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1章 ロンテーヌ兄妹
61 ブレスレット手形
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あれから数週間が経ち、馬車でミランとエリが領へ帰還した。
「お嬢様。では、これで完成ですね」
と、ミランは上機嫌だ。
今、私の部屋で領民登録の手形の話をしている。
ミランは私に、完成した領民登録の手形の現物を見せる為にわざわざ帰ってきてくれた。その他に、王都での仕事でお爺様に直接サインが必要なものがあるらしいけど。
あと、今回帰還に馬車を利用したのは、事業の為に交流があるように見せる狙いもあったそうだ。今までは冬の社交シーズンや、お兄様の休暇ぐらいしか王都とロンテーヌ領の交流がなかったからね。
「そうね。このブレスレット型でいいんじゃない?使用する際に荷物にならないし、落下防止にもなるわ。それにシンプルだから男性でも似合うデザインね」
ミランは、領民登録用の手形を『革のブレスレットの表に専用の印章を焼印し、個人情報は他人に見えない様に内側に、熱く熱した鉄筆で革を焼いて書く』と決めた。
この素材に関しては、印章をどうにか描く事を念頭に、銀色の金属の予定だったんだけど、領民全員分となると時間もコストも割り高になるから難しくなった。じゃぁ、木を加工するかとなったが、今回の新しい商品のキックボードの製作で、木が足りなくなるかもしれないと却下になったそう。それならば、革があるじゃないかとなり、加工がしやすく直ぐにでも取りかかれると言う理由で革に決定した。
偽造防止に関しては、専用の印章と革に魔法で細工をしてみた。これが結構いい出来になったんだよ!
領民は魔法が使えないので、ただ『魔法がかかっている特別な革』と教えてある。カラクリは『マーサの魔法陣+ランドの水魔法=完全防水仕様』に仕上げた。効果は『絶対に水が染み込まない』だ。だから、役場で作ったブレスレットかどうかを、簡単にチェックができるという事だ。街のお店でも誰でも。ちょっと水に濡らせばすぐ判る。こうして、ミラン念願の手形が完成した。
その他、規則も作り、既に領民達には通達済だそう。
『領民手形を無くした場合や、革が切れた場合、字が消えた場合は、役場に持ってくれば新しいのと交換になる。紛失した場合も再発行になる。その際は、証人として、家族かブレスレットを持った領民を連れてくる事と、再発行からはお金が発生する事。また、役場に保管してある住民名簿に何時、何回交換したかを書いて、ブレスレットにも何回目の数字を焼印する事』で案は落ち着いた。
「大変だったわね。お疲れ様。旅の疲れもあるでしょう?少し休んだら?」
「いえいえ、お嬢様。馬車は移動だけですので中で仕事が出来ましたし、お昼寝も出来ましたよ!久しぶりの旅で、息抜きにもなりました。少し、エリがはしゃぎすぎてうるさかったですが。。。有意義な道中になりましたよ。実は、帰りはランド様にお願いできるので、片道だけならあまり苦ではありません。心配ご無用です」
ミランは形になった領民登録と手形がうれしいみたい。終始笑顔だ。
「では、これでミランから役場に引き継いで、役場の仕事になるのね?今後ミランの仕事は、今まで通り商品の仕入れ交渉と新しい商会の準備になるのかしら?」
「そうですね。商会の手続きは父が必要になりますので。私が乗ってきた馬車で、今度は父が王都へ向かいます。いや~しかし、貧乏が幸いしましたね。この領民登録と手形は、数が少ない今だからこそ、地盤をしっかりと固める事が出来ました。今後の領地管理にとても役立ちます。毎年の税金の確認作業だけでも数段手間が省けました。ご主人様の領主の仕事が軽くなって、とてもいいアイデアです。やった甲斐がありました」
よかった。事業の事もあるし、お爺様が楽できれば万々歳じゃん。
「そうなのね。役に立ったのね。うれしいわ!」
「それで、お嬢様。話は変わりますが、商会の名前等をお考えになったとか。伺ってもいいでしょうか。会社設立の手続きに必要なのです」
ワクワクとミランは目を輝かせている。
困ったな。。。大した名前が思いつかなかったんだけど。。。
「ええ。いくつか候補があるから一緒に選んでくれない?自信がなくて。。。」
