1度だけでも会えたなら、私達には天使がいるのだと言いたい

瑠渡

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メアリの恋

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メアリには大好きな親友がいる。
 
学園に入学し、席が隣同士になったドロシーだ。
侯爵家の長女で弟がいるので、ゆくゆくは嫁に行く予定である。
ドロシーの婚約者は伯爵家ノマイロン様だ。
ノマイロン様は、誰でもが振り返る美丈夫で成績も上位を占めており、廊下を歩いていれば、取り巻き令嬢がついて歩く。
ドロシーはその姿を見て、霹靂している。 
何故、ついてくるな!と断れないのだろう?何故婚約者が誤解するからと言えないのだろう? 
ドロシーは、令嬢がノマイロンに話しかけるのを見るたびに言っている。
私はそんなドロシーに「惚れた弱みね。文句言ってきなさいよ!」と、ドロシーをいつもからかう。

「メアリは?ねぇ、ほんとに好きな人はいないの?」

「何回聞かれても答えは一緒よ!私は、自分で生きていけるように勉強を頑張ってるのよ。それに、叔父様の娘のマリアちゃんの家庭教師を任されてるし。
マリアちゃんは一人っ子だし、跡継ぎだから領地経営が難なくこなせるように今から数字に強くしなくちゃいけないと思ってるの。だから私は……」

「はい、はい、わかったわ。じゃあ、私に恋すれば良いわ。
そして、将来私の侍女になりなさいよ」

「えーーーっ?ドロシーったら面白いこと言うのね」

「なんで?そして、貴女に旦那様を探してあげるわよ。」

「ドロシーったら、そんな心配しなくていいわよ」




ある日


ドロシーの婚約者、ノマイロン様が帰ろうとしている私の前に現れた。

「メアリ嬢、少し良いかな」
 
「マシシル伯爵令息様、ご機嫌よう」

そう話しかけて顔を見て後悔した。そう、あまりの美しさに。
男性でもこんなに美しいと思える人がいるなんて………

その彼からの言葉を聞いたとき、
一瞬「えっ?もう一度言ってください」と、思わず言ってしまった。

「だから、君のような人はドロシーの側にいてはいけない」

「………なぜです?」

「君も僕も……ドロシーに捕らわれている。もし、僕の言葉が信じられないのなら、明日の放課後サロンの北側奥の衝立裏に隠れていてごらん。
真実が見えるから」

そう言って立ち去った


「なに?どういう事?」

私には両親がいない。
母の弟の叔父様の養女として、母の生家で暮らしている。
決して不幸とは思っていないがマリアちゃんの家庭教師もしているので、授業が終われば直ぐ帰宅している。他の学友は友人とカフェに寄るとか、王都に友達と買い物行くとかは話しているが、メアリは一切していない。
だから、ドロシーとも教室で別れているが……。

ノマイロン様の言葉を信じるつもりはないが、何か不安に思う気持ちがそうさせた。

それはたまに見せるドロシーの目つきに気がついたからだ。

次の朝、帰りは対馬車で帰るので、迎えは良いと御者に伝えた。
叔父様と叔母様にも了承済みだ

放課後、帰るふりをして慌ててサロンへ行き、言われた衝立の裏へ隠れた。

裏には何故か椅子とクッションが置いてあり座れるようになっていた。

暫くすると足音が聞こえる……こちらへ来るの?


「あっ、いたわね」

「えっ?あっ!王女様?」

同じ学年でクラスも同じ、アイリス王女が笑いながら立って、私の隣に座った。

「えっ?あの……」

「ここはね、私の隠れ場所なのよ。何もかも煩わしくなると逃げ込む場所なのよ。
あっ!シーッと指を口元に持っていき、静かにするように言われた」

その直後、またサロンに人が入って来たのがわかった。

私達の側のテーブルに座ったようだ

王女がチョイチョイと指を指す

その方向には、少しの隙間があり反対側からは植物で隙間は見えにくいが、私達側からは誰が来たのかは見えるやすいようになっていた。

えっ?ドロシー? 後は……あの人達はドロシーがいつも怒っているノマイロン様の取り巻き令嬢達だわ


「ドロシー様、今日もご苦労様でした。」

「ふっ、今日もメアリと親友ごっこをちゃんとしたわよ」ふふっ


えっ?


