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第二七幕。
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『『『ずびばぜんでじだ……』』』
結局、簀巻きにされた襲撃者の面々。
至る所を漫画みたいに腫らした滑稽な姿で、私に謝罪した。
「私が殺す気だったなら、既に抜身で斬っている。言ってる意味は理解してるか?」
紅の力を削ぐ魔導具を左手で握り潰し、襲撃者に問い掛ける私。
私を狙った事に対しては不問とするも、罪の無い子供達を巻き込んだ事と、紅に不敬を働いた事だけは許せなかった。
幸いにして大事に至らずに済んだが、一歩間違えば、大変な事態に陥っていた。
それでも命迄は取らず、キツいお仕置きに留める私だった。
「して主人よ、身の熟しが見違えたの。やはり試練の間と言うのは、そこ迄磨きが掛かる程に過酷であったのか?」
私が飛んでくる矢を掴んだり、襲撃者を懲らしめた手際等に興味を持った紅は、感心半分、疑問半分の複雑な表情で尋ねてきた。
「ん? 簡単では無かったが、然程でも無かったよ? 強いて言うなら……自分が試されるのでは無く、自分を試したと言った感じだ」
試練の間で魔物と遣り合う内に、すっかり剣の扱いや体捌きを学んだ私。
我流では無く、この身体に染み付いていた剣技や動きの癖を、数日にも及び酷使した結果、何とか読み解いて理解し自分の物にしたのだった。
「――おかしな事を申すのう。まぁ、良い。して此奴等は何とする? やはり処分か?」
『『『――⁉︎』』』
紅の不穏当な言葉を聴き、蒼褪める襲撃者達。
「否、性根迄は腐ってないと思う。暗殺する気ならもっと陰険な手を使うだろうし。――君達からは何故かそんな感じがしない。特に君は人を殺めた事が無いんだろう?」
眼帯の女性襲撃者に視線を移し、確信を持って告げる私。
何だろう……この女性からはそう言った類いの気配と言うか、全く感じられ無い。
物言いは雑だが、何処か気品がある。
『――お見通しカ……そうダ、笑いたくば笑エ……』
一瞬、カッと目を見開くも、直ぐに消沈してしまった。
「魔王の手下にしては……実際、弱すぎるし」
私はつい思った本音を口にしてしまう。
『――ナ⁉︎ 妾を愚弄するカ! お、お前が強すぎるんダ! 人は……確かに殺めた事は無いガ……それでも、妾は仲間内では一番強かっタ!』
簀巻きにされて、自由に動けない身でも、心外だと必死になって抗議してきた。
「私如きが強過ぎるって? 可笑しな事を言うもんじゃない。私は試練の間において、生まれて初めて剣で戦ったんだよ?」
嘘は言っていない。
少なくとも、この異世界に誘われてからは、正しく試練の間が初めてだ。
それ以前はどうだかは解ら無いけど。
『――そ、そこまで愚弄するカ!』
勘違いして、激昂する眼帯の女性襲撃者。
「嘘は言ってい無い。本当に私は初めてだ」
但し、私の身体は歴戦の騎士だったんだろうけど。
「さてと――ふぅ。悪事を働いた事実に変わりは無い。実際、どう処罰するのが適切なんだろうな?」
話を切り上げて、どうしたものかと溜息を吐くと、やや困り顔で紅を見る。
『――くッ、殺セ! 生恥を晒すくらいなラ、死んだ方がマシだヨ!』
私の呟きを拾った眼帯の女性襲撃者は、睨みを利かせた顔で、吐き捨てる様に言い放った!
