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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード53-10

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国分尼寺魔導高等学校 2-B教室 次の日――

 ジュンテンドースイッチのログイン権獲得の為、美千留の機嫌を取るミッションを達成し、見事に成功した静流。
 静流はミッションの成功に尽力してくれた蘭子に、ログインの許可報告と共にあるソフトを渡した。 

「こ、これって、『あつ森』じゃねぇかよ!?」

 ソフトを見た蘭子の脳裏に、いろんなイメージが湧いて来た。

(これはチャンスだぞ。 お静とファミリーになるか? いや待て、 お静を配下に置くのも悪くねぇな。 政略結婚とか? クヒヒヒ……)

 ニヤついている蘭子に、静流が話しかけた。

「……でね、 やり方なんだけど……お蘭さん?」
「へ? わかってるって。 お静を『嫁』にもらえばイイんだろ?」
「何言ってるの? 『嫁』って?」

 今一つ蘭子の言ったことがわからなかった静流は、首を傾げた。 

「へ? ぎゃぁぁ! 違う違う! 『あつ森』の中の話だ!」 

 蘭子は、顔を真っ赤にして手をバタバタさせながら言い訳した。
 そんな態度に、真琴は溜息をついた。

「蘭ちゃん、 心の声がダダ漏れだったよ?」
「もとい! 領土を広げる為に有能な部下をヘッドハンティングしたりするだろ?」
「ああ、ゲーム内の話ね? このゲームの内容知ってるの? それなら話が早いや♪」

 静流はケースから説明書を取り出した。

「お蘭さんには、 シズムと『五分の盃』を交わして『義姉妹』になって欲しいんだ」
「な、 なん……だと!?」

 急な展開に、蘭子は付いていけなかった。

「イヤならシズムのシマの若頭の美千留か、 その子分の僕か真琴と杯を交わすって事になるから、序列は下がるけど……」

 静流の説明に、達也はツッコミを入れざるを得なかった。  

「おい静流、 お前、 シズムンの下のミッチーの子分なのか?」
「しょうがないよ。 許可条件の一つなんだから……」
「あたしはただ、数合わせに使われただけだし?」
「けっ、 情けねぇなぁ……」

 達也はそう言ったが、少し羨ましそうだった。

「あと桃魔の部室用にもう一枚持って来てるから、 放課後にセットしようかと思ってるんだ」
「わかった。 何処に所属するかは少し考えさせてくれ」

 そう言って蘭子は、即答を避けた。



              ◆ ◆ ◆ ◆



桃魔術研究会 第二部室 睦美のオフィス兼カナメのラボ 放課後――

 放課後、静流たちはジュンテンドースイッチがある睦美のオフィスに足を運んだ。
 静流について来たのは、達也、真琴、蘭子、シズムだった。

「お疲れ様です!」 
「よぉ静流キュン! 何や儲け話か?」
「いえ。 残念ですが違います」

 最初に話しかけて来たのはカナメだった。
 ソファーに寝そべり、コントローラーを手にしている。
 画面には、往年の巨大ロボットアニメの主役メカ同士が対峙していた。

「あ!『スーパーロボット戦記』ですね? 面白そう」
「チッチッチ、 ただのスパロボでは無いんよねコレが。 ほれ」
「うん? え? うわぁ……」
 
 カナメにそう言われ、画面をよく見ていると、何やらおかしいことがわかった。
 画面では男性型ロボットが女性型ロボットに接近戦を挑んでいた。
 その画面に一番早く食いついたのは達也だった。

「おぉ!『軟鉄ジーグ』が『アフロダイG』のふくよかなお胸を揉みしだいている!」 
「あとは信管のビーチクをイジれば、ドカーンやで?」

 カナメは達也にドヤ顔で言った。

「ほれ、おイキなさい!」プチ

 ド、ドォーン!

 カナメが言った通り、アフロダイGの胸部ミサイルが暴発し、戦闘不能となった。

「ふっふっふ。 これはな、この間コミマケで入手した同人ソフトやねん」

 得意げにソフトのケースを見せて来たカナメ。

「何々? 『ドキッ! 女性型ロボットだらけのスーパーイチャコラ大戦! ポロリもあるよ!』だとぉ!?」

 達也がやけに興奮しながら、ソフトのケースを見ている。

「けしからん! 実にけしからん!」
「驚くのはまだ早い! バトルに勝つと、 搭乗者ともヤレるシステムなんやぞ?」
「何だと? じゃあ『サヤカ嬢』とあんな事や、 こんな事が?」
「もちのロンや! グヒヒヒ」

 興奮したカナメと達也が、手をわきゃわきゃさせている。
 するとデスクでいつものポーズをしている睦美が、少しイラつきながらしゃべり出した。

「済まない静流キュン、見苦しい所を見せたね。 カナメ! とっととそのおぞましいソフトをしまえ」
「ほぉーい……」
「え? もうお終い? そんな殺生な……」

 睦美にそう言われ、カナメは口をとんがらせながら、途中でゲームを終わらせた。
 それを残念そうに見ている達也だった。
 静流が睦美に話しかけた。

「それで睦美先輩、 ココに来た理由なんですけど――」

 そう言って静流がメッセンジャーバッグをまさぐっていると、それを待たずに睦美が言った。

「みなまで言わなくてもわかる。 キミが来た理由、 それは……コレだろう?」

 睦美が得意げに一冊の本を静流に見せた。

「あ! 『あつ森』の攻略本!」
「キミたちが来る前に、予習は済ませてある」
「いつもながら、 流石ですね……」

 ドヤ顔で親指を立てる睦美に、静流は苦笑いした。



              ◆ ◆ ◆ ◆



 静流は、シズムがオフィシャルな理由でこのソフトを使用する事になった経緯を睦美に説明した。

「成程な。 シズム嬢のゲーム実況か」
「ええ。配信とかがあるので、匿名性を重視しないとマズいんです」
「フム。 どうした物かな……」

 睦美は少し考え、静流に言った。

「静流キュン、『塔』のハードは特殊な仕様だったね?」
「そうか。あそこのゲーム機なら、スイッチのソフトも読めるな」
「お姉様たちにも参加してもらうか?」
「うわぁイイですね。 面白そう♪」

 静流がワクワクしながら睦美と話していると、蘭子が割り込んできた。

「お静、って事はアネキも参加するのか?」
「多分? と言うか絶対首を突っ込んでくるね?」
「そうか。 アネキが……」

 そう呟いた蘭子は、真剣な顔で静流に言った。

「だったらアタイは、ソッチに属したい!」
「オッケー、わかった♪」
「イ、イイのか?」
「勿論! あとで移籍する事も可能だし、寝返りとか裏切りとかね♪」

 そう言って静流は、あっさりと蘭子の要求を受け入れた。

「静流、結構楽しんでるよね? 昨日は仕方なくって感じだったけど」
「面白そうじゃない? みんなでワイワイやるのって♪」

 真琴が意外にノリノリの静流にそう言うと、静流はニッコリと笑った。

「僕的には、抗争とかは置いといて、誰かの事務所に『おいちょかぶ』とか『こいこい』をやりに行ったりしたいなぁ♪」
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