Dance in the Darkness. ―― Silence is mine.

されど電波おやぢは妄想を騙る

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Chapter.10

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「今日から姉と一緒にお世話になります、臼井巡――違った。純真無垢な臼井沙知です。名前からして幸薄いですけど、断じて皆さまを不幸にしたりしませんので、どうか仲良くして下さい!」

 教室の壇上に上がり、握り拳で私っぽい挨拶を一生懸命に披露してみた。

 私の名前を使った自虐的自己紹介。
 所轄に配属される際、こうやったら大ウケだったから。


 だがしかし――。


 悲しいかな私の努力虚しく、私を見る生徒らはドン引きになっちゃいました。


 何がいけなかった⁉︎ 


「愚民の皆さま、ご機嫌好う。姉の臼井愛に御座います。下衆な身分でありながら、私を存分に愛でることを許して差し上げます。心より崇め奉って宜しくてよ」

 上流階級のお嬢様も舌を巻く、気品ある挨拶を披露するアイシャさん。

 スカートの両側をちょこんと掴んでの優雅な素振り。
 物言いは人を見下す酷い言い草で。


 なんつー高圧的な自己紹介するんですか⁉︎


「そしてこの愚妹。ご迷惑と言うか、悪意なき破壊を天然で炸裂させるかと思いますけれど、私には、一切、責任も関係もありません。その際は見て見ぬフリをせず、容赦なく蔑み踏みにじってやって下さいまし」

 更にドン引きさせた私のフォローも続けて発言した。


 なんつー哀れな紹介してくれるんですか⁉︎


「アイ――愛姉さん、酷くない⁉︎」

「お黙り、愚妹! 皆さまに媚び諂い奉仕するのが貴女のお役目。駄肉しか能のない貴女には良くお似合いでしてよ。おーっほっほっほ」


 ちょっとちょっと、アイシャさん⁉︎
 過剰過ぎる演技と言うか、本音が混じってやいませんか⁉︎ 
 割と真面目に悲しくなるんですけど⁉︎
 それにですよ?
 そんな紹介をしたら、私みたいにドン引きさせてしまうでしょ⁉︎


 ところが――。


「悪役令嬢――初めて生で見た。尊い」

「クソ姉妹じゃん、ウケる~」

「似てはいないけど……解る気がする」

「ねぇねぇ……凄くない? 天然かな? 人工かな?」

「あゝ……お姉様に踏まれたい……」


 とかなんとか。
 概ね大好評って……今時の高校生の感性が年増な私には解らないや……。

 でも、約一名、私にもわかる不穏当な台詞を口走っておいでだけども。


「ご機嫌好う。私は今日より副担任を仰せつかりました、エリー・テッキ・ワコーロスに御座います。エリーとお呼び下さいませ。主に愛様、ついでに沙知様の勉学と御交友を育むお手伝いのお供で参りました。ゆえに副担任とは名ばかりであることを、先に謝罪しておきます」

 メイド服に身を包んだエリーさんが、優雅に挨拶を披露する。


 敵は殺すって苗字もだけど、わたしはついでって――色々と酷くないですか?


「「「――え⁉︎ メイドの先生⁉︎ いつの間に⁉︎」」」

 突如、私とアイシャさんの後ろに立つように姿を現し、生徒の皆さんに殺気を飛ばしてしれっとご挨拶をした所為で、ほぼ生徒さん全員が目を丸くして戦慄していたり。


 また気配を殺して認識阻害とかしてましたね、エリーさん?
 私の中で貴女は、凄腕の暗殺者か忍者で確定されました。


「諸君、こちらのエリー先生のお手を煩わすようなことだけは絶対にしないように! 絶対だからな! 絶対だぞ! あと勿論だが、転校生二人とは仲良くするように! 学校命令だからな!」

「「「が、学校命令⁉︎ な、何者⁉︎」」」

 またしても戦慄する生徒さん全員から、妙な視線を向けられた……。


 だがしかし――。


 一番奥の席に座っていた女生徒だけは、全く動じずに睨みつけるように私達を見やっていた。


 今回、私が背後関係を洗う、コードネームアバズレちゃんだ。

 陰で色々とやらかしていると、諜報部の方から教えてもらっている。

 アバズレちゃんの朝起きてから夜寝るまで分刻みの行動パターンに加え、スリーサイズに好み、付き合いのある男子とのキャッキャウフフの回数までを緻密に調べ上げた強者さんだ。


 完全に犯罪行為じゃん?


 余談だけどマル秘身辺調査は未だに続いていて、それを持って毎日会いに来てくれる、何気にキモ――怖い方です、はい。


「では……席はあそこだ」

 担任の先生に指示された席は、アバズレちゃんの直ぐ後ろと右隣りだった。

 壇上から席に移動する私達。

『沙知巡査部長――解っているとは思いますけど、こちら素性が絶対にバレないように細心の注意を払って下さい』

 私のピアスを通してアイシャさんから通信が入る。
 
「後ろに失礼します。色々と宜しくお願いします」

 丁寧にご挨拶しておく私。

「チッ――こちらこそ、宜しく」

 小さく舌打ちしたあと、作り笑いで応じるアバズレちゃん。

 性格もマル秘に記載されていたまんまの、外面は良くて中身が真っ黒。

 ただ腹黒い女ってだけでもなく、全身から異様に禍々しい気配も放っている。

 アイシャさんにしてもアバズレちゃんの隣の席に着き、授業が始まった――。


 後ろの席に着いた私は、前の席に座るアバズレちゃんを背後からとする。


 目を閉じて深呼吸を一つすると、アバズレちゃんを意識してる。


「この感じ――」

 お兄ちゃんの不思議な視る力のように、私にしても知る力が備わっている。

 私の場合、直接戦闘よりも情報収集に向いているだけの単に言葉通りの異能。


 隠された真実を視抜き知り得るだけ。


 不甲斐ない私が巡査部長職でT.I.M.E.に配属された理由がそれだった。


 でもその行動が迂闊だったと、あとで思いれることになるとは、この時点では思ってもいなかった――。



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