Dance in the Darkness. ―― Silence is mine.

されど電波おやぢは妄想を騙る

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Chapter.11

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 沙智が潜入捜査に身を置いたその日、また別の場所で事件が勃発していた――。


 船に荷を積み下ろしたりする、巨大なガントリークレーン等の施設が目立つ、そんな場所。


 そして今は真夜中――。


 闇夜にも等しい暗闇が辺り一帯を支配し、細波さざなみの音が静かに響き渡る中、似つかわしくない銃撃の音が木霊する――。


「悪いな」

 漆黒のコートに身を包み、その身形からは凡そ場違いな雰囲気を醸し出す土木用スコップを背中に背負っている男が一人、冷たい雨が燦々と降り頻るその中を、無人の野を歩くが如く静かに歩み進んでくる――。

「――ひ、怯むな! 撃て! 撃ちまくれ!」

 サングラスの男が命令を下すと同時に、取り囲む男達から一斉に乱射された!

 無数の小型自動拳銃から乱射された銃弾が冷たい雨を切り裂き、外壁を砕き地面を穿つほどに多角的に命を狩る凶弾となって、漆黒のコートを身に纏う男へと雨霰と降り注ぐ!


 乾いた射撃音と硝煙で曇る中、漆黒の男の周辺が視界を妨げるほどの破片と泥で埋め尽くされていく――。


「――や、やった……か?」

 最早、蜂の巣になり物言わぬ肉片に成り果ている頃合いだろうと、手をあげて射撃を制止するサングラスの男。


 だがしかし――。


「――な、なん……だと⁉︎ ――そんな馬鹿な⁉︎」

 サングラスを投げ捨て、裸眼で見ている有り得ない状況に戦慄し、震える声で吐き捨てる男。

 自動拳銃を乱射して全弾撃ち尽くした男共も、同様に戦慄していた――。


 視界を遮る破片に泥、硝煙が晴れていくその中に、漆黒の影が浮き上がる――。


「――倒せてないフラグを立てる台詞を口走るからだ」

 ただひたすら真っ直ぐに変わらぬ歩みを続けていた漆黒の男がそこに居た!

 迫る弾丸を意にも介さず、避ける動作すらもなく、コートに両手を突っ込んだままで。


「Goddamn!」「Sit!」「Oh my God!」

 次の瞬間、サングラスの男、取り囲んでいた有象無象らが持つ銃の全てが――、


 一斉に壊れて吹き飛んだ!


「な、何をした⁉︎ いや、それよりも貴様は一体⁉︎ 本当に――に、人間なのか⁉︎」

 銃が破壊された衝撃で、痺れて動かなくなった利き腕を押さえる男は、ただ静かに歩み寄ってくる漆黒の男に問い詰めた……。


 だがしかし――。


『Safety  unlock. Destroy mode Standing by――Complete』

 返事の代わりに聴こえたのは、抑揚のない機械じみた合成音声。
 呻き声と雨が叩きつけるその現場に木霊する――。


「それは――その銃は――ナ、ナイトメアだと⁉︎ ――き、貴様があの……漆黒の悪夢――む、現人うつしびとか⁉︎」

 漆黒の男が手にしている銃を目にするなり、狼狽して恐怖に怯え取り乱した!

「さあな? ま、気にするな。知ったところでどうにもならんよ」

 そう答え立ち止まった漆黒の男は、静かな緩やかな動作で銃口を男に向けた。

「俺には既に視えてる。とりあえずアンタは人としての人格が残ってる内に送ってやるよ。俺からの餞別だ――感謝しながら地獄に逝け」


 軽く言い捨てる漆黒の男の言葉のあと――、


『――Fire!』

 発砲を告げる抑揚のない合成音声と、怒号のような銃声が同時に響き轟いた!


 サングラスの男の眉間に特殊炸薬弾が命中し、そのまま膨らんだ風船が破裂でもしたかのように、脳漿や血肉を撒き散らし、木っ端微塵に吹き飛んだ!

 首から血飛沫を噴き上げ、膝が崩れてゆっくりと倒れ込む男の胴体。

「――遊びは終いだ。隠れてないでさっさと出てこい。この雨も冷たいんでな? さっさと終わらせて帰りたいんだわ、俺。風邪引いてまう」

 動かなくなった胴体に未だ銃口を向け、冗談っぽく台詞を折り混ぜ恫喝する漆黒の男。


 頭を失い首から噴水の如く噴き上がる血が揺らめいて、そこから黒い靄が現れる。

 次第に禍々しい気配を増大させ、死神のような化け物の姿を形取った。


 そして――。
 

『――クソ、ガ……ユルサンゾ……ウツシビト』

「それはこっちの台詞だっての。俺に手間を掛けさせんなよ」

 脇の専用ホルスターに銃を収め、代わりに背中のスコップを手にする漆黒の男。

「そんなおっさんに取り憑くなんて趣味も相当に悪いな? 俺だったら迷うことなく、たわわなお姉さんに取り憑くけどな」

 柄の部分を持ってクルリと回し、鋭い切っ先を水平から垂直に切り替えた。

「――ま、どうでも良いな」

 両手持ちの下段脇構えに構えると、その瞬間に姿が掻き消えた!


 燦々と降り注ぐ冷たい雨は、全く変わらずに地面を叩きつけていた――。


 その降り頻る雨が揺らいだ瞬間――、


 既に化け物を通り越した先に、漆黒の男が姿を現した。


「悪夢に巣食ってる割に、俺の視せる悪夢に簡単に喰われたな? 実際、この程度にも対応すらできんとは……今回もハズレ。結局はモブはモブってことだな」

 振り返りもせず土木用スコップを背中に戻し、呆れた物言いで告げた漆黒の男。

『グハァ! オノレ、オノ――』

 賽の目に斬り刻まれた化け物が、断末魔の咆哮と共に霧散し、砕かれた部位が昏き闇へと溶けるように、雨に打たれる地面に染み込んでいった――。

 化け物が霧散したあと、漆黒の男を取り囲んでいた厳つい連中も、意識を失ってその場に次々と倒れ込んだ。


「あと宜しく~」

 頭上に腕を翳し、ハンドシグナルで指示を送る漆黒の男。


 建物の影に潜んで待機していた別働隊が直ぐに周囲を取り囲むように駆け付け、倒れている連中を拘束し連行していった。


「さてと――沙知は人生二回目の高校生活をエンジョイできてるかな? 友達百人できるかなってな? ――沙知のことだ、天然ボケ全開で敵を百人作って、容赦なさげな状況に陥って愚痴りまくって泣いてるかも知れんが。――まぁ、その辺りはミミが根回ししてるし、沙知の信者共が随時監視、アイシャとエリーも居て、直接、警護してるし大丈夫――否、余計にややこしい事態になる大惨事の予感しかしねぇのな? 始末書の山脈と樹海に埋もれそうなのは気の所為だろうか……」

 雨が燦々と降る頭上を見上げ、そんなことを呟いていたのだった――。



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