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23 カレン目線

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「兄様、どういう事!?」
授業中が終わり、すぐに高等部に向かい、また女と一緒に帰ろうとしている所を、引き剥がして連れて帰ってきた。
どいつもこいつも、何様のつもりよ。この私に対して睨みつけてくるなど、無礼すぎるわ。
公爵令嬢で未来は国妃なのよ。まあ、どこの家の令嬢が全て網羅済みですから、後で泣いても知りませんわ。
「どういう事も何も、お前がやり過ぎだんだよ」
兄様の部屋で私の前にいる兄様がお茶をいれながらつまらなさそうに答える態度が、本当にクズにしか見えませんでした。
同じ血が通っていると到底思えない、諦めの速さと頭の回転が無さ過ぎです。
「やり過ぎ、とは何ですの?」
「フランを押してアザを作ったんだろ?ハーバルは叩いて、酷く腫れていると言う事で、なんかすげー顔に包帯巻いて学園に来てるみたいだし」
「あの方々大袈裟なのよ。ちょっと叩いて、押したくらいですわ。女性の私がそのように強くできる筈がありません。まんまと皆様が嵌められているのです。そんな事も分からないのですか兄様は!?」
「ブライアンが言ってきたんだ。2人の処置は王宮おかかえの医師がやってくれた。カレンは少しやり過ぎだから、俺の方から言ってくれないか、て。自分が言うと事が大きくなりそうだか、と」
「なんですの!?何を兄様も流されてるのよ!フランがたぶらかしてるからこんな事になっているのでしょう!?兄様が上手く立ち回りさえすればこのような事になっておりません!朝見たでしょう!週末でもないのに、王宮からブライアン様と馬車で通ってきて、何様のつもりですか!あの場所には私が相応しいんだから!どうにかしなさいよ!!」
「どうにか、と言うがどうやってだよ。お前だって謹慎食らっただろうが。その上お前の後始末を父上もされているんだ」
面倒くさそうに言うのに、また腹が立ってくる。
今テスト期間の為学園に登校しているが、このテストが終われば2週間の謹慎を言われている。
その上、多額の慰謝料をトッリュー伯爵家ではなく、王宮から請求された、と憤然とお父様が怒鳴っていた。その上、
何故、相応しくないもの達を叱責して金を取られるのだ、と。
その通りでございます。
逆に授業料として貰うべきだ、と。
その通りでございます。
ブライアン様も見た目に騙されていた、と気づくのが常軌だ、と。
その通りでございます。
いや、あの鈍重さブライアン様を惑わせているのだわ。自分が側にいなければ何も出来ない、護ってやる、と言う姑息であざとい手を使い純朴なブライアン様をだましているのだ。
あのクソ女!!
「兄様分かるでしょ!?どうやったら婚約破棄になるか!!」
「ああ、そういう事か」
なんでこんなに馬鹿なの。考えればすぐ分かるじゃない。
「純潔が虚偽だった場合。不義を働いた場合」
「その通りでございます。残念ながら、今更前者はありえませんわ。だったら後者しかないでしょ。あのバカ女なら何か不義があればすぐ破棄するわ」
「不義、て。フランにそんな事あるか?それに、本気でブライアンがお前を選ぶと思ってるのか?」
「兄様、逆に私以外に誰がふさわしいと思ってるの?言ってみなさいよ!」
なんでそんな呆れた顔をするのよ。
諦めるように溜息をつくが、全く理解できない。
どの女も、礼儀がなっていないし喚くし、騒がしいし、ふざけた事ばかりしかしない。ブライアン様の妻はつまり、王妃が約束されている、国の頂点にたつ女性なのだ。
そんな適当に、その辺の貴族ができるわけが無いし、フランが選ばれるのが間違いなのだ。
そうよ。ブライアン様はきっと、自分の過ちに今まさに、気づいておられるわ。それが言えない状態になってきているのだ。
その瞬間、パン、と弾くように宜しい案が浮かびました。
そう、ですわ。簡単な事でしたわ。この役に立たない兄様に頼めばどうせヘマしかしません。
「兄様、私気付きましたわ。ブライアン様が選んだのはフランであれば、邪魔する事が悪女のようですわね」
「と、どうした、急に!?」
目を丸くさせ、胡散臭そうに私を凝視した。
「いいえ、私も愚かではありません。これ以上すればお父様の立場も悪くなりますし、兄様も、私も体裁がありまし、フランが不義を働く人ではありませんものね」
「いや・・・だから、何故そんな事言い出すんだ?」
あまりの私の豹変に狼狽えるが、ここで奥の手、涙を出した。
「そうね、お疑いになるのも分かりますが、本当に申し訳なかったと思っています」
ハンカチで吹きながら、また、涙が零すと、ほっと安堵のため息が聞こえた。そっと見ると、単細胞生物の兄様は涙ぐんでいた。
はっ。バーカ。
「そうか、そうだな。カレンもやっと分かってくれたのか」
「ええ、勿論よ。謹慎中深く反省するわ」
時が来るまで大人しくしてあげるわ。

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