公爵令嬢はジャンクフードが食べたい

菜花村

文字の大きさ
173 / 191

150 公爵令嬢は野外活動をする3

しおりを挟む
 夜が明けて夜営が無事に終わった頃、私達と同じく不穏な空気を感じた生徒がいた。

 ご想像通り、ロナウド、セシル様、リリーちゃん、ミラ副会長、そしてビクター君。

 いや、この錚々たるメンツと一緒に気付けたとか、ビクター君すごいな!

 このまま野外活動をしていると危険だと判断した先生方の決断で、活動を中止して帰ることに。

 畜生、燻製中のお肉を育てきれなかった。



 帰りがけ、とても静かな森でスムーズに進んでいく一同。

 いや、静かすぎる。

 鳥や獣の鳴き声は一切聞こえず、気配も全く感じられない。


 こういうのって、よくある話では

「「大型の獣か何かが出てきた?」」

 ジョニー先生とユニゾン。

 「フランドール嬢、おめぇもそう思うか?」

 「はい、昨日の不穏な気配が動物達の大移動だとして、今巨大な力を持った『ナニか』がこの近辺に居るとなれば……」

 「かなり危険な状態だ。
 スカウト役は細心の注意を払って周りの気配を感知してろ。
 戦えるやつは、すぐ戦える準備をしておけ。」

 私が出来る戦い方は例のサーモグラフィーと熱操作くらい。

 一応ゴーレムが石つぶてを投げたりとかも出来るけど、後衛組の攻撃に比べたら威力もスピードも桁違いに低い。

 そうだ、私には頭脳がある!

 昨日作っていた薬物を、出来るだけ多くの人に渡した。

 「この薬は、ある特定の生き物を即死させる事の出来る毒です。
 人間に害のない物で作ってあるので私達には無害ですが、その動物相手だと擦り傷程度で死に至らせることが出来ます。
 いざとなったら、これを使ってください。」

 「その、ある特定の生き物ってなんだ?」

 ジョニー先生の問いかけに私は答えた。

 「それは、魔石を持つ生き物です。」



 班別に別れて慎重に歩いていく。

 やっぱり気配は何も感じない。

 気のせいにしては胸がスキッとしない。

 かなり遠くまでサーモグラフィーをかけているけど、何も見えない。

 緊張感が漂う空気。

 その時間が刻一刻と過ぎていく中、急にゾワッと嫌な気配が漂った。

 全員が感じられる程の気配なのに、誰一人として見つける事が出来ない。

 そう、私ですら感知出来ない。

 「上だ!!!」

 誰かの叫び声で空を見ると、『ナニか』がものすごい勢いで落下してきた。

 思わず私は、みんなを囲むほどのアダマンタイトの障壁を三重に張った。

 ドォーーーンと言う衝撃音があり、また気配がなくなった。

 障壁を外すと、三重にも張っていたアダマンタイトが二枚目まで貫通していた。

 なんという攻撃力!

 そして目の前に、何やら白い物体が。

 猿のような形をした人間の子供程の大きさの『ナニか』。

 「お、オモカゲだ……」

 オモカゲ。

 それは、物理や魔法の攻撃が一切効かず、逆にこちらには攻撃出来る魔獣。

 人間や動物に悪い影響を及ぼさない、と言う風に魔獣図鑑には書いてあったけど、完全に私達に攻撃してきてるよね?

 一体何が起きたのだろう。

 再び私達に攻撃をしてくるオモカゲ。

 ビクター君が盾で攻撃を受け流してくれた。

 ビクター君、なんて奴だ!

 反撃をする生徒達と先生方。

 しかし、図鑑通りこちらの攻撃は一切効かず、私の作った毒を塗った矢や剣も効果は全くない。

 完全に受け身を取るしかない状態にされてしまった私達。


 
 なぜ私のサーモグラフィーに引っかからなかったのだろう?

 素早く動くオモカゲを目視して、熱操作で体温を滅却。

 こうかがないみたいだ……

 なら逆に、熱操作で加熱、過熱!

 こうかがないみたいだ……

 熱効果が一切ないだと!?