「可笑しいですわね!あんな親のいない令嬢と、侯爵家のドロシー様が親友であるはずがないのに。仲良しだと本当に思っているなんて!」ふふふっ。

「そうですわ!意図があってしていることなのに。あんなに楽しそうな顔をして!ドロシー様、毎日お疲れでしょう?」

「そうでもないわ!監視もかねているから。まぁ、もしかしたら私の勘違いだったのかもしれないけれど」

「そうですわ、あんな平民みたいな令嬢を、ノマイロン様が見惚れるなんて勘違いではありませんか?」

「そうね、入学予備日にノマイロンの視線の先にメアリを見なければ、私も親友のふりをしなくても良かったのだけど。
ノマイロンがメアリに見惚れたように思えたのよね~。
んーっ、そろそろ休み時間とかお昼も婚約者の側にいることにしようかな。」

「そうですよ。ノマイロン様も寂しがっておられるのじゃないかしら」

「そうね。そろそろメアリに親友とか思われていることもウザくなってきたから、メアリとは離れてノマイロンといようかしら。私には本当の親友の貴女達がいてくれるし」

「私達はドロシー様をお慕いしておりますし、私達が本当の親友ですからっ!」

「ふっ、ありがとう。
あっ、ノマイロンやっと来たわ!」

ガタンッ

「ノマイロン、遅いわ!放課後しか一緒にいられないのだから、早く来て欲しかったわ。でもね、明日からはずっと一緒にいるわ。朝も私が迎えに行くからこれからは、邸へ帰るまでずっと一緒よ。嬉しいでしょ。ふふっ」

「………なぜ?君はクラスで友達といるじゃないか」

「なに?いいのよ。卒業するまで後はノマイロンと一緒にいることに決めたのよ。あの子は一人でも平気な子だし、一緒にいても、つまらないし」

「そうですよー、ノマイロン様。
これからは私達ではなく、婚約者のドロシー様が一緒にいられるのですから、良かったですね。」

「………今日はもう帰ろうと思うが」

「来たばかりなのに?なら、私も一緒に行くわ」

ガタンッ ガタンッ ガタンッ

「ドロシー様、ノマイロン様、ごきげんよう。」



「じゃあ、私達も帰りましょう」



バタンッ



「………」

「メアリさん、ドロシーさんの本性、わかったでしょ?」

「…そんな……私」

「私がたまたま疲れてここで休んでいたら、ドロシー達が来て人を馬鹿にしたような……許せなかったわ。私とノマイロンは、小さい時から友達なの。私の母とノマイロンの母が学友でね、その縁で双子の私と兄のの乳母でもあったのよ。
だから私達3人は兄妹のように育ったわ。今は流石にそれほど交流は無くなったけれど。」

「………」

「ノマイロンが兄のカルロの側近だと知っているかしら?」

「いえ、知りません」

「カルロに話したら直ぐにノマイロンへ話が伝わって、なぜドロシーと婚約することになったのかをその時に聞いたのよ。話したがらなかったけどやっと聞き出せた。
ノマイロンにとっては、不本意な婚約だったの」

「えっ?ドロシーは、お互いが好きになったと聞いてますが」

「嘘ね。ドロシーの父親がノマイロンの父親の先輩にあたるそうよ。ドロシーがノマイロンに一目惚れをしたから婚約したいと言い出したそうなの。父親は先輩の侯爵家に世話になったから断れなかったと聞いたわ。
でも直ぐにドロシーの性格の悪さがわかり、ノマイロンの家族は婚約を無かったことにしたいと話したそうよ。でも、ドロシーが惚れてるから受け入れてくれなくて、相手は侯爵家、そのままになってるらしい。
だから伯爵家は、婚約解消のタイミングを見計らってる所だそうよ。
私がここで嫌な会話を聞いてからカルロはカンカンなの。
…ノマイロンも誘われて断れずここで一緒にお茶をするらしいけど、性格の悪い令嬢の集まりだから、我慢してるらしいわ。」


「………」

「なぜ貴女を警戒したかわかる?」

「いえ私には、ドロシー達が言うように親が今はいません。
結婚も諦めていると、いつも聞かれるたびに答えているのに」

「それは、貴女が美しいからよ」

「えっ?」

「貴女が、とても美しい人だから警戒してるのよ。ノマイロンが入学予備日に貴女に見惚れたのは本当らしいの。ノマイロンの視線の先に貴女がいたから……だからドロシーは貴女に近づき、ノマイロンにわからせた。私はメアリさんを、どうにでもできるのよと」

「………」

「ノマイロンは貴女を傷つけたくないから、ドロシーの言いなりよ。
休みに邸へ来てと連絡が来れば行くし、買い物、カフェ、観劇、いつでも誘われれば都合をつけてドロシーに付き従う。
まぁ、王太子のカルロができるだけ用事を言いつけて休みの日は王宮に避難させてはいるけれど。」

「………」

「今日は貴女に提案があるから、ドロシーの真の姿を見てもらったの。是非受けてくれたらと思っていることなの」

「提案?」

「そう、ノマイロンのためと、ドロシーの手の中にいるだろう貴女への提案よ。今から私と一緒に王宮に来て欲しい。心配しないで、少し遅くなるから貴女の家には連絡済みよ」

何がなんだかわからないまま、王女様の馬車で王宮へ向かった













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