流行りの異世界――転生先が修羅場で阿鼻叫喚だった件について説明と謝罪を求めたい。

されど電波おやぢは妄想を騙る

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第六幕。

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「しかし……貴女の美しさに比べて私のナリときたら……自分で見てもゾッとする。――良くもこの状態で生きていられるなと改めて思う」

 紅き竜の美し過ぎる透き通るほどに白く艶のある肌から、自分の胸と腹に開く大穴に視線を落とし、右手で左肩を摩ってあからさまに落胆する。

 左肩から下がない、右腕のみの身体。
 心臓はなくなっているし、内蔵も開いた大穴から丸見え。
 油断すればきっとまた腸が飛び出て、金魚の糞状態のことだろう。
 なんの嫌がらせだよ、全く。

「確かにの。先にも言うたが、今は生きておることで良しとしておけ。――儂の知り合いにその手のことにやたらと詳しいのがおるゆえ、あとで彼奴あやつに頼んでやろう」

「――済まない」

 左肩を力なく摩る私の右手に、華奢な右手をそっと重ねて励ましてくれた。

「して、其方。儂を癒した先ほどの神秘の力、自分に試してみてはどうかの?」

 縦に細い瞳孔の独特の金眼で右手を見る。

「――物は試しか。やってみよう……こんな感じだったか?」

 右手を広げて腹の上に翳す――のだが。

「――ふむ、駄目だの」

 握った手を顎に添えて首を傾げつつ、簡単に諦めた口調で言ってくれた紅き竜。

「なんなのだ、私はっ! 何故こんな惨たらしい姿で生かされねばならんのかっ! 元いた世界で私が何かしでかしたのかっ! その罰とでも言いたいのかっ! もしくは嫌がらせかっ! 呪いでもないのにこの状態が普通って、絶対に変で異常だろっ! 私がこんな仕打ちを受ける謂れはない筈だっ! 全くもって意味が解らんっ! 誰だよ、私をこんな目に合わしてくれる奴はっ! 神か、悪魔かっ! 呪うぞっ! ここに来させた誰かっ! 私に解り易く丁寧に説明すると同時に、直視できない酷い身体にしたことに対し、誠心誠意で謝罪しろっ! ――はぁはぁ」

 自分の意思で発動できない謎の力に、一体、なんの意味があると言うのか。
 不満が一気に爆発した私は、天井に向かって怒鳴りつけてしまった。

「そんな勢い任せに儂に言われても……知らぬ。自然に治りもせぬようだしの。お気の毒様とだけ、言っておくべきかの?」

 私の肩をポンポンと軽く叩いて、優しく諫めてくれた。

「はぁはぁ……済まない。ふぅ……少し取り乱した」

 文字通り、腸が飛び出そうな勢いで取り乱してしまったことに深く謝罪する。
 不満を吐き出して、少しだけ気分がマシになった。

「良い。気持ちは解らんでもないでの? ほれ、湯船に早う浸かれ」

 私をクルリと回し、湯船に向け追いやる紅き竜。

「これが――私の姿か――」

 その際、湯に映る私の姿が目に入った――。
 少し細身だが、ガッチリした筋肉で構成された胸板ではあった。
 左胸と腹には例の大穴が開いていて、見える筈の心臓もなく、油断すれば腸がはみ出す惨たらしい姿だ。
 湯船にその姿を映し見ている目は、割にキリっとしている。
 やや色白の顔にしても、目鼻がハッキリとした美男子にも等しい。
 耳に掛かる程度の艶々とした黒髪だった。

 ただ、元々からその顔や姿だったのかが解らない私は、顰めっ面をして湯船に浸かるのも忘れて黙り込み、呆然と立ち尽くしてしまった――。

「――ん? 元々の其方の姿と違うておるのか? よもや姿までもが変わっておったのか?」

 そう問いながら、頭から湯を被せてくる紅き竜。
 数回、湯を被せられて我に返る私。

「紅き竜よ。それがだ、元居た世界での自分の顔が思い出せない。なのに、ハッキリ違う顔だったと言うことだけが解る――なんとも気味が悪く滑稽な話だよ……」

 紅き竜にされるがままで話す私。

「――そうか。儂には人の顔なんぞ、まして良し悪しは見分けられぬ。この世界で其方自身と長い付き合いになる自分の顔だ。不細工と思わなければ、それで良しとしておけ」

 更に数回、湯を被せて綺麗に洗い流してくれると、湯船から出て洗い場に行き、手招きで私を呼ぶ紅き竜。

「そうする。蛙が潰れたような酷い顔とか、目玉が飛び出してぶら下がってないだけ良かったと、今はそう考えておく……」

 呼ばれるまま、紅き竜が招く場所に力なく腰を落とす。
 頭から何か良い香りのする液体――恐らく石鹸とかの類いを被せられ、ゴシゴシと洗われた。

「それで良い。気落ちしても得る物は何もないでの? ――ほれ、こっちを向け。洗えん」

 両肩を掴まれクルリと回して、紅き竜の美しい裸体に対面する形にされて、再び洗いだした。

「――済まない。少し気恥ずかしいが……お言葉に甘えて世話になる、紅き竜よ。よもや古の竜たる貴女にさせることではないとは思うのだが――本当に済まない」

 なすがままに洗われていく私は、心ばかりではあるが、感謝を込めた謝罪を述べておく。

「――気にするでないとずっと言っておろうが? ――其方はどうあっても阿呆の子で通すのか? 後ろばかり気にしておっても良いことはないぞ? 前を向いて、これからのことをしっかり思案するが良い。――今は儂の駄肉でも堪能して気を紛らわせておくが良いであろう、ほれほれ」

 小馬鹿にはするも、やはり優しく丁寧に洗ってくれる紅き竜。
 片腕ではここまで丁寧に流せはしないだろう。
 とても気持ち良く、先ほどまでの鬱憤うっぷんが晴れていく――。

 ただ、本当に目のやり場に困ってしまう。
 腫らさないように必死に頑張り耐えるとしよう――心頭滅却、煩悩退散。
 意図は違うが、お陰で気が紛れたのは言うまでもない。
 色んな意味で、有り難う。
 今はそう思っておくだけにする――。

「――それにな? 儂にしてもだ、話し相手が得られて、少々、喜んでおるのだぞ? しかし……本当に摩訶不思議だの」

 胸と腹の大穴に視線を落とし、複雑な表情をする紅き竜。
 気が沈んだ私を気遣って、それ以上は深く触れずにいてくれた。
 傷に当たらないように甲斐甲斐しくも、最後まで丁寧に全身を洗い流してくれるだけでなく、励まして癒してもくれた――。

 そんな、人以上に美しくも心優しき紅き竜に、自然に心奪われていくのだった――。



 ――――――――――
 気になる続きはCMの後!
 チャンネルは、そのまま!(笑)
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