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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード55-16

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ファミリーレストラン『天下布武』――

 追試の結果報告と今後の計画を話し合うために、静流たちは先に来て達也たちを待っていた。
 ここでウェイトレスのバイトをしているヤス子と話している内に、三人が入って来た。

「おい蘭の字、追試はどうだったんだ?」
「ヤス! バッチリだぜ!」グッ

 蘭子はそう言ってヤス子に親指を立てた。

「おめぇらはどうだったんだ?」
「もち、 バッチグーだぜ!」グッ
「ツッチーにはハラハラさせられたケドね♪」
「お前が言うか?」

 ヤス子の問いに、達也とイチカが親指を立てて応えた。

「良かったじゃんか! これで心置きなくやれるな、『忘年会』♪」

「「「おう!」」」

 席に座った三人に、静流が労いの声をかけた。

「追試クリア出来たんだね? おめでとう!」

「サンキュー静流!」
「やったぞ、 お静!」
「頑張ったよ。 シズルン♪」

 三人は満面の笑みでそれに応えた。



              ◆ ◆ ◆ ◆



 後から来た三人もドリンクバーを頼み、それぞれ好みの飲み物を飲みながら追試の時のエピソードを語った。

「いやぁ助かったぜ。 子ロディ様様だよ♪」
「あのナビがあったから何とかなったんだ。 足向けて寝れねぇな!」

 そう言って外していたメガネを取り出した二人。
 睦美は、何か言いたそうな顔をしているイチカに声をかけた。

「篠原、 どうした?」
「殿下。 数学の追試の時、 子ロディちゃんの声が聞こえなかったんです……」
「何を悩んでいるのだ? 問題は出来たのだろう? 結果オーライじゃないか」
「でも、 原因というか、 理由が知りたいなぁ、 って……」

 イチカはそう言って、口をとんがらせた。
 それを見た睦美は、親が子に言い聞かせるように、微笑みながらイチカに言った。

「これは親ロディから聞いたのだが、 お前はあの時、 あの飴玉を二個丸飲みしたな?」
「え? あ、 はい」
「その時に親ロディは感じたらしい。 お前の脳内のシナプスが活性化したのを」

 シナプスとは、神経細胞であるニューロンや、他の細胞を繋いであらゆる信号を伝達する役割の器官である。

「それって、 どう言う事?」
「つまりお前は、飴玉を飲み込んだ事が切欠で、自ら『アーカイブ』に接続して情報を引き出したのだ」
「って事は、要するに?」

 睦美の説明に、達也は首を傾げながら聞いた。

「いわゆる『ゾーン』に入った状態だな。 限定的に『天才』になったと言っても過言ではない」
「そう言えばあの時、 どんな問題でも解けるって思った……」
「そんな事が可能なんですか?」

 静流は驚いて睦美に聞くが、睦美は少し呆れながら答えた。

「何をいまさら。 静流キュン、 キミはもう普通に使っているではないか『ゾーン』を」
「僕が? 『ゾーン』を使ってる?」
「ああ。 キミは子ロディのナビを使わずとも、 脳内の『アーカイブ』から情報を引き出して使っている。 それが『ゾーン』」

 睦美の説明に、静流はふと思った。

「だとしたら、達也やお蘭さんだって『ゾーン』を使う事が出来るんじゃ?」
「確かに。 今回の篠原のケースは偶然だったが、 可能性は大いにある」 
「具体的には、 どんな方法があるんです?」

 静流の問いに、睦美は少し考えたあと、ゆっくりと答えた。

「そうだな。 『ゾーン』に入る際のあらかじめ決まった『キー』になる行為を設定する事が可能なら、 あるいはな」
「つまり、『ゾーン』に入るためのスイッチ、 ですか?」

