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小悪魔
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残された二人はあっけに取られたが笑った。
「送るよ」
一夜が由紀子の手を握った。由紀子はその繋がれた手にドキドキする。
一夜は何も言わず手を繋いだまま離さない。
今すぐにでもキスをしたい衝動を一夜は必死抑えた。
タクシーの中でも二人は手を繋いだ。
一夜が離さなかった。
何も会話はなかったが、お互いの掌の温もりを愛おしんだ。タクシーの中だったので、一夜は英語で話し始めた。
「僕はズルい。本当なら由紀子の手を握る資格もないのに。僕には他にも居るんだ」
一夜のまさかの告白に、由紀子は固まった。
でも考えてみれば、由紀子だって結婚しているのに、一夜の甘い囁きに負け夫を裏切っているのだ。一夜を責められない。
「知り合った頃は、こんな気持ちになると思わなかったわ。好奇心であなたの誘いに乗って、割り切るって思ってたんですもの」
由紀子の言葉に一夜も頷いた。
始まりはなんとなくだった。人妻と少しの逢瀬を楽しめればと軽い気持ちだったのに。
「もう一人の人は、結婚しているの?」
由紀子の問いに、一夜は首を振った。
「その人が羨ましい」
由紀子が本音を漏らした。
「その角で良いです」
由紀子が運転手に言った。
タクシーのドアが開き、一夜の手から由紀子の手もするりと外れた。
「ありがとう。さよなら」
由紀子がタクシーを降りると、タクシーは再び走り出した。
一夜は由紀子の手の温もりを感じるように、もう片方の手で握った。
「送るよ」
一夜が由紀子の手を握った。由紀子はその繋がれた手にドキドキする。
一夜は何も言わず手を繋いだまま離さない。
今すぐにでもキスをしたい衝動を一夜は必死抑えた。
タクシーの中でも二人は手を繋いだ。
一夜が離さなかった。
何も会話はなかったが、お互いの掌の温もりを愛おしんだ。タクシーの中だったので、一夜は英語で話し始めた。
「僕はズルい。本当なら由紀子の手を握る資格もないのに。僕には他にも居るんだ」
一夜のまさかの告白に、由紀子は固まった。
でも考えてみれば、由紀子だって結婚しているのに、一夜の甘い囁きに負け夫を裏切っているのだ。一夜を責められない。
「知り合った頃は、こんな気持ちになると思わなかったわ。好奇心であなたの誘いに乗って、割り切るって思ってたんですもの」
由紀子の言葉に一夜も頷いた。
始まりはなんとなくだった。人妻と少しの逢瀬を楽しめればと軽い気持ちだったのに。
「もう一人の人は、結婚しているの?」
由紀子の問いに、一夜は首を振った。
「その人が羨ましい」
由紀子が本音を漏らした。
「その角で良いです」
由紀子が運転手に言った。
タクシーのドアが開き、一夜の手から由紀子の手もするりと外れた。
「ありがとう。さよなら」
由紀子がタクシーを降りると、タクシーは再び走り出した。
一夜は由紀子の手の温もりを感じるように、もう片方の手で握った。
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