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1年 秋〜冬
僕は知らなかった
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「城之内昴?…ああ、俺のはとこだ。」
翌日の放課後、部活のないナオくんといつもの図書館近くのベンチで会った。
「すっごく綺麗な子だったよ。もしかして、ナオくんを奪おうとする刺客かも。」
「まあ、こんな時期にわざわざ入学してくるなんてそうかもな。けど、春人以外、みんな同じだから心配するな。」
「でもさー、発情したフェロモンとかにやられちゃうこともあるでしょ。だから気をつけてね。」
「俺、理性には自信があるから心配するな。好きな人の発情した匂いを嗅いでもなんとか理性を優先させたからな。」
「好きな人って…僕?」
「春人以外いないだろ。」
そう言うと僕の顎をクイっと上げてキスをする。
「んふっ。」
「可愛いな。」
僕が照れて下を向いてると遠くからバタバタと誰かが近づく音がする。
「はあはあ、直哉様、ようやくお会いできました。お久しぶりです。昴です。」
キラキラとした綺麗な笑顔でナオくんに挨拶した。
「ああ。」
ナオくんはちらっと昴くんを見て眉を顰める。
「直哉様、これからもよろしくお願いします。僕、春ちゃんのこと気に入って仲良くしたいと思ったますので、安心してくださいね。」
「昴。」
低い声でナオくんが呼びかけると昴くんは嬉しそうにした。
「はい!」
「春人に必要以上に関わるな。いいな。」
「は、はい…。」
「春人、図書館で勉強するぞ。」
ナオくんは僕の手を引いて図書館に向かう。
「あの、じゃあね。」
僕は手を引かれながら慌てて昴くんに別れの挨拶をしたけれど、昴くんからは返事がなかった。
「ねえ、ナオくん。昴くんそんなに悪い子じゃなさそうだよ。ちょっと考え方変わってるけど、ただ単にナオくんに憧れてるみたいなだけだし。」
「春人、まだ会って二日だぞ。少しは警戒しとけ。あと、城之内家は、甘くない。お前の想像のつかない汚いことをするのが城之内家だ。」
「ええー、じゃあナオくんも汚いことするの?」
僕が冗談で言うと、
「春人を守るために必要なら、厭わずする。」
とはっきり言うので、逆に戸惑ってしまった。
その後の昴くんと僕は単なるクラスメイトとして過ごしていた。
たまにちょっかい出されるけど、よくある友達同士のじゃれあいだと思う。
それに昴くんは、その美貌と人懐っこい笑顔のおかげでアルファに人気で、お誘いが多くて忙しそうだ。
とても僕やナオくんに関わっている暇はないようで、彼が来てから1か月は経つけどとても穏やかだった。
ある日、夕食後、共有スペースで備え付けの漫画を読んでいると昴くんに声を掛けられる。
部屋に戻ったら猫のお腹をすかせたような声が外からするから一緒に見に行って欲しいとのことだった。
「ねえ、昴くん、ネックガード付けないと寮の外に出られないよ。」
ネックガードをしないで寮を出入りすると警報がなる仕組みになっている。
「ええ!?煩わしいから嫌だよ。それに部屋に取りに行くの面倒だし。裏口からなら大丈夫だって聞いたからこのまま行こうよ。」
「ほんとに?」
「うん!ちょっと見に行くだけだしいいでしょ?」
「分かったよ。ちょっとだけだよ?」
裏口から寮の外に出ると確かに警報が鳴らなかった。
変だな、どこから出ても警報が鳴るので気を付けてくださいと入寮の時に言われてたのに。
「猫見当たらないね。」
「そうだね。こっちの方かな。」
どんどん暗い茂みの奥に入っていく昴くん。
「ねえ、昴くん。また明日、明るい時に探さない?」
「えーでも明日の朝までお腹すかせたままなの可哀想だよ。」
そう言うとますます奥に入っていく。
僕もついて行くと、急に背中がぞわりとする。
複数のアルファの気配だった。
「僕、帰る!!」
急いで踵を返したが腕を誰かに捕まれた。
「わっ、ほんとに春ちゃんだ。」
携帯電話の灯りを向けられてまぶしくて前が見えない。
すると別の人物が僕の首を触って来た。
「ネックガードしてない!最高!」
「いやっ!」
触られた所が気持ち悪くて首を振る。
「おい、俺が番になる約束だろ。勝手に噛んだりするなよ。」
番!?どういうこと?でも発情期じゃないから最悪やられちゃっても番にはならないはず。
「昴ちゃん、例の物持ってきてくれた?」
「もちろんだよ。はい、どうぞ。」
注射器のようなものを昴くんは差し出した。
「じゃあ、僕は戻るからさっさと済ませてね。」
「す、昴くん!!どういうこと?」
「何?これでどういう状況か分からない訳?君はね、この優秀なアルファ三人の相手を今からするの。それでその内の一人と番になるって訳。ちなみに、強制発情させるから、そこは安心して。」
「なんで、こ、こんなこと…。」
「なんでって、それが僕の役目だからさ。じゃないと城之内家の一員にはなれないからね。春ちゃん、楽しんでねー。」
「いやっ、行かないで昴くん!」
僕が必死に手を伸ばすが抱きかかえられ、さらに奥へと連れて行かれた。
地面に毛布のようなものがあり、そこに下される。
「はーるちゃん、そんなに怯えないでよ。傷つけたりしないからさー。」
「一緒にいっぱい気持ちよくなるだけだよ。」
「ちょっとチクッとするけど、我慢してね。」
押さえつけられて太ももにズボンの上から注射される。
「いたっ!!」
薬剤が全身に行きわたり、体が熱くなってくる。
このままじゃ、ナオくん以外と番にされちゃう!いやだよー、助けて!!!
