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ウィンザー
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おれは「そう言えば、」と重い重量のある椅子をズルズルとルーの近くに持っていくと座り直す。
部屋に窓が無いとは言え、あまり大きな声で話す様な内容では無いと思われたからだ。
「ちょっと気になったんだけどさ。なんでそんなに難しくしちゃうわけ? エレノア様だって、軟禁されてるのも、ちょっとわかんないんだけど。エレノア様とピュルテジュネ王が離婚しちゃダメなの? そうしたら戦も起こらないし、アンリ様とマグリット様だって・・・。それに、リシャールとアデル様も婚約破棄しちゃえば良いんじゃないの? 」
「お前。そんなのできるわけないじゃないか。王族だぞ?」
ルーは少し体を起こすとおれの正面になるように体制を変えて座り直すと自分が王族かのようにふんぞり返っている。
「だって。エレノア様だって、一回離婚してるじゃん。」
「あれは。・・・教会が許したからだろ。」
ふんぞり返っていたルーはおれの顔を見ながら、歯切れの悪い返事をする。
「え? 教会に許してもらわないとダメなの? 別に勝手にしても良いんじゃないの?」
「そんな事したら破門されるんだろよ。」
「でも、夫婦喧嘩で戦争になるより、破門のほうがマシじゃん。」
「お前。王が破門になると、大変なんだぞ。王の管轄の領地はすべて破門だからな。そうなると一番大変なのが、葬式も埋葬も出来なくなる事らしいぞ。屍体はその辺に放置するしかなくなるし、教会がやってる貧乏人への施しもなくなる。そうなると街には屍体が溢れ、窃盗や犯罪も増える。」
「あー。そっか。それはちょっと・・・。大変かも。・・・ひょっとして騎士も?」
「ああ。オレたちも教会で誓って騎士になるからな。遠征の補助も宿舎もなくなるよな。多分。」
「じゃ、せめて婚約破棄は? ただの約束じゃん? 」
「嫁には持参金を持たせるのが普通だからな。アデル様だと、オーマーレ領と、ユウ領だな。それらを手放す事になるし、アデル様の父のカペー家との政略的な話もあるから、離婚も婚約破棄も難しいんだ。結婚するだけで領土が増えるからな。」
「ぐぬぬぬ。政略は、それはソウかもだけど・・・。そもそもなんで教会はそんなにうるさいんだよ。いいじゃん好きにして!!」
おれは悔しくなって、長椅子の上で窮屈そうに足を組むルーの膝をバシバシと叩いた。
「だから、お前は突然オレにキレるなって! しらねぇよ! 教会に聞けよ! 」
この世界で一番強いのは王様だと思っていたけれど、実は教会なのだろうか、とも思えてくる。
とりあえず、リシャール。
こんな大変な世界で生きていたのか。
策略謀略にまみれてて一息も出来ないじゃないか。コレでは。
商人とか農民も大変だけど、殺伐としてない分、気持ち楽な気がしてくる。
「あれ? そう言えば。リシャールが教会に捕まってたのって、ひょっとして・・・。」
「アレは、オレたちが色々理由をつけて教会でお説教してもらうように手配したんだ。シチリアからの船を降りた瞬間からとっ捕まえてブチ込んでやった。アイツを自由にさせてると無い噂も事実の様に湧き上がってくるからな。まぁ、今回は有る事実をごまかすためだったが・・・。アイツも納得済みだから、それなりに我慢はしてたみたいだったが。1ヶ月もったか? どうだったかな。」
くっくっくっと、ルーはその時の様子を思い出しているのか、愉快そうに笑っている。
おれは何だか面白く無い気持ちで、ルーの側を離れると暖炉側のテーブルに移動する。
リシャールに子どもが居たことはショックだったけど、考えようによっては、その事件がなければ、おれたちは出会ってなかったという事になる。
マグリット様の身の上も知れば知るほど、胸が苦しくなる。
二人はアデル様の策略に巻き込まれただけなんだ。
こんな事考えるアデル様は、おれも苦手だ。
権力の好きな女かぁ。
でも、何で婚約者のリシャールを陥れる必要が有るんだろう。
アデル様はすでに王の愛人なのに。
自分で書いた相関図を見ながらため息をついていると、扉をノックする音が聞こえた。
