Dance in the Darkness. ―― Silence is mine.

されど電波おやぢは妄想を騙る

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Chapter.07

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 程なく、数十人もの特殊部隊の軍装に身を包んだ隊員らが、そこかしこから姿を現した。

 へたり込んで座っている私に軽く敬礼をしてすれ違っていく隊員らは、ただの肉塊と化した男性に持っていた大型自動拳銃などを突きつけ、周囲を取り囲んでいった。


 えっと、どちらに潜んでいたんですか?
 全く知らなかったんですけど?


 やや遅れて到着した数台の白黒緊急車両から降りてくる、これまた凄い数の警官隊にしても、私に軽く敬礼してすれ違い、各々の持ち場へと一目散に散開していく。

 事に当たり始めた警官隊らは、緊急車両のいくつものサイレンの音が鳴り響く中、民間人立ち入り禁止を示す黄色いテープを張り巡らし隔離して、現場周辺をあっという間に封鎖していった。

 てくてくと歩いて現場を離れる私に、すれ違う度に軽く敬礼しては、忙しなく事に当たっていった。


 敬礼はしてくれるけど、労いの言葉はない。
 私は蚊帳の外――場違い感が半端ない。


 何気に周囲を見回すと、既に相当な数の赤色灯に囲まれる大事となっていた。

 ついでに戦争でもやらかす気だったんですかとツッコミたくなるような、戦車的な軍事車両も数台ほど見掛けられた。


 どんだけヤバい所に、私一人で放り込んだのよ、お兄ちゃん?


 ホッとするよりもげんなりして、少し離れた場所に停めてあったミニバイクなスクーターまでトボトボと歩く。

「私……刑事は向いてないのかな」

 ゴーグル付の半ヘルを被りながら愚痴り、静かにその場を後にした――。


 ◇◇◇


「お兄ちゃんってさ、私の扱い酷過ぎると思わない? ねぇ、アイシャさん?」

 法定速度をきっちり守って大通りを流しながら、腕時計に向かって話しかけた。

『室長の愛ある仕打ちですよ。現場に慣れてもらう為の配慮です。もしも詳細を知らされて派遣されていたら、得体の知れない怖いものが苦手な沙知巡査部長は、命令無視で、速攻、逃げてたでしょう?』

 抑揚なく図星をついてくるアイシャさん。
 自由意志を持ったA.I.だけに、考え方が人に近いと言うか……まんま。
 感覚としては、実在する私の友人に近い物言い。

「否定はしないけど……職務だから頑張るけど……お、おとりってのはなくない?」

『室長の名誉の為に訂正しておきますが、電話を掛けなければ、おとりにされなかったとお伝えしておきます。容疑者を確認した時点で、何か起きる前に合図を出し、待機させていた実働部隊が突入すると言う作戦で指示されてましたから』

「そっか。私のビビリが意図せずおとり役になっちゃったのか……」

『お陰で突入する手間が省けて助かりましたけど。……まさか室長のバァーひとつで発砲するとは、夢にも思いませんでしたけど』

 抑揚なく小馬鹿にしてくるアイシャさん。
 やっぱり学習パターンは、お兄ちゃんがベースになってるに違いない。

「夢にもって……アイシャさんはA.I.じゃん……夢見ないでしょ?」

『機械でも偶に夢は見ますよ? ――ここは交通量も多く速度も出ていますので、もっと路肩寄りに走ることを推奨します』

 ビックリするようなことを抑揚なく告げると、いきなり注意を促してきた。

 そう、私はミニバイクなスクーターで大通りを走っている。
 原チャリの法定速度は、どんな道路でも時速三〇キロに制限されるときた。


 ぶっちゃけ、遅過ぎる!


 でも、国家権力に組する私が、緊急でもないのに交通違反をするわけにはいかないわけで。
 さっきから私の横を車がビュンビュン追い越していく度に、ちょっとビビってたり。

「アイシャさんみたいな格好良いバイクとか……せめてミニパトくらい私に支給してくれても良いのに! 嫌がらせか!」

『鈍臭い沙知巡査部長に高度な扱いが必要とされる乗り物や道具は絶対に無理。――と、断言しておきます。せいぜい自転車か原動機付自転車がお似合いですよ』


 今、めっさディス侮辱られた?


「むぅ……そりゃ……事故りまくった私も悪いけど……あんまりだよ」

『婦警時代から現在までの事故、或いは器物破損件数は所轄ダントツ一位で、警視庁始まって以来の悪意なき破壊魔が何をほざきやがるか。自律走行できて倒れない筈の私を転かして、めっさ壊したのは何処のどいつですか? ――絶対に忘れませんよ』

 結構、根に持ってるのね……抑揚なく言われると真面目に怖い。

「うう……それを言われると辛い……」

 そう、私は破壊魔の異名を持つ鈍臭さなのだよ……ぐすん。

 T.I.M.E.転属前にはミニパトを打つけまくって始末書の嵐。
 配属後にアイシャさんの本体であるモトロイドとの実地訓練で転かすわ壊すわ……。
 更に射撃訓練では銃の反動に負けて、明後日の方に弾丸が飛び、あわや大惨事になる所だった。

 結局、乗り物については婦警時代から愛用している市販のミニバイクなスクーターを徴収されて、そのまま私専用として利用することとなり、後はニューナンブな拳銃一丁と手錠くらいしか貰えなかったのです……。

 所持しているハイテク装備とか言って良いのは、アイシャさんとコンタクトできる腕時計のみときた。


 しかも弄ってる内に、既に二回も壊していたり……えへ。


『鈍臭いのをなんとかできれば、また乗せてあげてもやぶさかではありませんので。部署に帰ったら、シミュレーションと基礎からやり直しですよ、沙知巡査部長?』

「鬼か! アイシャさんは鬼か!」

『今は室長専用モトロイドに搭載の、単なるA.I.に過ぎませんけど? もう直ぐ私専用人型ボディも完成しますけど』

 抑揚なく自慢してくるアイシャさん。
 何故だろう。すっごいドヤ顔で言われてるイメージがリアルに伝わってくるよ……。

「羨ましくないもん! 帰ったら始末書も提出しないといけないのに……幸薄い人生だよ、うん」

 涙が出ちゃう……だって女の子だもん。

『臼井沙知巡査部長ですから、止む無しです。――上手くできたら飴あげます』

「飴って私は子供か! しかも慰めになってなーい!」

 プンスカ怒っている私は、できるだけ路肩に寄って、大通りをビクビク流し、アイシャさんのきっついスパルタ授業におどおどしつつ、部署へと帰るビビリちゃんだった――。



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