元殺し屋の私が異世界憑依したら溺愛ルートが待っていた~醜い辺境伯と身代わり夜伽妻~

五嶋樒榴

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 ジョージがクロードの屋敷に行ったのと入れ違いに、クロードの御者のシューマンが、クロードの手紙を私に届けに来た。

 手紙の内容は、エリーズの侍女達が久しぶりに私に会いたいと言う、いかにも胡散臭い内容だった。

 クロードは、会いたく無いなら別に無理をする事は無いと書いてあったが、もし屋敷に来れるなら、昼も一緒に食べようと誘い文句も添えられていた。

「トゥーリスさんとメラさんに、確認をしてみますので少々お待ちください」

 馬車で待つシューマンに声を掛けて、私は館の中に入った。
 2人は手紙を読むと、行っておいでと快く送り出してくれた。

「あの、隣に座って良いですか?」

 シューマンの手綱捌きが見たくて、私はシューマンに聞いてみた。

「面白い事を言うね。馬車の運転が見たいのかい?」

「ええ!いつかは馬に乗りたいと思っているんです。だから、もっと馬を観察したくて」

「馬に乗りたい話はフィリップからも聞いているよ。ただ馬車の中より乗り心地は悪いぞ」

 そう言いながらもシューマンは、馬車の御者が座る場所に私を一緒に座らせてくれた。
 シューマンは乗り心地が悪いと言ったが、流石クロードの馬車は、御者の座る場所も快適だった。

 それにしても、エリーズは何を考えている?
 モニカとメグを使って、私に何を仕掛けるつもりだろう。

 まあ、何をしようと返り討ちにしてやるわ。



 屋敷に到着して、私はシュナイダーの案内で執務室に向かった。

「やあ、フィリシア。いらっしゃい」

「ん?フィリシア?どうしてここに?」

 クロードは私を歓迎し、ジョージは私がやって来た事に驚いている。

「エリーズに頼まれて、フィリシアを呼びに行ったんだよ」

 クロードがジョージに理由を説明する。

「お前がエリーズの頼みを聞くとは。どうせ裏があるんだろ?」

 ニヤニヤしてジョージはクロードを見ている。

「エリーズの用事が終わったら、一緒に昼を食べようと思ってね。夜も、もちろんそっちで食べるつもりだけどさ」

 全く、クロードは。
 時間があれば私に会いたいんだな。

 私も別に、会えたら嬉しいとは思うけどなッ。

「では、先にエリーズ様の御用事を済ませて参ります」

 嫌なことはとっとと済ませてこよう。

「ああ。終わったらまたここにおいで。昼はここで3人で食べよう」

「へえ。僕も一緒で良いんだ」

 ジョージがクロードを揶揄うと、クロードはわざとらしい咳払いをする。
 ジョージがニヤニヤする顔を見ながら、私もつい微笑んでしまった。

「かしこまりました。失礼致します」

 私は執務室を出ると、エリーズの待つ部屋へ向かった。



 エリーズの部屋には、モニカとメグも待っていた。

「久しぶりね、フィリシア。エリーズ様のお世話を投げ出して、クロード様を唆しているんですって?」

 意地悪そうな顔で笑うモニカに、私は何も答えなかった。

「何か言ったらどうなの?あんたのせいで、わざわざ出向いた私達に、何か言う事は無いの?」

 メグもモニカに乗ってくる。

「私のせいでわざわざ出向いたなんて言い方、そんなにエリーズ様のお世話が嫌だったんですね」

 私が笑顔で嫌味を言うと、メグはハッとしてエリーズを見る。

「エリーズお嬢様!決してそんな事は!フィリシア!あんた、何を揚げ足取りをするのよッ!」

 メグは昔からそうだった。
 根が馬鹿正直というか、本当に馬鹿なのか、思った事をそのまま言っては、エリーズや男爵夫人に叱られる事も多かった。

 男爵夫人がモニカと一緒にこっちに送り出したのも、厄介払いだったんだろう。

「メグ、お前は黙ってなさい」

 エリーズはおでこに手を当ててメグを睨んだ。
 メグはシュンとなって俯く。

「あんたをここに呼んだのは、モニカと一緒に街に買い物に行って欲しいのよ」

 モニカと一緒に買い物?

「近々、ティーパーティーを開くのだけど、ゲストの皆様にお渡しする手土産をモニカに頼んだのよ」

 だったらモニカが1人で行ってこいよ。

「モニカはまだ昨日着いたばかりで、街の様子も分からないのよ。お前が一緒に行って案内して」

 なんか、怪しさ満点。

 私が先日ジョージと街に行った事をエリーズは知らないはず。
 それなのに私に案内させるなんて不自然極まりない。

「私も街の様子は知りません。案内など無理です」

 バカバカしい。
 エリーズのために、なぜ私が労力を使わなくてはならないんだ。

「そう言ったご相談は、シュナイダーさんにお願いしたら如何ですか?ゲストの皆様が喜ぶ品を、シュナイダーさんなら確実にご用意できますよ」

 エリーズとモニカの趣味じゃ、もらうゲストもゴミをもらう様なもんだ。

「良いから、私の言うとおりになさい!」

 エリーズが大声を張り上げた。

「なぜ、そんなに私に街を案内させたいんですか?」

 私は逆に声を低くしてエリーズを睨んだ。

「べ、別に、理由なんて無いわよ!ただ、モニカもこの屋敷の侍女より、お前の方が気心が知れてるでしょ?」

 はあ?
 もう、分かりやすいほど怪しい。

 どうやら私を街に出して、何か企んでいるんだな。

 もしかして、殺し屋でも雇ったか?
 街に出たところで、私を殺すつもりとか?

 フッフッフッ。
 面白い。
 逆にそいつらを捕まえて、エリーズの前に突き出してやるか。

「分かりました」

 それなら乗ってやろうじゃない。

 私が了承すると、エリーズとモニカは口元が緩んだ。

 やっぱり、私を消すつもりか。

 街で何があっても、事故で片付けようとしているのね。
 浅知恵すぎて笑うしか無い。

 確かに、フィリシアだったら赤子の手を捻る様なものよね。
 でも残念だったわね。
 私はウォーレンなの。

「そうと決まれば急ぎましょう!」

 さっさと片付けて、私はクロードとランチをしなくてはならない。

「え?あ、ええ」

 モニカは私が行く気満々なので、逆に引いている。

 モタモタしてんじゃねーよ。
 どうせお前が殺し屋を雇って来たんだろ?

 お前達の計画に乗ってやるんだ。
 その代わり、失敗した時のことをよく考えておけよ、エリーズ。

 私が殺し屋達を、この屋敷に引き摺って来てお前の前に晒してやる。
 そして、クロードから婚約破棄されるが良いさ。


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