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第9章 冬の……アナタ、どなた?

エピソード56-27

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宴会場『プロメテウス』の間

 アダルトチームからモモとネネが脱落し、代わりにアマンダがヤングチームからコンバートして来た。

「と言う事で、 よろしく♪」

 アマンダはすました顔で鳴海とジルの間に割り込んだ。

「お手柔らかに、 お願いします」チャ
「大丈夫。 朔也は私に微笑むのです!」

 面白く思っていないのはカチュアだった。

「アマンダ! アンタにジン様は渡さないからっ! フンッ!」
「そんなの運でしょ? 勝手に決めないで頂戴! フンッ!」

「「きぃ~っ!!」」  

 年甲斐もなくにらみ合う如月姉妹だった。
 ほぼ同時に、ヤングチームで動きがあった。

「ほーい。 私もパス」
「え? 美千留ちゃん!?」

 脱落希望者は美千留だった。
 驚いたカナ子が美千留に聞いた。

「ホントに辞めちゃうの? 美千留ちゃん?」
「うん。 もう飽きたし、 しず兄ならいつでも触れるから……」

 妹の特権とでも言うのか、しれっとそんな事を言う美千留。

「ズルい! ズル過ぎるよ美千留ちゃん!」
「いつでも!? 羨ましいですぅ……」

 アンナが叫び、サラがぼやいた。

「静流様が朝起きると、 布団の中に美千留ちゃんが……エモエモですぅ♡」

 右京が妄想を膨らませてニヤついている。

「じゃ。 あとよろしく」
「了解しました。 おおっと! ヤングチームの美千留嬢が脱落です!」

 美千留は睦美にそう言うと、睦美が脱落を認めた。

「この飾りの大根もらう。 イイよね?」

 美千留はそう言うと、返事を待たずに刺身の横にあるツマをがばっと取って、醤油皿に盛った。
 すると、ダッシュ7の手がわずかに動いた。

『むっ!? 新手か……』

「えっ!? 今、 動いた?」 

 ツマを頬張る美千留が、驚いて周囲に聞いた。

「まさか、 ツマにも当たり判定が!?」
「完全に盲点でありました! 美千留様ナイスであります!」

 澪は驚愕し、佳乃は美千留を絶賛した。
 今の一部始終は、隣のアダルトチームにも衝撃を与えた。

「何ですって? ツマも対象なの?」
「食べられるのですか? アレは……」

 カチュアたちも驚き、ジルは別の意味で驚いていた。
 周囲がざわめいたのを見て、睦美が補足した。

「えー、 只今の件ですが、 当たりの対象になりうるかの判定について、 基本的に食べられる物であればこれに該当すると言う事です!」

 睦美の解説に、一同は不服だった。

「そう言うの、 最初に言ってよね?」 
「後出しはダメでしょう? 『ノックスの十戒』は守らないと」
「別に推理小説じゃないんだから、 そんなのどうでもイイ」

 そんな声を完全に無視し、睦美は一同に告げた。

「はーい! この後の演目も御座いますので、早急にゲーム再開をお願いしまーす!」



              ◆ ◆ ◆ ◆



宴会場『ダイダロス』の間

 静流たちのテーブルで他愛ない話をしていたラチャナだったが、ふと腕時計を見てほくそ笑んだ。

「さぁて、 ぼちぼち時間ね♪ キシシシ」

 ラチャナはそう言うと、悪戯っ子みたいに無邪気に笑った。

「アノ薬って、『媚薬』とかじゃないんスよね? どんな反応するんだ?」
「体の異変って、 そんなにわかるんですか?」
「まぁ見てなって。 例えばこんな感じ?」

 達也と静流に聞かれ、ラチャナは適当なテーブルを顎で指した。そこには式神コンパニオンとじゃれ合っている高級将校がいた。

「大丈夫ぅ? 飲みすぎたんじゃないのぉ?」
「ワシが若い頃は、 この位序の口じゃったが。 歳かのう?」
「この後頑張れるの? 奥さん待ってんでしょ?」
「そう言われてものう……ワシのせがれが言う事を聞くかどうか……」

 式神に心配され、気を落とす将校。
 そんな将校に、式神が耳打ちをした。

「大丈夫ぅ。 アタシがおまじないして……ア・ゲ・ル♡ フゥ」
「はう……ホ、 ホントかえ?」
「イイ? 楽にしててねぇ……」

 そう言って式神は、手をテーブルの下に入れ、将校の股間を優しく撫でた。

「おおきくなぁれ♡」サワサワ 


「は……はっぴょーん♡♡♡」


 将校の背筋がピンと立ち、トロンとしていた目がクワッっと見開いた。
 式神がズボンのファスナーを降ろし、パンツに手を入れて股間の具合を確かめた。

「どぉ? こんなに元気になったよ? アタシのおまじない、 効いたでしょ?」
「おぉ……こんなにも立派に。 この感覚……何十年ぶりかのう」

 それを聞いても、式神は手の動きを止めなかった。

「はぁ、はぁ……もう我慢出来ん! 頼む! ワシの相手をしてくれんか?」

 将校がそう言うと、式神はピタッと手を止めた。

「ダーメ。 この続きは上で待ってる奥さんと。 ね?」
「お、おお。 そうじゃった。 スマンスマン」

 将校はもぞもぞとズボンを整え、すくっと立ち上がった。

「スマン! 用事を思い出した! お先に失礼する!」

 そう言って将校は、少し前かがみになりながら出口へと歩いて行った。

「何じゃいアイツは! 飲みが足らんのではないか?」
「歳には逆らえんな。 ホッホッホ」
「夜はこれからじゃと言うのに。 なぁ? お嬢ちゃん?」
「さぁ、 気を取り直して飲もうのもう♪」

 手が空いた式神は、手をおしぼりで念入りに吹きながら、一瞬静流たちの方を見てVサインをした。
 一部始終を観察していた静流たちに、ラチャナは親指を立て、ウィンクして得意げに言った。

「はい! 一丁上がりっと♪」グッ!

 そんなラチャナに、静流たちはあからさまに嫌悪感を抱いた。  

「え、えげつな……」
「とんでもないミッションですね……」

 しかし、薫のリアクションは違った。

「クックック。 面白れぇ! 惚れたよアンタ!」
「へ? 惚れた!? 私に? 嘘でしょ?」

 ラチャナは薫の惚れっぽい癖を知らない為、真に受けている。 

「どうしよう……告られちゃった……」

 顔を赤らめたラチャナは両手を頬に当て、『恋する乙女ポーズ』を取った。

「えと、 あのですね、 薫さんの『惚れた』は非常に軽い意味でして……」

 それを見た静流が、言いにくそうにラチャナに告げた。

「あぁ、 それな! 俺も部屋で会った時にアニキに開口一番に言われたぜ? 『惚れた』って」

 達也がそう言うと、ラチャナは急に真顔に変わり、ボソッと呟いた。

「大人をからかうんじゃないの。 もう……」

 残念そうにも見える、拗ねた態度のラチャナ。
 その仕草に、静流は思わず呟いた。

「カ、カワイイ……」 
「ぬ!? キミまで冗談言わないのっ! 怒るよ!」

 静流とじゃれているラチャナに、少しイラついたエスメラルダが言った。

「油を売っとらんで、 早く次を仕留めんか!」
「り、 了解!」

 はたと我に返ったラチャナは、任務の続きに取り掛かかった。
 興味津々の静流たちは、任務を再開させたラチャナに注目していた。

「……恥ずかしいから、 見ないで」

 ラチャナは赤くなった顔を手で覆った。
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