1度だけでも会えたなら、私達には天使がいるのだと言いたい

瑠渡

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◯月◯日


「おはよう」 

「おはようございます」

 私の隣の席は留学生のリュド、エトリガット様だ

 隣国ハリオットラ国の公爵子息。

 高位貴族であるだけでも令嬢は色めき立つが、その容姿も令嬢を興奮させている

 王家に近いと言うことで黒髪で瞳は澄んだ濃青色。
 二重瞼で整いすぎた顔立ちもあり、留学してきた初日から、令嬢の心を離さない。
 明るい性格で彼の席は令嬢で溢れている。
 その横隣の席は私にとってかなり厳しい。
 そう、令嬢が私の席の方まで押し寄せているからだ。

私もリュド様に好意を寄せている仲間のように、令嬢達の中に机ごと入っているので、私に話しかけたい令息が話しかけることができない。

ある意味、助かっている。

私は知らぬ顔をしてずっと下を向き本を読んでいる。
令嬢の押し合いへし合いで机があらぬ方向へ向くことがあるが、致し方ない。

令息の声掛けから守ってくれている令嬢達に、心の中でありがたや~と唱えている。

だが、早く授業にならないかなと毎回思う。はっきり言って黄色い声は煩すぎるのだ。

私は騒がしい声を無視して予習を始めた。 

そうした方が隣からのリュド様の声と令嬢の声が聞こえないからだ。

 眉毛の真ん中に皺を寄せて、集中集中と、呪文を唱える…


 リュド様は……どうも私が苦手らしい。
 それは明るいリュド様が、席が隣の私には話しかけてこないから。
 忘れ物をして困っていても、私にペンを貸して欲しいとは言わず、前の席に座っている令嬢へ頼んでいた。
(あら、私って嫌われている?そう言うことね)

 なんか、納得してしまった。
 だって、私との会話は「おはよう」
 1日隣でも毎日その一言だけだから……

 隣国から留学してきたのはリュド様だけではない。
 同じクラスには同じく公爵子息のカイル様に、侯爵令嬢のマイカ様もいる。
 その二人はどうも恋仲らしく、いつも一緒にいて離れないし、令嬢が近づくとマイカ様は睨みをきかしている。


 (おぉー、怖っ) 


 絶対側には行かないわ!

そもそも私は自分の机から離れないけれども………。
ブルッとなり、机をガシッと持つ。
(何やってんの?と、私の隣に立つキディは呆れて見ている)

 それにしても私は、リュド様に嫌われたようなことしたかなぁ?

 はてっ?

 リュド様は絶対に私の方を向かない。

 だから私も絶対見ないし、話しかけはしない。





「モリス~。ねぇ、今から図書館へ寄って行こう!」

「いいの?」

「ふふっ、行きたかっでしょ?」

「ええっ!!」

「その後、私の用事も付き合って!食べたい物があるの!」

「マリンカフェ?」

「そうなの!エッグタルトがね、また期間で食べれるらしいのよ。
大丈夫よ。モリスが話しかけられないように皆にガードしてもらうし、帰りは私の馬車で送るわ」

「そうね、大丈夫よね?さっきも廊下で追いかけられそうになったんだけど。」

 
「もおっ!あんた……眉毛全部剃ろうか?
 あんた……鼻毛伸ばそうか?」


「キディちゃん、それだけは……ゆるぢで~」

「ふっ、なら我慢して付き合いなさい!
 もしカフェで声をかけてきた男がいたら、ケチョンケチョンにしてあげる。守るで~」


「ふっ、キディったら」


今日も学園が楽しかった。

キディのおかげよ!

キディ、ありがとう。



 そんな楽しいひとときをキディ達と過ごし、鼻歌混じりに帰ってきた私を、恐ろしい顔をした母が立って待っていた。

「うぐっ!」



「モリスーっ!!」

遅くなった私は、心配させたお母様に大目玉をくらった。


母、お~っ怖い!






《なにこれ?お母様とおばあ様ったら、おかしい!》笑



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