長い夜、蒼い月

五嶋樒榴

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夜明けの蒼い月

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由紀子は離婚届を出すと、高輪から福士姓に戻した。
アメリカに行く事を一夜に告げる為に会いたい事を連絡すると、一夜が予約してくれた銀座のフレンチのレストランで離婚後初のデートをする事になった。
ワインを飲みながら食事を愉しむ。
もう何も気にすることがなくなり解放感に由紀子は浸った。

「この先のことを話し合いたいの」

由紀子がそう言うと、一夜は嬉しそうに由紀子を見つめる。由紀子はその眼差しが辛かった。

「日本の法律だと半年は再婚出来ないって言っていたね。でも僕はいつアメリカから呼ばれるか分からないから、出来れば僕がアメリカに戻ってからにして欲しいと思うんだけど。それじゃ不満かな?」

一夜にも考えがあって、今すぐここでプロポーズをするつもりもなかった。
由紀子は首を振って一夜を真っ直ぐ見る。

「アンソニーに言わないといけない事があるの。私、アメリカの本社に行きます。マイケルの秘書に正式に決まったの」

由紀子の言葉に一夜の手が止まった。

「嘘、だろ?だって、もうずっと離れないって決めたじゃないか。子供だって早く欲しいんでしょ?何年向こうにいるつもりなの?半年?一年?」

一夜は声を荒げてしまって周りの視線を感じる。

「ごめんなさい。マイケルが滞在中、彼の秘書をした時からマイケルからずっと誘われていたの。今回こんな事があって、アンソニーとの関係も全てマイケルに話したわ。マイケルはそれでも私を秘書として側に置きたいと言ってくれた」

由紀子が言うと一夜は頭を振る。

「違う!マイケルは僕から君を奪いたいだけだ!」

一夜は頭を抱える。

「アンソニー。あなたとマイケルは色々あったからそう思うのも当然だわ。でも聞いて。マイケルは公私混同しないわ」

優しく由紀子は諭す。

「……本当は分かってる。マイケルが由紀子を高く買っているのも。僕の嫉妬心なんだ」

悲しそうに一夜は言う。

「私はそう遠くない頃に、マイケルはアンソニーをアメリカに呼び戻すって思うの。だから、私がアメリカであなたを待っていたらダメ?長期休暇にはもちろん会いに来るわ。私が愛しているのはこの先もずっとあなただけだから」

由紀子の言葉に一夜も落ち着いた。

「由紀子は強いね。初めからそれは感じていた。いざとなるととても強い」

由紀子はその言葉に笑った。

「わがまま言ってもいい?今夜は一緒にいたい。帰したくない」

一夜がそう言うと由紀子は頷いた。

「大丈夫。そのつもりで準備してきたから」

由紀子の笑顔に一夜は癒された。
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