1度だけでも会えたなら、私達には天使がいるのだと言いたい

瑠渡

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リュド叔父さんから邸に来て欲しいと連絡が来たのは、リュド叔父さんに会ってから、もう3ヶ月も過ぎた頃だった




「叔父さん、ただいま戻りました
直ぐに帰って来れなくてすみません。研究室で寝泊まりしてたので手紙が着ていたのを知らなくて、すみませんでした。」

「いや、良いのだ。シュンに連絡はしたが、だが今は何が良いのかわからなくなっていた」


「どうかしたのですか?」


「シュン、レントランド国から来たメアリ、サナーシュ嬢の事なんだ。もしかしたら彼女は……私の子供ではないかと思っているんだ」

「えっ!!何故?僕が叔父さんに似てると言ったからですか?」

「レントランド国には、実は将来を約束した人がいたんだ。その人の名前は、モリス、サナーシュ」


「サナーシュ?じゃあ……」

「シュンもレントランド国へ私の視察に付き合って行ったのだが、小さかったから覚えていないだろうか…………
その時に彼女に再会して、やっと想いを伝えたんだ。
だが、僕は事故のせいで記憶を無くしてしまい、迎えに行くと約束したのに行かなかった。
僕はモリスを裏切ったんだよ。 
アリサの言葉に騙され、アリサに看病されてるうちにアリサに絆されて一緒になった。記憶が戻ったのはアリサと婚姻してから10年以上も経ってからだ。だが僕自信がアリサを選んだんだ。記憶が戻ったからと言って、裏切った僕には彼女の前に立つことは許されるとは思えなかった。
記憶が戻ってからは、僕は彼女の幸せだけを祈っている。彼女ほどの美しい才女をほっとく男なんていないだろうから、幸せになっていると思っているんだ。
だがシュンが言ってた、メアリさんが僕の子だったら……その想いがどんどん膨らんで……一目だけても良いんだ。
一目だけメアリさんに会うことができないだろうか?メアリさんにわからなくて良いんだ。陰からで良いんだ。
シュン、会わせてもらえないだろうか」

「叔父さん………
わかりました………時間をください。」

「シュン、ありがとう」










「叔父さん、この場所からなら、彼女達が乗る馬車が良く見えるはずです。」

「ありがとう。馬車も用意してもらってすまない」

「いいえ。伯爵家の友人がちょうど空いている馬車があると言うので良かったです。
あっ、殿下達が来ましたよ。あの金髪の王女殿下の少し後ろに歩いているのが彼女です」


「……………」



そして馬車が我々の乗る馬車の横を通った。

少しだが王女の前に乗るメアリの顔が良く見えた。

チラッとメアリ嬢がこちらの方へ向いたようにも見えた。



「あぁ………」


「叔父さん?」


「シュン、モリスの子だ。モリスにそっくりで……それに確かに私の色にも似ていたよ。
シュン、ありがとう。会わせてくれてありがとう。
モリス、モリス。ごめん、モリス。」
そう言って叔父さんは涙を流した。

「叔父さん…」


「彼女は、幸せなのだろうか」

「メアリ嬢ですか?
えぇ。王族の方達と仲が良く、支えてると言うより、殿下達とは友人のようです。メアリ嬢は優秀な方で、あの美貌ですから周りの子息達は話しかけようといつもそわそわしてます。
ですが近くにいる殿下の側近に睨まれて……ふっ、もしかしたら彼はメアリ嬢に惚れてるのかもしれませんね。」



「そうか……シュン、僕はレントランド国へ行って来ようと思う」

「叔父さん、でも!」

「いや、確かめたいだけだ。モリスが今幸せなのか。」

「そうですか、僕も一緒に行きましょうか?」  

「一緒に行ってくれるか?」

「はい。叔父さんが暴走したら困りますからね。
叔父さん、もしメアリ嬢の母上が1人だったらどうしますか?
メアリ嬢が叔父さんの子だったら「シュン、我が公爵家を継ぐのはシュンだよ。それは変わらないよ」」

「…………」

「シュンを不安にさせてすまないね。メアリ嬢を見て思うことがある。彼女はもし僕が父でも、父とは思わないだろうと言うことだ。
モリスの子だから、きっとそう思うんだよ。それに、母を悲しませた父の側になんて来たいとは思わないだろう。
だがモリスが幸せなのか、僕は知らなくてはいけない。それが辛くても愛した女性だから、約束を守らなかった僕だからこそ、彼女の今を知りたいと思うんだよ」


「わかりました。行かれるときは必ず、公爵家の後継としてついていきます。」

「シュン、ありがとう」

「いえ、珍しい薬草がある国ですから、楽しみですよ」






叔父さんを馬車の中からメアリ嬢に会わせた次の日………


学園へ行った僕の前に、メアリ嬢が立った。
訝しげな顔つきで「お話があります」そう言った。

















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