「いえ。大丈夫です。選んでも結局『どれが1番気になりますか?』となり、恐らくお嬢様の案になりますよ。問題ありません。そもそもお嬢様のお店のようなものなんですから。お嬢様が名付けるのが1番しっくりきますよ」
そんな理由?は~。諦めるか。
「では、ごほん。まず商会の名前は『ロクサーヌ』です。ロンテーヌ領を連想しやすい響きにしました。走る道具は『スルーボード』で、領の服のブランドは『テーヌ』です。上の服が『テーヌトップス』で下の服が『テーヌガウチョ』です」
何個か前世の言葉が混じってるけど、まっ、問題ないよね~。本当に情けないネーミング。。。
ほうほうと、ミランは質問せずにそのままメモをする。
「しかし、この走る道具、スルーボードですか?これを早く試してみたいですね。自分が王都執事なのが悔しいです。第1号を試走出来ないなんて!」
ミランは新しいもん好きなのか?好奇心旺盛だからね~。悔しいんだろうな。
「ふふふ。冬前に完成する予定だけど、直ぐに雪が積もっちゃうわ。どうせ、春にしか思いっきり走れないわよ。それに、服も試作品ができない事には、私は乗れないもの」
「私は乗れます。お嬢様の代わりに色々レポートしてみたかった」
ミランは想像しただけでワクワクが止まらないそうで、あ~したいこ~したいと話している。
「道路の関係もあるから、当分はその辺りで遊ぶだけになるでしょうけどね」
『それでも、いいんです』と、ミランははしゃいでいる。しばらく世間話をして、ミランとの楽しい会議は終了した。
「私は今回、領民学校の指導もしていきますので、今後はダンが中心となって進めます。今の所、領民からは苦情がありませんので、この冬から始動するでしょう。あと、新年までには商会と会社は書類上は設立済みになりますよ。春までに店舗を探し、へちまんとサボン、歯磨き棒とオランジュを並べます。道路云々がありますので、スルーボードは飾り程度の販売になります。テーヌの上下服は数量限定販売になるでしょうが、一応、販売予定です。商会立上げを前倒しした分、取り急ぎ数十着だけですが、販売できる様にナダルと調整中です。平民用なので既製品なのが救いでしたね。新年の夜会頃には、お嬢様用の第1号の服ができるそうですよ。楽しみにしておいてください!では、新年にまたお会いしましょう」
ミランは3日後にもう王都へ帰るそうだ。忙しいんだね、みんな。嫌味の一つも言わずによく働いてくれる。ありがたい。
一方、ケイトはエリと何やら相談中だった。
「お嬢様、ご相談がありまして。今後、学校へ通うようになったら、週末は領へ帰って来るのでしょうか?」
ん?
「そうしたいけど。。。どうしたの?」
「いえ、私が王都へ数週間滞在して感じたのですが、新規事業のおかげか、お茶会のお誘いや急な訪問者が結構いらっしゃいまして。王都にお嬢様が居ない事がバレる恐れがあるのではないかと。ですので、誤魔化す為に、私かケイトは王都に残った方がいいのではないかと、相談しておりました。お嬢様はどう思われます?」
エリは心配してくれている。
そうだよね、ランドの事は秘密だもんね。しかも、私付きの侍女が屋敷に居ないとなると変だよね。。。病気で寝込んでいる設定にしても、買い物に出かけて留守にしているにしても。
「そうね。。。侍女が二人とも居ないのは不自然ね。一度、お爺様に相談するわ。実は、私も気にはなっていたの。今回、事業が更に大きくなるでしょう?そうなると使用人や領官僚も増えるじゃない?今までの様に少人数ではなくなるから、人の目が気になるなと。そうなると、大型の休暇しか帰れなくなるのかしら。。。」
う~ん。
まぁ、王都に居て、必要な時だけ帰って、泊まりは無しにすればいいのかな。でも遊べないじゃん。。。
「でもしょうがないわよね。事業を優先しないと。。。私のわがままを通すわけにはいかないわ。王都での学校期間中、お兄様がそうだった様に、大型休暇の時だけ領へ帰る事でいいと思うわ。ランドの移動に関しても、事業で早急に必要だったから、便利使いしちゃったわけだしね。今後、落ち着けば通常通り馬車で移動してもいいわね。ランドはあくまで緊急用に留めなくちゃ」
「そうですか?でもお嬢様は息抜きに帰りたいのですよね。。。私もロダン様に相談してみますね」
ケイトは、どうにかして私の希望を叶えようと考えてくれる。
「ケイト、いつもありがとう!大好きよ!エリも!」
と、ぎゅっと抱きついた。
「お嬢様!」
