田辺君はずるいから

36ずるい・キスできない

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抱きしめられたままキスされ、諭は田辺の舌の動きにただ翻弄される。

「……………どうしたのッ！激しいッ」

「早く諭先輩が欲しかったのに、焦らすから」

田辺に抱きしめられてキュンキュンする諭。

「だって、ちょっと洗い物するだけなのにッ」

「友部の家に行く前にもお預けくらってたのに？」

「……………それ、根に持ってた？」

田辺はムッとして諭を強く抱きしめる。

「あいつの部屋なんて行きたくなかったのに、約束だから仕方なく行ったんです。そしたらあいつら遠慮なしにバクバク諭先輩の料理食うしッ！」

嫉妬したんだと分かると、諭はこの数十分の恥ずかしさも吹っ飛んだ。
自分がどれだけ田辺に愛されてるか実感する。

「あのさ、下、スースーするんだけどぉ。それにこのカッコ、マヌケだし」

我に返り恥ずかしくなる諭。

「じゃあ、シャワー浴びに行きます？」

諭はコクンと頷くと、ボクサーパンツとジーパンを一度履き直した。

「どうせ直ぐまた脱ぐのに」

田辺の言葉に諭は真っ赤になる。

「だからってあのカッコはやだったの！」

恥ずかしさを感じながら、諭は田辺と洗面所に入った。
諭は田辺を見ないように服を脱ぎはじめる。
田辺もさっさと服を脱ぐと、先にバスルームに入ってシャワーのお湯を出した。

「田辺」

諭が田辺に抱きつく。

「諭先輩？」

珍しいと田辺は思った。

「田辺がずっと我慢してたの分かったから、今夜は田辺を甘やかしてあげる」

ドキドキしながら諭が言うと、田辺は諭の頬に手を当て自分に顔を向けさせる。

「その言葉、後悔しないでくださいね」

熱を帯びた田辺の妖しい瞳を見ながら、自分が言ってしまったことに早くも少しだけ後悔する諭だった。