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第二六幕。

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『ぐはァ――!』『ひぎィ――!』

 だが、次の瞬間には、驚愕の表情のまま悲鳴を上げて、床に叩きつけられ突っ伏していた――。

『……な、なニ⁉︎』『……嘘だロ⁉︎』

「手荒な事をして済まない。怪我をさせない様にと配慮はしたが……嫌味では無いので、本当にそこは誤解しないでくれ』

 襲撃者の二人から最も簡単に奪い取った武器を、そう告げて窓から投げ捨てる私。

 襲われた瞬間から、一連の動作が有り得ない程に遅く見えたのだ。
 ゆっくりと近付いて来る二人から武器を取り上げ、背中を押し込んで床につけた後、窓際に戻ると体感速度が今の状態に戻ったのだ。
 そしてその直後、襲撃者の二人が驚く程の勢いで、床に叩きつけられる様に突っ伏して悲鳴を上げるものだから、私の方が逆に驚いてしまったくらいだ。

「紅の力を封じている何かを解除してくれないか? 応じてくれなければ、行き過ぎた悪戯は諌めねばならない。外の数人を全てお仕置きするのは手間だし願い下げなんだけど……」

 心にも思っていない全くの嘘だった――所謂、ハッタリ。
 その証拠に身構えもせず、武器すら手にしていない。今は。

『つつッ……』『ふ、巫山戯た真似ヲ……』

「抵抗はしないでくれ、頼むから。言いたい事はちゃんと聴く。取り敢えず座ってくれ」

『煩イ、死ネ!』『――ま、待テ!』

 静止する連れの言葉にも聴く耳持たずに、激昂した勢いで武器も無く飛び掛かって来た、恐らく血の気が多く短気な襲撃者。

『がはぁーッ!』『――なッ⁉︎』

 面倒臭いので窓から捨てた私。
 
『――くッ、これほど迄とハ。解っタ、提案を飲もウ』

「助かる。少々殺気を孕んではいるが、策略とは無関係で単に私に絡んで来ている――単に試して遊んでいる、と言った所か? そんな印象を受けた。合っているか?」

『――⁉︎ そこ迄お見通シ⁉︎ 参ったナ』
 
「お仲間を連れてくるなら待っている。勿論、逃げてくれても私は追わないと約束しよう」

『――これで逃げたラ、流石に無様すぎル! 仲間に笑者にされル!』

「そうか。ならば仕方無い」

 ゆっくり立ち上がり、私を警戒しつつ窓に近寄って何かの合図を送っている眼帯の襲撃者。
 暫くすると、落とした襲撃者を含む四人が、部屋の窓から入って来た。
 合計で五人の襲撃者が警戒を解かず、床の上で各々自由に座っている。

「さて、本題に入る前にだ、私の最愛の妻、紅の力を削いだのは誰かい?」

『はッ、おれだ――ぐはァ!』

『『『『えッ⁉︎』』』』

 部屋の天井に減り込んで、首から下を振り子の様にぶら下げて気絶した様だ。

「済まない――気分の悪い害虫が居たので」

『『『『は、はいッ!』』』』

「――さて。話を聴くとしよう。幼い子供達に呪いを放ったのは君等か?」

『ご、ごめんな――ぐはァ!』

 部屋のドアを打ち破り、勢い余って廊下に突き刺さり、もれなく気絶した様だった。

「済まない――実は左腕は義手なんだが、どうにも動作不良を起こし気味でな? 時々勝手に暴れるんだ。以後、気を付ける。――そうそう、話しの途中で申し訳無いんだが、左腕が正常かどうか確認する為にも、宝剣を振ってみるが……まぁ、気にしないでくれ」

『『『は、はいッ!』』』

 そう語りながら、腰の宝剣を外し、鞘に収まった状態で左手に携え、上段構えから振り落とす私。

 何故か正座で神妙にしている襲撃者。
 宝剣を軽く振ったにも関わらず、突風が巻き起こり襲撃者を煽った!
 長い髪が大きく棚引き、座った姿勢が崩れる。
 
「さて君等――連帯責任って言葉を知ってるか?」

 私からその言葉を聴いた瞬間、残りの襲撃者の顔は、一気に蒼褪め、凍りついた――。



 ――――――――――
 気になる続きはCMの後!
 チャンネルは、そのまま!(笑)
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