「気は進まないが……ご希望に応じて、そうしよう――」
予備動作も無く、いきなり左拳を顔の前に繰り出した私。
渾身の力――本気を出しているので、殴られれば吹っ飛ぶ所か頭が砕け散る――そのぐらいの殺意を籠めて容赦無く放った。
『――ッ⁉︎ ……って、あレ? ア……』
だが、頭が吹っ飛ぶ事も無く――。
目と鼻の触れるか触れないかの所で、寸止めをする私。
余りの拳圧に長い黒髪が流される。
どうやら死を覚悟している割には、本心ではそうで無かったみたいだった。
粗相を遣らかしてしまう程には怖かった模様。
――やはり戦い慣れしていないご様子。
「今迄の虚勢を張った威勢の良い君は、私の今の一撃で死んでしまった。人前、まして異性の前で、粗相なんて……武人には有り得ないよ……ねぇ?」
『……くッ』
「主人よ……中々にと言うか、些か過ぎたドSであるな……しかも活き活きとした表情とはの。わ、儂も主人を怒らさぬ様に努めるとするかの……」
「冗談はさておき、今のでお仕置きは終わり。――で、君に相談があるんだが……私に雇われないか?」
「――は?」『――ハ?』
「そんな、驚かなくても良いのでは?」
『命を狙ったんだゾ! ――意味が解らなイ、意味ガ!』
「儂も遺憾ではあるが同意ぞ、主人?」
「恐らく理由があって私に絡んできた。そして君は戦い慣れしていない。後は顔の傷。――無理遣りに利用されたか、復讐に使う手駒が欲しく試したか。大体、そんな所だろ? 素直に従ってくれれば、絶対に悪い様にはしない」
『――くッ』
『姐さン――元より我らの負けダ。事情を包み隠さず話してみよウ――ゆ、勇者様、ご無礼いたシ、本当に申し訳ありませんでしタ』
「謝る相手が違うと思うな? 紅と子供達、そして……村の人達に、だろ」
殺気を飛ばして睨み付ける私。
『――の、後程……か、必ずや謝罪ヲ』
身震いして返答する眼帯の女性襲撃者に進言した痩身の襲撃者。
「儂は主人に従う迄よ。主人が許すのであれば儂も許そう。――して貴様等、事情とは何ぞ? 魔王絡みであるのか?」
『我々の隠れ里……なのですガ、魔王の御使いと戯言を吐かす不埒な輩ガ――』
淡々と事情を語り始める襲撃者の一人。
聴けば嫌悪感が凄まじい内容だった――。
――――――――――
気になる続きはCMの後!
チャンネルは、そのまま!(笑)
結局、簀巻きにされた襲撃者の面々。
至る所を漫画みたいに腫らした滑稽な姿で、私に謝罪した。
「私が殺す気だったなら、既に抜身で斬っている。言ってる意味は理解してるか?」
紅の力を削ぐ魔導具を左手で握り潰し、襲撃者に問い掛ける私。
私を狙った事に対しては不問とするも、罪の無い子供達を巻き込んだ事と、紅に不敬を働いた事だけは許せなかった。
幸いにして大事に至らずに済んだが、一歩間違えば、大変な事態に陥っていた。
それでも命迄は取らず、キツいお仕置きに留める私だった。
「して主人よ、身の熟しが見違えたの。やはり試練の間と言うのは、そこ迄磨きが掛かる程に過酷であったのか?」
私が飛んでくる矢を掴んだり、襲撃者を懲らしめた手際等に興味を持った紅は、感心半分、疑問半分の複雑な表情で尋ねてきた。
「ん? 簡単では無かったが、然程でも無かったよ? 強いて言うなら……自分が試されるのでは無く、自分を試したと言った感じだ」
試練の間で魔物と遣り合う内に、すっかり剣の扱いや体捌きを学んだ私。
我流では無く、この身体に染み付いていた剣技や動きの癖を、数日にも及び酷使した結果、何とか読み解いて理解し自分の物にしたのだった。
「――おかしな事を申すのう。まぁ、良い。して此奴等は何とする? やはり処分か?」
『『『――⁉︎』』』
紅の不穏当な言葉を聴き、蒼褪める襲撃者達。
「否、性根迄は腐ってないと思う。暗殺する気ならもっと陰険な手を使うだろうし。――君達からは何故かそんな感じがしない。特に君は人を殺めた事が無いんだろう?」