と、怒られたけど声が笑っている。ケイトになでなでしてもらい、私は『休みの日はこっそり領で遊ぶ』プランに諦めをつけた。
「お嬢様。では、これで完成ですね」
と、ミランは上機嫌だ。
今、私の部屋で領民登録の手形の話をしている。
ミランは私に、完成した領民登録の手形の現物を見せる為にわざわざ帰ってきてくれた。その他に、王都での仕事でお爺様に直接サインが必要なものがあるらしいけど。
あと、今回帰還に馬車を利用したのは、事業の為に交流があるように見せる狙いもあったそうだ。今までは冬の社交シーズンや、お兄様の休暇ぐらいしか王都とロンテーヌ領の交流がなかったからね。
「そうね。このブレスレット型でいいんじゃない?使用する際に荷物にならないし、落下防止にもなるわ。それにシンプルだから男性でも似合うデザインね」
ミランは、領民登録用の手形を『革のブレスレットの表に専用の印章を焼印し、個人情報は他人に見えない様に内側に、熱く熱した鉄筆で革を焼いて書く』と決めた。
この素材に関しては、印章をどうにか描く事を念頭に、銀色の金属の予定だったんだけど、領民全員分となると時間もコストも割り高になるから難しくなった。じゃぁ、木を加工するかとなったが、今回の新しい商品のキックボードの製作で、木が足りなくなるかもしれないと却下になったそう。それならば、革があるじゃないかとなり、加工がしやすく直ぐにでも取りかかれると言う理由で革に決定した。
偽造防止に関しては、専用の印章と革に魔法で細工をしてみた。これが結構いい出来になったんだよ!
領民は魔法が使えないので、ただ『魔法がかかっている特別な革』と教えてある。カラクリは『マーサの魔法陣+ランドの水魔法=完全防水仕様』に仕上げた。効果は『絶対に水が染み込まない』だ。だから、役場で作ったブレスレットかどうかを、簡単にチェックができるという事だ。街のお店でも誰でも。ちょっと水に濡らせばすぐ判る。こうして、ミラン念願の手形が完成した。
その他、規則も作り、既に領民達には通達済だそう。
『領民手形を無くした場合や、革が切れた場合、字が消えた場合は、役場に持ってくれば新しいのと交換になる。紛失した場合も再発行になる。その際は、証人として、家族かブレスレットを持った領民を連れてくる事と、再発行からはお金が発生する事。また、役場に保管してある住民名簿に何時、何回交換したかを書いて、ブレスレットにも何回目の数字を焼印する事』で案は落ち着いた。
「大変だったわね。お疲れ様。旅の疲れもあるでしょう?少し休んだら?」
「いえいえ、お嬢様。馬車は移動だけですので中で仕事が出来ましたし、お昼寝も出来ましたよ!久しぶりの旅で、息抜きにもなりました。少し、エリがはしゃぎすぎてうるさかったですが。。。有意義な道中になりましたよ。実は、帰りはランド様にお願いできるので、片道だけならあまり苦ではありません。心配ご無用です」
ミランは形になった領民登録と手形がうれしいみたい。終始笑顔だ。
「では、これでミランから役場に引き継いで、役場の仕事になるのね?今後ミランの仕事は、今まで通り商品の仕入れ交渉と新しい商会の準備になるのかしら?」
「そうですね。商会の手続きは父が必要になりますので。私が乗ってきた馬車で、今度は父が王都へ向かいます。いや~しかし、貧乏が幸いしましたね。この領民登録と手形は、数が少ない今だからこそ、地盤をしっかりと固める事が出来ました。今後の領地管理にとても役立ちます。毎年の税金の確認作業だけでも数段手間が省けました。ご主人様の領主の仕事が軽くなって、とてもいいアイデアです。やった甲斐がありました」
よかった。事業の事もあるし、お爺様が楽できれば万々歳じゃん。
「そうなのね。役に立ったのね。うれしいわ!」
「それで、お嬢様。話は変わりますが、商会の名前等をお考えになったとか。伺ってもいいでしょうか。会社設立の手続きに必要なのです」
ワクワクとミランは目を輝かせている。
困ったな。。。大した名前が思いつかなかったんだけど。。。
「ええ。いくつか候補があるから一緒に選んでくれない?自信がなくて。。。」
「いえ。大丈夫です。選んでも結局『どれが1番気になりますか?』となり、恐らくお嬢様の案になりますよ。問題ありません。そもそもお嬢様のお店のようなものなんですから。お嬢様が名付けるのが1番しっくりきますよ」
そんな理由?は~。諦めるか。
