長い夜、蒼い月

五嶋樒榴

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深い眠りからの目醒め

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由紀子は自分の部屋に入ると一夜に電話をかけた。

「由紀子、大丈夫だった?」

ちゃんと協議離婚ができたのか一夜も心配していた。

『大丈夫。月曜日に出します。ただ、もう少し会うのは控えたいの。もう少しだけ待ってくれる?』

由紀子の言葉に一夜も同意した。

「もうここまで来て僕も焦ってないよ。僕のために頑張ってくれたんだから待つよ」

一夜の言葉が嬉しいのと、由紀子は考えていることがあったので、それをいつ一夜に告げようか悩む気持ちと入り混じっていた。

『ありがとう。愛してるわ、アンソニー』

由紀子は微笑みながら言った。

「愛してるよ、由紀子」

一夜も心から言った。
早く会って抱きしめたい気持ちを、お互いもう少しだけ我慢した。
由紀子は一夜と電話を終えると、マイケルにも離婚できた事をメールする事にした。
マイケルは帰国してもマメに由紀子にメールしてきては、社内の愚痴など由紀子に相談もしていた。
由紀子も、洋輔と離婚する事を決めた時からそれを相談していた。
マイケルからは、もし離婚が成立したら自分の元に来て、秘書としてステップアップしないかと勧められている。それほどマイケルは由紀子を気に入っていた。
由紀子もマイケルの元で、真剣に実力だけで仕事をしてみたいとも思っていた。
しかしそれをまだ一夜に伝えられていない。
そして最大の問題は、由紀子が一夜とずっと不倫関係だった事をマイケルが知らない事。
マイケルがそれを知って激怒するのが由紀子には想像できた。
だが、それをもう隠してはおけない。
由紀子は全てを告白するメールを送ると、マイケルは由紀子からのメールを直ぐに読んでいた。
一夜が東京に来てしばらくしてから不倫関係が始まった事。本気で愛している事。
だから、マイケルがこれを知ったらきっと怒るのも覚悟している事。
謝罪の言葉が丁寧にメールで送られてきていた。

「ユキコがアンソニーと。全く、奴は僕のお気に入りを全てかっさらってるんだな」

メールを読んでマイケルは笑った。
マイケルは時計を見た。ニューヨークと東京の時差は13時間。東京は日曜の夜だった。
マイケルは由紀子に電話をかけた。

「マイケル、どうしたの?」

いつもメールだけだったので、直に電話が来て由紀子は驚いた。

『こんな大事な話をメールだけで済ますわけにいかないだろう』

マイケルの声が怒っている。当然だと由紀子も分かっていた。

『まずは、離婚できて良かったね。ただその原因の半分は、ユキコとアンソニーの問題もあったんだね。ユキコとしては“棚からぼたもち”だったでしょ?』

マイケルの言葉に由紀子は何も言えない。まさにその通りだからだ。
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