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命日
第20話
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つまり、どういうことだ??
吸血鬼に噛まれたら吸血鬼になる?
問題はそこじゃなかった。
「吸血鬼」がどんな存在かはなんとなく知ってる。
不死身なんだろ?
不死身で、バカ強くて、歳も取らなくて。
…でも、それが?
吸血鬼なんているわけがない。
そう考えることのほうが自然だった。
そんなのは存在しないし、噛まれたらどうなるかなんて知らない。
そういえば、そんな”設定”だった気もする。
吸血鬼に血を分け与えられた人間は、吸血鬼になる。
記憶は曖昧だったけど、多分そんな感じだった…よな?
仮に本当に吸血鬼なんだとしたら、彼女が言う「血を分け与えた」って言うのは、ようするに“与えられた人間が吸血鬼になってる”ってことで。
ということは、だ。
その「対象」は俺で、俺は「吸血鬼」に…?
…………………
………………いやいやいや
…………………………いやいやいやいや
「もしもし」
彼女はポケットからスマホを取り出して、電話に出たみたいだった。
ポケットの中で軽快な着信音が流れてた。
はっきりと、それは聞こえた。
スマホの画面を開くと同時にナイフをくるっと回し、気だるそうに腕を組む。
ふと、想像してしまう自分がいた。
何をって、…そりゃ、目の前の彼女が「吸血鬼」だっていうことを。
現実離れしすぎてて、考える気にもなれなかった。
逆に難しくないか?
真面目に考えることのほうが。
正直言って今は、他に考えることが山積みだった。
俺の腕を縛ったヤツが誰であれ、なんで縛られてるのかを知りたかった。
そもそもあのおっさんはどこに行ったんだ?
天ヶ瀬が変なのは、ここがワンチャン夢の世界だからって考えられなくもない。
ようするに俺は今死の淵を彷徨ってて、夢の中で幻覚を見てるってわけ。
…そのほうがずっと自然だな
下手に考えるよりも、自然に考えたほうがいいのかもしれない。
夢を見ているにしちゃ色々とはっきりしてるが、まあ、それはどうにでも説明がつく。
とにかく、だ
「…はあ、めんどくさいことになった」
「え??」
「キミを埋葬するのは少し先延ばしになったみたい。一度連れてこいってさ」
電話が終わった後、むすっと顔でそう言った。
誰と電話していたのかはわからないが、どうやら、何かよくないことがあったみたいだった。
それよりも、さらっとすごい事を言ったような気もしたが…
「おとなしくしてるって約束できる?」
「…って言うのは…?」
「キミをこれから協会に連れて行くんだけど、下手に逃げ出したりしない?」
言ってることが怖すぎるんだけど。
逃げ出したりしないか…って?
つーか、「協会」ってどこのことだ??
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それが“本音”だった。
でもそれをそのまま伝えたらやばい気がした。
…なんて答えるのがいいんだろうか…
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ただ、彼女を怒らせるようなことはしたくない。
だから俺は、首を何度か縦に振った。
「じゃあ、縄を切ってあげる」
(…まじか)
もしかして、これはチャンスなんじゃ…?
…いやいや、下手に逃げ出さないほうがいい。
相手が女子高生とは言え、油断はできない。
俺の直感がそう囁いている。
今は様子を見よう。
せめてナイフを奪い取れればだけど、…でも
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