眼帯の女性襲撃者に視線を移し、確信を持って告げる私。
何だろう……この女性からはそう言った類いの気配と言うか、全く感じられ無い。
物言いは雑だが、何処か気品がある。
『――お見通しカ……そうダ、笑いたくば笑エ……』
一瞬、カッと目を見開くも、直ぐに消沈してしまった。
「魔王の手下にしては……実際、弱すぎるし」
私はつい思った本音を口にしてしまう。
『――ナ⁉︎ 妾を愚弄するカ! お、お前が強すぎるんダ! 人は……確かに殺めた事は無いガ……それでも、妾は仲間内では一番強かっタ!』
簀巻きにされて、自由に動けない身でも、心外だと必死になって抗議してきた。
「私如きが強過ぎるって? 可笑しな事を言うもんじゃない。私は試練の間において、生まれて初めて剣で戦ったんだよ?」
嘘は言っていない。
少なくとも、この異世界に誘われてからは、正しく試練の間が初めてだ。
それ以前はどうだかは解ら無いけど。
『――そ、そこまで愚弄するカ!』
勘違いして、激昂する眼帯の女性襲撃者。
「嘘は言ってい無い。本当に私は初めてだ」
但し、私の身体は歴戦の騎士だったんだろうけど。
「さてと――ふぅ。悪事を働いた事実に変わりは無い。実際、どう処罰するのが適切なんだろうな?」
話を切り上げて、どうしたものかと溜息を吐くと、やや困り顔で紅を見る。
『――くッ、殺セ! 生恥を晒すくらいなラ、死んだ方がマシだヨ!』
私の呟きを拾った眼帯の女性襲撃者は、睨みを利かせた顔で、吐き捨てる様に言い放った!
「気は進まないが……ご希望に応じて、そうしよう――」
予備動作も無く、いきなり左拳を顔の前に繰り出した私。
渾身の力――本気を出しているので、殴られれば吹っ飛ぶ所か頭が砕け散る――そのぐらいの殺意を籠めて容赦無く放った。
『――ッ⁉︎ ……って、あレ? ア……』
だが、頭が吹っ飛ぶ事も無く――。
目と鼻の触れるか触れないかの所で、寸止めをする私。
余りの拳圧に長い黒髪が流される。
どうやら死を覚悟している割には、本心ではそうで無かったみたいだった。
粗相を遣らかしてしまう程には怖かった模様。
――やはり戦い慣れしていないご様子。
「今迄の虚勢を張った威勢の良い君は、私の今の一撃で死んでしまった。人前、まして異性の前で、粗相なんて……武人には有り得ないよ……ねぇ?」
『……くッ』
「主人よ……中々にと言うか、些か過ぎたドSであるな……しかも活き活きとした表情とはの。わ、儂も主人を怒らさぬ様に努めるとするかの……」
「冗談はさておき、今のでお仕置きは終わり。――で、君に相談があるんだが……私に雇われないか?」
「――は?」『――ハ?』
「そんな、驚かなくても良いのでは?」
『命を狙ったんだゾ! ――意味が解らなイ、意味ガ!』
「儂も遺憾ではあるが同意ぞ、主人?」
「恐らく理由があって私に絡んできた。そして君は戦い慣れしていない。後は顔の傷。――無理遣りに利用されたか、復讐に使う手駒が欲しく試したか。大体、そんな所だろ? 素直に従ってくれれば、絶対に悪い様にはしない」
『――くッ』
『姐さン――元より我らの負けダ。事情を包み隠さず話してみよウ――ゆ、勇者様、ご無礼いたシ、本当に申し訳ありませんでしタ』
「謝る相手が違うと思うな? 紅と子供達、そして……村の人達に、だろ」
殺気を飛ばして睨み付ける私。
『――の、後程……か、必ずや謝罪ヲ』
身震いして返答する眼帯の女性襲撃者に進言した痩身の襲撃者。
「儂は主人に従う迄よ。主人が許すのであれば儂も許そう。――して貴様等、事情とは何ぞ? 魔王絡みであるのか?」
『我々の隠れ里……なのですガ、魔王の御使いと戯言を吐かす不埒な輩ガ――』
淡々と事情を語り始める襲撃者の一人。
聴けば嫌悪感が凄まじい内容だった――。
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