長い夜、蒼い月

五嶋樒榴

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小悪魔

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「日本の古典に“源氏物語”って話がある。おばあさんの書斎で読んだことがある。正直あまり話も意味もわからないんだけど、主人公は、幼い娘を育て、そのうち自分の妻の一人にする。栞と知り合って、自分好みに育てたくなった」

身勝手なもんだとジェイクは思った。

「その主人公のようにお前もシオリと結婚でもするつもり?」

ジェイが問いかけると一夜は首を振った。

「栞は僕のことを好きになってる」

そりゃそうだろうとジェイクは思った。

「最後までしなければセーフってどこか僕は甘く考えてた。そして僕は恋愛感情はないとも言った。栞の身体だけじゃなく、気持ちも弄びすぎた」

「この先どーする?これ以上はもうシオリとも離れろ」

一夜はため息を吐いた。

「それは栞が決める事だよ。栞がいつか僕から離れていくって分かってる。愛してもくれない男に魅力なんてないだろ?」

「わっかんねー。重いわ。お前真性のドSだな」

ジェイクが言うと一夜は力なく笑った。


 こう言うズルい男に女は弱いんだよね。はまったら最後。嫌いになるまで離れられない。


頬杖をついたままジェイは一夜を見つめた。女を狂わす罪な男は、美しく最高の笑顔でジェイクを見た。

「あんまり見つめるなよ。お前とそう言う関係なるつもり僕は全くないから」

「こっちこそ、お前みたいにめんどくせー奴に手なんか出すか。そこまで飢えてないわ」

ジェイクは優姫にもそう言ったことを思い出した。
不思議なほど日本に来てからジェイクの性欲は薄れていた。
アメリカにいた時はマイケルがいながら、それこそ一晩だけの相手と浮気を繰り返していたのに。

「アンソニー、俺、枯れたのかな」

突然変なことをジェイクは口走り一夜は困惑した。

「日本に来てから、性欲なくなってる」

真顔で言うジェイクのおでこに一夜は手を当てた。

「熱はなさそうだな。と言うか、お前それやばくない?マジお前らしくないぞ!」

顔面蒼白でジェイクも頷いた。一夜は少し楽しんでる。
何故そうなったか、ジェイクが一番知りたかった。  
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