「では、ごほん。まず商会の名前は『ロクサーヌ』です。ロンテーヌ領を連想しやすい響きにしました。走る道具は『スルーボード』で、領の服のブランドは『テーヌ』です。上の服が『テーヌトップス』で下の服が『テーヌガウチョ』です」
何個か前世の言葉が混じってるけど、まっ、問題ないよね~。本当に情けないネーミング。。。
ほうほうと、ミランは質問せずにそのままメモをする。
「しかし、この走る道具、スルーボードですか?これを早く試してみたいですね。自分が王都執事なのが悔しいです。第1号を試走出来ないなんて!」
ミランは新しいもん好きなのか?好奇心旺盛だからね~。悔しいんだろうな。
「ふふふ。冬前に完成する予定だけど、直ぐに雪が積もっちゃうわ。どうせ、春にしか思いっきり走れないわよ。それに、服も試作品ができない事には、私は乗れないもの」
「私は乗れます。お嬢様の代わりに色々レポートしてみたかった」
ミランは想像しただけでワクワクが止まらないそうで、あ~したいこ~したいと話している。
「道路の関係もあるから、当分はその辺りで遊ぶだけになるでしょうけどね」
『それでも、いいんです』と、ミランははしゃいでいる。しばらく世間話をして、ミランとの楽しい会議は終了した。
「私は今回、領民学校の指導もしていきますので、今後はダンが中心となって進めます。今の所、領民からは苦情がありませんので、この冬から始動するでしょう。あと、新年までには商会と会社は書類上は設立済みになりますよ。春までに店舗を探し、へちまんとサボン、歯磨き棒とオランジュを並べます。道路云々がありますので、スルーボードは飾り程度の販売になります。テーヌの上下服は数量限定販売になるでしょうが、一応、販売予定です。商会立上げを前倒しした分、取り急ぎ数十着だけですが、販売できる様にナダルと調整中です。平民用なので既製品なのが救いでしたね。新年の夜会頃には、お嬢様用の第1号の服ができるそうですよ。楽しみにしておいてください!では、新年にまたお会いしましょう」
ミランは3日後にもう王都へ帰るそうだ。忙しいんだね、みんな。嫌味の一つも言わずによく働いてくれる。ありがたい。
一方、ケイトはエリと何やら相談中だった。
「お嬢様、ご相談がありまして。今後、学校へ通うようになったら、週末は領へ帰って来るのでしょうか?」
ん?
「そうしたいけど。。。どうしたの?」
「いえ、私が王都へ数週間滞在して感じたのですが、新規事業のおかげか、お茶会のお誘いや急な訪問者が結構いらっしゃいまして。王都にお嬢様が居ない事がバレる恐れがあるのではないかと。ですので、誤魔化す為に、私かケイトは王都に残った方がいいのではないかと、相談しておりました。お嬢様はどう思われます?」
エリは心配してくれている。
そうだよね、ランドの事は秘密だもんね。しかも、私付きの侍女が屋敷に居ないとなると変だよね。。。病気で寝込んでいる設定にしても、買い物に出かけて留守にしているにしても。
「そうね。。。侍女が二人とも居ないのは不自然ね。一度、お爺様に相談するわ。実は、私も気にはなっていたの。今回、事業が更に大きくなるでしょう?そうなると使用人や領官僚も増えるじゃない?今までの様に少人数ではなくなるから、人の目が気になるなと。そうなると、大型の休暇しか帰れなくなるのかしら。。。」
う~ん。
まぁ、王都に居て、必要な時だけ帰って、泊まりは無しにすればいいのかな。でも遊べないじゃん。。。
「でもしょうがないわよね。事業を優先しないと。。。私のわがままを通すわけにはいかないわ。王都での学校期間中、お兄様がそうだった様に、大型休暇の時だけ領へ帰る事でいいと思うわ。ランドの移動に関しても、事業で早急に必要だったから、便利使いしちゃったわけだしね。今後、落ち着けば通常通り馬車で移動してもいいわね。ランドはあくまで緊急用に留めなくちゃ」
「そうですか?でもお嬢様は息抜きに帰りたいのですよね。。。私もロダン様に相談してみますね」
ケイトは、どうにかして私の希望を叶えようと考えてくれる。
「ケイト、いつもありがとう!大好きよ!エリも!」
と、ぎゅっと抱きついた。
「お嬢様!」
と、怒られたけど声が笑っている。ケイトになでなでしてもらい、私は『休みの日はこっそり領で遊ぶ』プランに諦めをつけた。
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