「ああ。 お前たちにも『アーカイブ』はあるんだ。 何らかの方法でスイッチを設定出来れば、シナプスを活性化出来よう」
「そんな事が? 俺たちにも?」
 
 達也は蘭子と顔を見合わせた。

「ああ。 脳を常時フル回転するのは無理があるが、 テストの時間位は何とか出来るだろう」

 達也が何かを思い出した。

「そういやぁ静流、 約束、 忘れてねぇよな?」
「ん? 何を?」
「とぼけんなよ。 追試が上手くいった時のご褒美、 だよ♪」

 子ロディを貸し出す際、静流たちがした約束とは、追試が無事に終わった時、子ロディに自分の好みの者に変身してもらう事だった。

「ああその事か。 イイよ。 あと一晩貸してあげる」

「「「うほぉー!」」」

 静流からOKを貰い、三人は興奮の余り立ち上がった。

「ただし! 子ロディの行動は全部親ロディに筒抜けだからね? その意味、わかるよね?」
「わ、 わかってるって……」

 静流に疑いの眼差しを向けられ、三人は苦笑いしながら席に座った。



              ◆ ◆ ◆ ◆



 話題はこの後行われる今年最後のイベントである、軍の保養施設で行う忘年会の事になった。

「静流キュン、 先ずは参加人数のチェックをしようか?」
「そうですね。 ええと……」

 静流はノートを取り出し、参加者リストを作り始めた。


 静流は、軍の保養施設に招待するメンバーを確認している。
 内訳はこうだ。


 都立国分尼寺魔導高校メンバー 18名

 ・五十嵐 静流
 ・柳生 睦美
 ・東雲 楓花
 ・立川 要
 ・黒瀬 ミサ
 ・白井 ミサ
 ・板倉 こずえ
 ・早乙女 素子
 ・仁科 真琴 
 ・井川 シズム
 ・土屋 達也
 ・伊藤 朋子
 ・篠崎 イチカ
 ・加賀谷 蘭子
 ・片山 左京

 ・日吉 ムム
 ・木ノ実 ネネ

 ・兵藤ヤス子


 聖アスモニア修道魔導学園 7名

 ・ヨーコ・C・ミナトノ
 ・アンナ・ミラーズ
 ・ナギサ・キャタピラ
 ・サラ・リーマン

 ・ニニ・フジサワ
 ・カチュア・キサラギ
 ・ジルベール・ハクトー


 市立国分尼寺第三中学校メンバー 2名
 
 ・五十嵐 美千留
 ・上條 カナ子


 ミフネ・エンタープライゼス 4名
 (兼シズム及びゼブラッチョのグラビア撮影) 

 ・三船シレーヌ
 ・鳴海ショウコ
 ・荒井由真
 ・小松右京


 近親者等 6名

 ・五十嵐 モモ
 ・五十嵐 薫
 ・五十嵐 薫子
 ・篠 田 サブリナ
 ・葛 城 雪乃
 ・黒 田 忍


 計37名


「とりあえずこんな感じかな?」
「おや? 母上殿は参加されないのかい?」

 睦美は不思議そうに静流に聞いた。

「確かに。 おばさん、 温泉なら意地でも付いて来そうなのに……」

 睦美の疑問に、真琴も同感だったようだ。 

「母さんはモモ伯母さんが来るなら行かないって。 まだその時じゃないって言ってました……」
「そうか……まぁ仕方ないか」
「あとは軍の人だけど、多分こんな感じだろうね……」
 
 軍関係の参加予定メンバーは、以上であった。


 アスガルド駐屯地 4名

 ・アマンダ・キサラギ
 ・ニナ・イシカワ
 ・リリィ・有坂 
 ・レベッカ・フレンズ


 薄木基地 ブラッディシスターズ 7名

 ・榊原 郁
 ・村雨 佳乃
 ・永井 澪
 ・朝霧 萌
 ・工藤 美紀
 ・工藤 真紀
 ・白木 みのり

 ダーナ・オシー駐屯地 カラミティ・ロージーズ 5名

 ・竜崎 ココナ
 ・村上 夏樹
 ・植木 瞳
 ・谷井 蛍
 ・大江 万里

 
 太刀川駐屯地 2名

 ・宗方 ジェニー
 ・藤堂 ルリ


 その他 1名

 ・峰岸 フジ子

 計19名


「んと、合計で56名か。結構な人数になったな……」
「当初ざっくりで50名で考えていたのだから、 ほぼ予定通りじゃないか」

 大方の人数が決まったあと、静流は顎に手をやり、ぼそっと呟いた。

「あとは宴会の時の出し物か……」
「そうだな。 何か案はあるかい?」
「夏にやった時は、 ほとんどアマンダさん達が考えてくれたから。 ビンゴとか」
「その件は技術少佐殿とも相談しないとな。 よし、 私が調整しよう」
「ありがとうございます。 睦美先輩」パァァ

 静流は今日イチの笑顔を睦美に向けて放った。

「ぐぎゅ!? ま、 任せてくれ!」

 睦美は静流のニパを不意打ち気味に食らい、そう答えるのが精いっぱいだった。
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