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Episode01:You should marry with him
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「立ち話もなんだし、料理をさっそくいただきましょう」
ロメーヌの言葉を皮切りに、それぞれが席に着く。
絹江は久々に会う友人との会話に、今まで見たことがないような嬉しそうな表情を浮かべている。
絹江とロメーヌの話を繋げるに、どうやら絹江が遊学した時からの友人だそうだ。
「あの頃は楽しかった。ユーロスターも海の下を通っていなかった頃、一緒に船に乗ってパリやイタリア、ドイツを冒険したのよね」
「そうそう。そういえばロメーヌ、パリにいる女たちと店で喧嘩したの覚えてる?絶対にあっちが悪かったのに、私たちが追い出されたの。あれは、なかなかの経験だったわね」
「今でもパリの女は嫌な感じな人も多いわ。街の風景と芸術的センスは認めるけどね」
「イタリアはよかった。小さな車を借りて、乗り回したのよね」
「そうそう。途中でガス欠になって。でも、そのおかげで紅花畑に出会えたのよね。あれは運命の旅だったわ」
厳格な祖母がこんなに楽しそうに話をしているだけでも驚きだったが、ヨーロッパ中を車で旅してまわっていただけでなく、まさか、ROSSETTOの代表作である口紅の由来に、関わっていたとは。
あまりの衝撃に、萌衣は口を開けて自分の祖母を見た。
そんな話一度も聞いたことがなかった。
「すごいな。君のお祖母様も、僕の祖母も」
普段は何事にも動じないジャンですら、少しばかり驚いたような表情を浮かべている。
「すごいですね……」
驚いた感情が少し落ち着いてくると、途端に自由な二人が羨ましくなった。
なんて、自由で優雅な時間を過ごしているのだろう。
今の萌衣は、特に取り得もない平凡な会社員だ。
大手の会社に勤めているとはいえ、萌衣の代わりなど吐いて捨てるほどいる。
仕事もあまり上手くいかず、隣でワインを優雅に飲んでいる男に厳しく叱咤される毎日だ。
自信もなければ、やりたいこともない。
祖母に結婚相手を紹介されるも、逃げて逃げて逃げまくっている。
楽しみといえば、休日にお酒を片手にバラエティ番組を見たり、友人と女子会と称してダラダラ過ごしたりするだけだ。
裕福な家庭に生まれた割に、趣味が普通の女の子と何も変わらない。
前に付き合っていた彼氏からも「もっと刺激のある日々を送りたいんだ」と遠回しに退屈だと言われて振られている。
思い出したくないことを、思い出してしまったので、萌衣はそれを掻き消すように、手に持っているグラスの中にあるシャンパンを飲み干した。
祖母のことだからお見合いだとてっきり勘違いしていたが、たまたま孫同士が一緒の職場だという理由で、引き合わされたに違いない。
まさかの冷徹上司と一緒に食事をする羽目になってしまったが、見合いではないと分かり、萌衣が安堵した瞬間だった。
「お祖母様。思い出話に花を咲かせたいのは分かりますが、そろそろ本題に入っていただけますか?」
ジャンが咳払いを一つしてせっつくと「相変わらず、せっかちねえ」と肩をすくめてロメーヌは笑うのだった。
ロメーヌの言葉を皮切りに、それぞれが席に着く。
絹江は久々に会う友人との会話に、今まで見たことがないような嬉しそうな表情を浮かべている。
絹江とロメーヌの話を繋げるに、どうやら絹江が遊学した時からの友人だそうだ。
「あの頃は楽しかった。ユーロスターも海の下を通っていなかった頃、一緒に船に乗ってパリやイタリア、ドイツを冒険したのよね」
「そうそう。そういえばロメーヌ、パリにいる女たちと店で喧嘩したの覚えてる?絶対にあっちが悪かったのに、私たちが追い出されたの。あれは、なかなかの経験だったわね」
「今でもパリの女は嫌な感じな人も多いわ。街の風景と芸術的センスは認めるけどね」
「イタリアはよかった。小さな車を借りて、乗り回したのよね」
「そうそう。途中でガス欠になって。でも、そのおかげで紅花畑に出会えたのよね。あれは運命の旅だったわ」
厳格な祖母がこんなに楽しそうに話をしているだけでも驚きだったが、ヨーロッパ中を車で旅してまわっていただけでなく、まさか、ROSSETTOの代表作である口紅の由来に、関わっていたとは。
あまりの衝撃に、萌衣は口を開けて自分の祖母を見た。
そんな話一度も聞いたことがなかった。
「すごいな。君のお祖母様も、僕の祖母も」
普段は何事にも動じないジャンですら、少しばかり驚いたような表情を浮かべている。
「すごいですね……」
驚いた感情が少し落ち着いてくると、途端に自由な二人が羨ましくなった。
なんて、自由で優雅な時間を過ごしているのだろう。
今の萌衣は、特に取り得もない平凡な会社員だ。
大手の会社に勤めているとはいえ、萌衣の代わりなど吐いて捨てるほどいる。
仕事もあまり上手くいかず、隣でワインを優雅に飲んでいる男に厳しく叱咤される毎日だ。
自信もなければ、やりたいこともない。
祖母に結婚相手を紹介されるも、逃げて逃げて逃げまくっている。
楽しみといえば、休日にお酒を片手にバラエティ番組を見たり、友人と女子会と称してダラダラ過ごしたりするだけだ。
裕福な家庭に生まれた割に、趣味が普通の女の子と何も変わらない。
前に付き合っていた彼氏からも「もっと刺激のある日々を送りたいんだ」と遠回しに退屈だと言われて振られている。
思い出したくないことを、思い出してしまったので、萌衣はそれを掻き消すように、手に持っているグラスの中にあるシャンパンを飲み干した。
祖母のことだからお見合いだとてっきり勘違いしていたが、たまたま孫同士が一緒の職場だという理由で、引き合わされたに違いない。
まさかの冷徹上司と一緒に食事をする羽目になってしまったが、見合いではないと分かり、萌衣が安堵した瞬間だった。
「お祖母様。思い出話に花を咲かせたいのは分かりますが、そろそろ本題に入っていただけますか?」
ジャンが咳払いを一つしてせっつくと「相変わらず、せっかちねえ」と肩をすくめてロメーヌは笑うのだった。
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