械の発明、スポーツと言った娯楽の発展や学童院での功績を称えて、陛下がフラン自身に男爵位と領地を宛てがうと仰っている。」
な、なんだってー⁉︎
「わ、私、領主になるんですか⁉︎」
「そう言う事になる。」
「で、でも私、領主だなんてした事がありませんよ⁉︎」
「当たり前だろ、させた覚えがない。
陛下直々に7歳で領主に指名された人物だなんて、前代未聞だ。」
領主だなんて無理だって!
と言うか、統治とか俺も経験した事ないし、そんな事してたら実験や研究する時間が減っちゃうじゃんか!
「フランがこの話を受け入れるのであれば、父も母も全面的に協力しようとは思っているけど、フランが嫌だと言うなら、この件をお断りしようと思っているわ。」
「幸い、まだこの事を知っているのは我々3人だけだ、今ならまだ引き返せる。」
「…お父様とお母様はこのお話を聞いた時、どう思われましたか?」
「フランは非常に優秀だが、発明と統治の才能は別物だ。
ましてやたった7歳という幼い領主に、領民が付いて来てくれるかも怪しい。」
「母は反対をしています。
領地には少なくない数の一般の方が住んでいるわ。
領民の生活のかかっている地で、今の我が家のように実験をしてしまうのではと不安でならないもの。」
いくら実験オタクだからといって、領民の生活圏を脅かすような実験はしないって。
「…因みに、場所はどこなんですか?」
「フィアンマ公爵領からひとつ挟んだ隣の海沿いの小さな領地だ。
主な産業は水産業、とは言っても、漁村が数か所ある程の貧しい領地だよ。」
…海沿い?
…水産業?
「お父様、お母様。
私、成人する迄に領地経営学を習得してみせます。
なので、このお話、お受けしてもよろしいでしょうか。」
「い、いきなりどうしたんだ?」
「なぜ急にこのお話を受けようと思ったの?」
「水産業が主な貧しい領地と聞いて、やりたい事があるんです。
もし私の爵位と領地の授与に不満があるようでしたら、後にお兄様に爵位と領地はお譲りします。
お願いします、やらせてください。」
「…フラン。
ひとつだけ聞きたい事がある。」
「はい、何でしょうか。」
「お前は、この小さな領地に住す人達の命を預かるという責任を取る覚悟はあるのか?」
「私が統治しないと、そこに住む人達は貧しいままなんですよね?」
…
……
………
深く呼吸をして、長い沈黙を最初に破ったのは、お父様だった。
「わかった、この話を受けるよう、陛下に伝えておく。
褒賞式の日取りや予定は、追って伝えよう。」
「ありがとうございます。」
部屋に戻った私は、早速その地を確認した。
地球でいう所のチリのような形をした、海に面した面が長い地域。
距離はフィアンマ公爵領と一つ飛び隣だけど、そこまで遠距離というほどでもない。
この小さな土地が、私の領地。
海沿いと聞いた瞬間、胸が躍った。
また一つ、いや、幾つものジャンクフードがここで誕生する事になるだろう。
今から楽しみだ。
領地経営の方はお父様にしばらくお願いして、領民の為にも私の為にも、まずは特産品を作ってしまおう!
3
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!
音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ
生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界
ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生
一緒に死んだマヤは王女アイルに転生
「また一緒だねミキちゃん♡」
ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差
アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144
https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
王太子妃が我慢しなさい ~姉妹差別を受けていた姉がもっとひどい兄弟差別を受けていた王太子に嫁ぎました~
玄未マオ
ファンタジー
メディア王家に伝わる古い呪いで第一王子は家族からも畏怖されていた。
その王子の元に姉妹差別を受けていたメルが嫁ぐことになるが、その事情とは?
ヒロインは姉妹差別され育っていますが、言いたいことはきっちりいう子です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる