1度だけでも会えたなら、私達には天使がいるのだと言いたい

瑠渡

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今回は不定期投入(更新)です。



………………………………………

おかあしゃま?大丈夫?

「メアリ、お母様は大丈夫よ。
もし、お母様に会いたかったら、今度は裏にある丘へ来てちょうだいね。」

「わかったぁ」

「ふふっ、メアリはとても元気ね。」





「おかあしゃま!おかあしゃま!」

「メアリちゃん、お母さんを寝かせてあげようね」

「うぁ~ん。おかあしゃまぁ~」





嫌だわ
疲れて寝てしまってたのね
久しぶりにお母様の夢を見たわ

そういえば……暫く会いに行ってないからなのかしら。

「メアリ?」

「お祖父様、ここです!」

「どうしたんだい?」

「ごめんなさい、この頃少しだるくて休んでいました」

「それはいけないね、医者を呼ぼうかい?風邪かな?」

「お祖父様、大丈夫です。マリアちゃんの勉強の時間なのにすみません」

「いいんだよ。メアリが倒れたらローズに叱られてしまうよ」

「そんなっ、お祖母様はお祖父様が大好きなのでそんなことはありません。お祖母様にお茶をお出ししてからマリアちゃんの勉強に入りますね」

「そうだ!ローズとお茶をしたいからメアリを探していたんだった。
お茶を頼むよ」

「はい!」




私はメアリ.サナースュ。
私の大好きなお母様が、私が4歳の時に儚くなってしまった。
今は母の弟、伯父様に私は引き取られている。
私の意志がわかるようになったら、養女になるか、この家から働きに出るか選択をさせてくださった。
私は自分で働く道を選択した。  
だが伯父様は、私を養女として貴族令嬢が通う学園へ通わせてくださっている。
勉強の出来る時を大事にしなさいと言われている。
お祖父様も伯父様の家族も良い方で、私を可愛がってくださっている。
6歳になる伯父様の娘、マリアちゃんの家庭教師も引き受けて、マリアちゃんにも「お姉さま」と、懐かれている。


学園から帰り食事を終え、部屋へ帰れば窓から満天の星の数が見えた

「お母様……メアリは今日も元気に過ごしました。
お母様は私を見てくれていますか?





今日は夢を見たせいかしら?
お母様に会いたい気持ちが強い

徐に棚の引き出しを開け、今にも壊れてしまいそうな装丁の厚い日記帳を出す


「あぁ、まだお母様の匂いがしそうだわ。それにしても……ボロね。今度直さなきゃね」

パラパラめくり、中に挟んである写真を出す

お母様と……お父様。

いや、母を捨てたお父様



モリス.サナーシュ、私の母の名前だ。

お母様は王都の外れにある伯爵家の長女として産まれた。

優しい父親と少しふくよかな母親と弟と4人家族。

勉強が殊の外好きなお母様は、学校の図書館にいることが毎日の日課だったようだ。


母と父の写真を置き、パラパラとめくり母の日記を続きから読む。



……………………………………………

◯月◯日

いよいよ15になり、王都の貴族学園に通う日が近づいてきた。

どんな出会いが待っているだろうか

毎日がとても楽しみだ。

図書館にはどんな本があるだろう?

あぁ~楽しみすぎる!



(母がどんなに楽しみにしていたか、読んでいても伝わってきそう)



◯月◯日


今日は入学式だった。

入学式……そこであんな目立つ事がなければ、私は穏やかな日々を過ごせていたのかもしれない。

首席入学の私が壇上へ上がり、代表挨拶をした。
挨拶が終わり、段を降りようとしたら1人の青年がスッと手を出してエスコートしようとした。

「えっ?あっ、すみません」

私はその手をとって段を降りた。

「ありがとうございました。」そう言って手を離し歩き始める。

その爽やかな青年はこの国の皇太子で、生徒会長だった。

私は普通と思っていた容姿が、人を惹き付けてしまうことを知らなかった。

いや、知っていたのかもしれない。
なぜなら、小さい時から釣書は毎日届いていたし、歩けば子息から声をかけられていた。

だが、女友達の多い私はそんなこと気がつかなかったのだ。
だっていつも女友達と行動していたからだ。


歩く先々で、ヒソヒソ声が聞こえた。
「皇太子殿下がわざわざエスコートを!」

「あの子誰なの?婚約者候補だったかしら?」

皆が私を見ているが、気にしないように席へ歩いた。

だが1人の少女の側を通った時、私に足をかけてきた。

「あっ」っと思った時は遅く、私は前方へ転んでしまった。

「クスッ」

「クスッ。やだ」

どこからか、そんな声がする

立とうとした時、側の男子生徒が
手を出して立たせてくれた。

「ありがとうございます」

そう言いながら顔を見れば、惚け顔を向けられていた。

その顔に怖さを感じ、慌てて手を離し礼を言い席へ向かう。

なに?女性からの敵意のような眼差し。

男性からの熱い視線。


縮みそうな気持ちだったが、座って前を向いて式が終わるのを待ち、終わったので、親友のキディの側へ慌てて行った。

キディも心配してくれて私の方へ向かっていた。


「たぶん、足をかけられたわよね?」

そう親友も確信していた。

「モリス、前みたいな人数ではないけれど、私達とできるだけ一緒にいなさいよ。」

そう言ってくれて嬉しかった。

うぅ~、キディ、恩に着るよ!!

教室へ向かう手前でキラキラした先程の青年(皇太子セイロン)に声をかけられた。



「サナーシュ嬢、良い挨拶だったね。その後のは……(笑)痛かったねぇ。大丈夫かい?
僕はこの国の皇太子。セイロンだ。そして、生徒会長でもある。」


「はい。あ…ありがとうございます?皇太子殿下。
知らずに失礼いたしました。」

慌ててカーテシーをする。
もちろん、キディもしている。

「明日からランチルームで一緒にランチをしないかい?私の側近も一緒だし、女性1人で心細ければ私の婚約者候補も誘おうと思っているのだが良いだろうか?」

「えっ?いえ、そんなっ。
私はいつもお弁当なのでお気遣いなく」

「ふ~ん。じゃあ、また近いうちに声をかけるよ」


キディも固まってしまったが、私も何故そんなことを言われたのかかわからない。

クラスへ行けば男子生徒の熱い視線が絡み付く。

そして、歩けば声をかけてくる。

「サナーシュ嬢、さっき皇太子殿下が声かけてたよね?」

「やっぱり目をつけられたね?
サナーシュ嬢の美しさを見れば、絶対に来ると思ったんだ」

「………」

慌ててキディの側へ行く時には、後ろに男子学生がついており、まるで男をはべらかせて歩く女王のようにキディには見えたと、言われた。

(いやだ!私が何をしたっていうの?)

涙目の私をキディは慰めてくれた。

サンキュー我が親友よ!






パラパラと日記をめくる


◯月◯日

学園へは人より早く行っている
それは……私の容姿にある。
私の髪色は銀色で、あまりいない。
肌の色は白く、目鼻立ちがはっきりしているので、どうも目立ってしまっている。
入園式に騒がれてしまったので、それからは顔を隠す太いメガネをかけている。
今日も早く学校へ行き、席に着いた。移動教室の時は、キディ達と女性大勢と移動しているし、帰りは急いで帰るので始めに比べたら過ごしやすくなった。
「モリスさん?」なんて話しかけられたら、一目散に逃げることにしている。




 《ふっ、お母様はモテモテね》



    
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