「宴の時刻でございます。」
そう執事に呼ばれ、おれ達は大広間へと移動した。
ーーーあとがきーーー
相関図大活躍。
部屋に窓が無いとは言え、あまり大きな声で話す様な内容では無いと思われたからだ。
「ちょっと気になったんだけどさ。なんでそんなに難しくしちゃうわけ? エレノア様だって、軟禁されてるのも、ちょっとわかんないんだけど。エレノア様とピュルテジュネ王が離婚しちゃダメなの? そうしたら戦も起こらないし、アンリ様とマグリット様だって・・・。それに、リシャールとアデル様も婚約破棄しちゃえば良いんじゃないの? 」
「お前。そんなのできるわけないじゃないか。王族だぞ?」
ルーは少し体を起こすとおれの正面になるように体制を変えて座り直すと自分が王族かのようにふんぞり返っている。
「だって。エレノア様だって、一回離婚してるじゃん。」
「あれは。・・・教会が許したからだろ。」
ふんぞり返っていたルーはおれの顔を見ながら、歯切れの悪い返事をする。
「え? 教会に許してもらわないとダメなの? 別に勝手にしても良いんじゃないの?」
「そんな事したら破門されるんだろよ。」
「でも、夫婦喧嘩で戦争になるより、破門のほうがマシじゃん。」
「お前。王が破門になると、大変なんだぞ。王の管轄の領地はすべて破門だからな。そうなると一番大変なのが、葬式も埋葬も出来なくなる事らしいぞ。屍体はその辺に放置するしかなくなるし、教会がやってる貧乏人への施しもなくなる。そうなると街には屍体が溢れ、窃盗や犯罪も増える。」
「あー。そっか。それはちょっと・・・。大変かも。・・・ひょっとして騎士も?」
「ああ。オレたちも教会で誓って騎士になるからな。遠征の補助も宿舎もなくなるよな。多分。」
「じゃ、せめて婚約破棄は? ただの約束じゃん? 」
「嫁には持参金を持たせるのが普通だからな。アデル様だと、オーマーレ領と、ユウ領だな。それらを手放す事になるし、アデル様の父のカペー家との政略的な話もあるから、離婚も婚約破棄も難しいんだ。結婚するだけで領土が増えるからな。」
「ぐぬぬぬ。政略は、それはソウかもだけど・・・。そもそもなんで教会はそんなにうるさいんだよ。いいじゃん好きにして!!」
おれは悔しくなって、長椅子の上で窮屈そうに足を組むルーの膝をバシバシと叩いた。
「だから、お前は突然オレにキレるなって! しらねぇよ! 教会に聞けよ! 」
この世界で一番強いのは王様だと思っていたけれど、実は教会なのだろうか、とも思えてくる。
とりあえず、リシャール。
こんな大変な世界で生きていたのか。
策略謀略にまみれてて一息も出来ないじゃないか。コレでは。
商人とか農民も大変だけど、殺伐としてない分、気持ち楽な気がしてくる。
「あれ? そう言えば。リシャールが教会に捕まってたのって、ひょっとして・・・。」
「アレは、オレたちが色々理由をつけて教会でお説教してもらうように手配したんだ。シチリアからの船を降りた瞬間からとっ捕まえてブチ込んでやった。アイツを自由にさせてると無い噂も事実の様に湧き上がってくるからな。まぁ、今回は有る事実をごまかすためだったが・・・。アイツも納得済みだから、それなりに我慢はしてたみたいだったが。1ヶ月もったか? どうだったかな。」
くっくっくっと、ルーはその時の様子を思い出しているのか、愉快そうに笑っている。
おれは何だか面白く無い気持ちで、ルーの側を離れると暖炉側のテーブルに移動する。
リシャールに子どもが居たことはショックだったけど、考えようによっては、その事件がなければ、おれたちは出会ってなかったという事になる。
マグリット様の身の上も知れば知るほど、胸が苦しくなる。
二人はアデル様の策略に巻き込まれただけなんだ。
こんな事考えるアデル様は、おれも苦手だ。
権力の好きな女かぁ。
でも、何で婚約者のリシャールを陥れる必要が有るんだろう。
アデル様はすでに王の愛人なのに。
自分で書いた相関図を見ながらため息をついていると、扉をノックする音が聞こえた。
「宴の時刻でございます。」
そう執事に呼ばれ、おれ達は大広間へと移動した。
ーーーあとがきーーー
相関図大活躍。
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