長い夜、蒼い月

恋する乙女の悦び

１０９

マイケルは由紀子をベッドに押し倒した。由紀子は起き上がろうとした時、マイケルは由紀子の上に乗り言った。

「怖がるな。僕はゲイだ。女に興味はない。ただ一緒に横になってくれ。頼める相手がいない」

悲しそうにマイケルは笑う。由紀子は慣れない日本で疲れ切っているんだと思った。
ゲイと言う言葉を信じて、由紀子はジャケットを脱いでベッドに横になった。マイケルもスーツの上着を脱ぎ捨てネクタイも外し、由紀子の隣に並んで横になる。

「どうして僕がユキコにゲイをカミングアウトしたか分かる？」

由紀子は全く分からなかったのでそれを素直に伝えた。

「なんとなくユキコならなんでも言えそうな気がした。包容力があるからかな。日本に来て辛いことばかりで、気が休まらなくて。料亭でも気を使ってくれたでしょ。僕があまりお酒飲めないの気がついて、グラスを変えるふりをして下げてくれたり、僕の料理だけ生物が無かった。事前にちゃんと好みも調べてくれてた」

静かな口調でマイケルは言う。

「金曜の夜にとても辛いことがあったんだ。恋人だった人にフラれた。僕が先にアメリカでふったんだけど」

それはもしかして一夜なのかと由紀子は焦った。
離婚した話は聞いたが、もしかして一夜はバイなのかと気になった。

「その人って、もしかして」
　　　　
由紀子が震える声で聞く。マイケルは由紀子の手を握った。

「僕も女の人を愛せたら、こんなに辛く無かったけど、残念だけど、ユキコの様に美人でグラマラスでも感じないんだ」

悲しい目でマイケルは由紀子を見る。

「マイケルが愛してる人って、もしかして……」

由紀子が言いかけるとマイケルは笑った。

「ジェイコブを君も知っているだろう？」

ジェイクと聞いて由紀子はまたびっくりした。ジェイクはてっきりノーマルだと思っていた。