 実体がないとなれば、ゴースト系の可能性がある。

 図鑑にもそう書いてあった。

 つまり、リリーちゃんの光属性魔法の聖魔法ならどうだ!?

 こうかがないみたいだ……

 もう!なんなんだよコイツ!

 攻撃威力が高くて、みんながバンバカ怪我してるのをリリーちゃんの治癒魔法(エリア拡大)によって即座に回復されている。

 一瞬激痛に襲われるのに何も無かったことにされているとか、ただの恐怖でしかない。

 もうやめて!とっくにみんなのSAN値はゼロよ!



 おかしい。

 攻撃は与えられないのに攻撃をくらう。

 ゴースト系だとしても何らかの攻撃を与えられるはずなのに、オモカゲは一向にその気配がない。

 そして、私達に攻撃してくる瞬間だけ物理的に触れている。

 つまり……

 「オモカゲが攻撃してくる瞬間は実体になってる可能性が高いわ!!」

 一斉に私の作った毒薬を防具に塗った。

 すると、攻撃をしてきた瞬間、オモカゲは身体の一部が破壊された。

 「やった!
 効果があるぞ!」

 しかし、時間が経つとその身体の一部が元に戻ってしまう。

 こうかはいまひとつのようだ



 やっぱりおかしい。

 私の作った毒薬の効果が少ないし、何より蘇生している。

 私の毒薬はかなり強力で、触れただけでも細胞レベルで破壊されて治癒不可の状態になる筈なのに。

 地球の知識を洗いざらい整理して、見つかったのが、


 「生霊ドッペルゲンガー……?」

 「なんだそのイキリョウってやつは?」

 「生き物の魂が、独立してそれだけで活動している状態のものです。」

 「馬鹿な!?
 魂が肉体から離れるだなんて、そんな事有り得るはずがないだろ!?」

 そう、この世界で魂というものは、肉体が死んでなお、その身体に留まるもの。

 ゴースト系魔獣や悪魔付きはあっても、幽霊や成仏、輪廻転生の概念がない。

 つまり、目の前に未知なる恐怖が迫っている。

 私の一言が、余計にみんなのSAN値を抉りとった。

 そんなつもりじゃなかったんだよ!

 本当にゴメン!!

 ただ、仮説が一つ増えたという事は、対策が立てられるという事。

 どこかでこの生霊ドッペルゲンガーの元になる生き物がいるはず。

 気絶しているのか、自分の意思で動いているのかは分からない。

 だけど、それを見つけ次第退治すれば、オモカゲが消滅する可能性が出てきた。



 私のサーモグラフィーが反応しないという事は、外気や土、植物と一体化する程度の体温なのだろう。

 という事は、どこか見えないところで気絶、あるいは息を潜めているという事だ。

 セシル様に、

 「私たち以外の心音が聞こえる場所を探してください!」

 と伝えると、

 「分かりました、早急に!」

 と直ぐにとりかかってくれた。

 暫くして、セシル様は見つけてくれた。

 「東に十メートルと少し、深さ二メートルの所に何かいます!」

 「いっけぇえええ!!!」

 言われた場所へ土魔法をぶっぱなす。

 すると、地面の中からオモカゲと同じ形をした黒い生き物が出てきた。

 「私がやります!」

 氷魔法を使えるカーネル生徒会長が、毒薬のやじりを作って毒氷矢を放つ。

 ものすごいスピードで放たれた氷の矢は、見事その動物の胸を撃ち抜き、死に至らしめた、

 すると、さっきまで猛威を奮っていたオモカゲはスッと消えてしまった。



 王都に帰った私達は、魔物研究センターにその動物とオモカゲの特徴を伝えた。

 その動物の正体は、その辺にいる普通の魔猿。

 攻撃力が強いとか血の気が多いとか一切なく、その辺によくいるごく普通の猿の様なただの魔物。

 オモカゲが暴れた原因は、この猿が食あたりを起こして瀕死状態になってせいでオモカゲが発生し、暴れてしまった可能性があると。

 で、食あたりの原因は、チョコレートだと。

 犯人は、私かー!?
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...