長い夜、蒼い月

恋する乙女の悦び

１１２

優姫の料理ができて、3人はダイニングテーブルに着いた。一夜持参のワインを開ける。

「マイケルの話って？」

ジェイクが聞くと、優姫も気になるのか一夜を見る。

「お前たちには正直関係ない話なんだよ。実は、由紀子がマイケルの在日中の秘書になった。帰国する土曜日までだ。それが気になってしまって、話を聞いて欲しかった。もし、僕との関係を知ったら、由紀子が危険なことになっても困るし。由紀子は心配しないでと言うが、心配でたまらない」

優姫は由紀子と一夜の関係の意味が分からなかった。

「驚かないで聞いて欲しい。僕と由紀子は愛し合ってる」

驚くなと言う方が無理だった。由紀子が既婚者なのは優姫も知っている。

「いつからなんですか？だって、由紀子さんは！」

優姫がジェイクの顔を見る。

「ユーキ、二人を責めないでくれ。分かってる。不倫だと。でも、二人は愛し合ってる」

優姫は複雑だった。大好きな由紀子が一夜と不倫関係なのが正直辛かった。

「ユーキ」

ジェイクが優姫の頭を撫でた。
　　　　　　　
「こ、子供扱いしないで！わかってるよ、好きって気持ちは止められないって！」

ふくれっ面で優姫は言う。

「ごめんよ優姫。変な話をして。でも由紀子は悪くない。僕が由紀子を誘惑したのが始まりだ」

一夜に誘惑されて、落ちないのは優姫ぐらいなのは優姫も分かっている。

「一夜さんは由紀子さんと結婚するんですか？」

優姫のストレートな質問に一夜は一瞬答えられない。ジェイクは口を一切挟まない。

「いつか、許されるなら、由紀子と生涯を共にしたいと思う」

その言葉を聞いて優姫はホッとした。

「由紀子さんを傷つけたら私とジェイクが許しませんからね！」

え？と言う顔をジェイクがする。一夜は吹き出して笑う。

「大人の事情は当人たちしかわからないことなので、私はその事を責めたりしません。ただ由紀子さんを不幸にしたら本当に許しませんよ。ね、ジェイク」

優姫に振られジェイクも頷いた。

「もう尻に敷かれて」

一夜が苦笑すると、ジェイクは赤くなった。

「仕方ないだろ！俺の一番はユーキだけなんだから！」

幸せそうな2人が一夜は羨ましかった。