翌日の放課後、部活のないナオくんといつもの図書館近くのベンチで会った。
「すっごく綺麗な子だったよ。もしかして、ナオくんを奪おうとする刺客かも。」
「まあ、こんな時期にわざわざ入学してくるなんてそうかもな。けど、春人以外、みんな同じだから心配するな。」
「でもさー、発情したフェロモンとかにやられちゃうこともあるでしょ。だから気をつけてね。」
「俺、理性には自信があるから心配するな。好きな人の発情した匂いを嗅いでもなんとか理性を優先させたからな。」
「好きな人って…僕?」
「春人以外いないだろ。」
そう言うと僕の顎をクイっと上げてキスをする。
「んふっ。」
「可愛いな。」
僕が照れて下を向いてると遠くからバタバタと誰かが近づく音がする。
「はあはあ、直哉様、ようやくお会いできました。お久しぶりです。昴です。」
キラキラとした綺麗な笑顔でナオくんに挨拶した。
「ああ。」
ナオくんはちらっと昴くんを見て眉を顰める。
「直哉様、これからもよろしくお願いします。僕、春ちゃんのこと気に入って仲良くしたいと思ったますので、安心してくださいね。」
「昴。」
低い声でナオくんが呼びかけると昴くんは嬉しそうにした。
「はい!」
「春人に必要以上に関わるな。いいな。」
「は、はい…。」
「春人、図書館で勉強するぞ。」
ナオくんは僕の手を引いて図書館に向かう。
「あの、じゃあね。」
僕は手を引かれながら慌てて昴くんに別れの挨拶をしたけれど、昴くんからは返事がなかった。
「ねえ、ナオくん。昴くんそんなに悪い子じゃなさそうだよ。ちょっと考え方変わってるけど、ただ単にナオくんに憧れてるみたいなだけだし。」
「春人、まだ会って二日だぞ。少しは警戒しとけ。あと、城之内家は、甘くない。お前の想像のつかない汚いことをするのが城之内家だ。」
「ええー、じゃあナオくんも汚いことするの?」
僕が冗談で言うと、
「春人を守るために必要なら、厭わずする。」
とはっきり言うので、逆に戸惑ってしまった。
その後の昴くんと僕は単なるクラスメイトとして過ごしていた。
たまにちょっかい出されるけど、よくある友達同士のじゃれあいだと思う。
それに昴くんは、その美貌と人懐っこい笑顔のおかげでアルファに人気で、お誘いが多くて忙しそうだ。
とても僕やナオくんに関わっている暇はないようで、彼が来てから1か月は経つけどとても穏やかだった。
ある日、夕食後、共有スペースで備え付けの漫画を読んでいると昴くんに声を掛けられる。
部屋に戻ったら猫のお腹をすかせたような声が外からするから一緒に見に行って欲しいとのことだった。
「ねえ、昴くん、ネックガード付けないと寮の外に出られないよ。」
ネックガードをしないで寮を出入りすると警報がなる仕組みになっている。
「ええ!?煩わしいから嫌だよ。それに部屋に取りに行くの面倒だし。裏口からなら大丈夫だって聞いたからこのまま行こうよ。」
「ほんとに?」
「うん!ちょっと見に行くだけだしいいでしょ?」
「分かったよ。ちょっとだけだよ?」
裏口から寮の外に出ると確かに警報が鳴らなかった。
変だな、どこから出ても警報が鳴るので気を付けてくださいと入寮の時に言われてたのに。
「猫見当たらないね。」
「そうだね。こっちの方かな。」
どんどん暗い茂みの奥に入っていく昴くん。
「ねえ、昴くん。また明日、明るい時に探さない?」
「えーでも明日の朝までお腹すかせたままなの可哀想だよ。」
そう言うとますます奥に入っていく。
僕もついて行くと、急に背中がぞわりとする。
複数のアルファの気配だった。
「僕、帰る!!」
急いで踵を返したが腕を誰かに捕まれた。
「わっ、ほんとに春ちゃんだ。」
携帯電話の灯りを向けられてまぶしくて前が見えない。
すると別の人物が僕の首を触って来た。
「ネックガードしてない!最高!」
「いやっ!」
触られた所が気持ち悪くて首を振る。
「おい、俺が番になる約束だろ。勝手に噛んだりするなよ。」
番!?どういうこと?でも発情期じゃないから最悪やられちゃっても番にはならないはず。
「昴ちゃん、例の物持ってきてくれた?」
「もちろんだよ。はい、どうぞ。」
注射器のようなものを昴くんは差し出した。
「じゃあ、僕は戻るからさっさと済ませてね。」
「す、昴くん!!どういうこと?」
「何?これでどういう状況か分からない訳?君はね、この優秀なアルファ三人の相手を今からするの。それでその内の一人と番になるって訳。ちなみに、強制発情させるから、そこは安心して。」
「なんで、こ、こんなこと…。」
「なんでって、それが僕の役目だからさ。じゃないと城之内家の一員にはなれないからね。春ちゃん、楽しんでねー。」
「いやっ、行かないで昴くん!」
僕が必死に手を伸ばすが抱きかかえられ、さらに奥へと連れて行かれた。
地面に毛布のようなものがあり、そこに下される。
「はーるちゃん、そんなに怯えないでよ。傷つけたりしないからさー。」
「一緒にいっぱい気持ちよくなるだけだよ。」
「ちょっとチクッとするけど、我慢してね。」
押さえつけられて太ももにズボンの上から注射される。
「いたっ!!」
薬剤が全身に行きわたり、体が熱くなってくる。
このままじゃ、ナオくん以外と番にされちゃう!いやだよー、助けて!!!
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