長い夜、蒼い月

五嶋樒榴

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嘘のツケ

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まだ決心がつかない栞の隣に並ぶように一夜が横になった。
この位置では栞の恥ずかしい姿は見えない。

「どうしてもダメなら良いよ。そんなに僕も意地悪じゃないし」

一夜は諦めたように言った。

「だって、だって」

栞が縛られた手で顔を隠す。

「ちょっとハードル高かったね。僕も興味が勝っちゃった。恥ずかしがる栞が可愛いから、そんな栞が乱れるところ見たかったからさ」

一夜は栞の頬に優しくキスをした。

「じゃあ、今夜はもうおしまいにしよう」

一夜が手首のネクタイを外した。

「シャワー浴びておいで。いっぱい濡れてるから」

一夜が起き上がりベッドから立った。
ネクタイをクローゼットに片付け、ベッドルームから出て行った。栞は静かに起き上がると、バスルームに入ってシャワーを浴びながら泣いた。
一夜はしなくて良いと解放してくれたのに、栞はなぜか罪悪感を感じた。


 なぜ、彼の言う事が聞けなかったんだろう。


そう自問自答しても、あそこまでできたのに、その先がどうしても恥ずかしくて動かなかった。
シャワーから出て、着けてきた下着と洋服を着るとリビングに戻った。
一夜はビールを飲んでいた。

「帰ります」

栞が帰ろうとするので一夜は腕時計を見た。

「もう11時過ぎてるよ。危ないから泊まっていきなさい」

優しく一夜は言う。

「だって、あなたの言う事が聞けなかったし」

泣きながら栞は言い返した。

「バカだな。そんな事どうでも良いよ。今夜、一緒に寝てくれれば良いよ」

一夜は栞を抱きしめた。

「俺もシャワー浴びてくるね」

一夜はバスルームに消えた。
シャワーを浴びて、腰にバスタオルを巻いてリビングに戻ると栞の姿がなかった。
帰ったのかと焦った一夜は玄関に行く。玄関には栞のヒールがまだありホッとした。
リビングに戻り奥のベッドルームの扉を開けると、栞が裸でベッドにうつ伏せになっていた。
一夜に気がついて上体を起こして栞は一夜を見つめる。

「帰ったかと思って驚いたよ」

一夜は栞に近付きおでこにキスをした。

「……ねえ。もう一度縛って。でもお願い。電気は暗くして。明るいのはイヤ」

一夜は栞の頬を触りながら唇にキスをした。

「もう良いよ。無理しなくても、僕は君を嫌いにならないから」

栞は顔を横に振った。

「違うの。あたし、が……見て欲しいの」

真っ赤になって栞は言う。栞のドキドキが一夜にも伝わる。
一夜は、クローゼットからネクタイを出して栞の手首を縛ると再びキスをした。
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