長い夜、蒼い月

五嶋樒榴

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深い眠りからの目醒め

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『それと、アンソニーのこと、よくも黙ってたね。僕との守秘義務は守ってくれていたの?』

由紀子はマイケルが滞在中の間の話は、一夜にも誰にももちろん話していない。

「信じてくれるかわからないけど、それだけは本当にアンソニーにも話してません。守秘義務は厳守ですから」

真剣な由紀子の声にマイケルは笑った。

『本当に君は口が堅いらしい。今回全てを僕に話したのも、僕が君を秘書としてアメリカに呼びたいと言っていたからだろう?流石にそこまで僕を裏切れなかったと僕は判断した』

マイケルの言っている通りだった。

「はい。ボスを騙して秘書などできません。もちろんアメリカに行って秘書としての経験を積むのは魅力的だから行きたいです。でも私はマイケルに秘密を持っていました。だから、この話ももう諦めています」

淀みなく由紀子は答えた。

『ユキコ。君が本気で、僕と仕事がしたいと思ってくれるならアンソニーの事はどうでもいい。仕事とプライベートは別だと決めている。僕が欲しいのはビジネスパートナーだ。ただ、せっかく離婚できたのに、アンソニーと離れることが出来るの?』

由紀子もそれがあって、一夜に言い出せないでいる。
もうずっと離れないと決めたのに、それを破ってしまうのが本当は辛い。

「アンソニーには理解してもらいます。私達の始まりは純粋なものではなかったけど、今は本当に心からお互い愛し合っています。もしアンソニーの気持ちが変わらないなら、アンソニーがアメリカに戻るまで私はアメリカで彼を待ちます」

芯の強い由紀子がマイケルは大好きだ。

『じゃあ、意地悪してアンソニーがアメリカに帰れないようにしようかな』

マイケルが笑いながらそう言うと由紀子は笑った。

「マイケルは仕事とプライベートは別なんでしょ?近いうちにマイケルが、アンソニーを欲しくてたまらなくなってアメリカに呼び戻すって分かっていますから」

マイケルは大笑いした。
由紀子はアメリカに行く決心を固めた。もし一夜が反対してそれで別れることになっても、悲しい事だがそれは仕方ないと思った。
離婚したかったのは一夜だけの事ではないと言う事を、きちんと実証したかった。
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