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2章 魔法使いとストッカー

59 降臨 1

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「~しません、しません、しませんーんーんー」

 と、泉の先の滝が流れ出る小山に木霊する。私がイタズラしたわけじゃないからちょっとモヤるけどね。

「… 何も起きない?」
「…」
「…」

 ランドがボソッと呟いた途端、私の手首が雷が落ちたように一瞬だけ光りふっと消えた。

「まっぶし! 目が痛い。前が見えないよ~」

 ズサっと足が動く音が聞こえた以外、誰も答えてくれない。沈黙が続く。

「え? 何? 見えないんだけど! ロダン? ランド? 誰か! リットは? マーサ?」

 誰も答えない。どう言うこと???

 しばらくして視界がクリアになっていく。ガランとした広い泉、遠くには滝、そして私の手首はというと輪が消えていた。

「やった! 消えてる! ねぇ、消えたよ」

 と振り返ると、四人とも膝をつき額に汗を流しながら神妙な顔でうつむいている。

「へ?」
 
 もしかして! と、私はみんなが礼をするその先、像のある方へ首をゆっくり動かした。

「!!!」

 声にならない私に微笑む女神様。女神様??? 本物?
 大口を開けたまま上から下まで確認する。後光が差し黒ずんでいるはずの石像が、綺麗な白い陶器なような美しい女神様に変わっていた。

 マジの女神様だ。

「し、失礼いたしました。ホセミナ様。私はジェシカ・ロンテーヌと申します」

 深い深いカーテシーをし、これでもかってぐらい頭を垂れた。ビビった~。

『ふふふ、ジェシカいいのよ。顔を見せて』

 恐る恐る顔を上げると後光が消えたホセミナ様が立っていた。光が消えてもめっちゃきれい。キラキラしている。

『ジェシカ、いつも見ていますよ。今回は災難だったわね。でもグランドに声をかけたのは英断だったわ』

「は、はい」

 女神様はロダン達を見て再度微笑んだ。

『そこの者達も楽にしていいわよ』

 四人共、蒼白な顔で汗がびっしょり流れているが恐る恐る顔を上げている。しかし目線はホセミナ様の足先で堪えていた。私はそんな四人が心配になってきた。
 え? 大丈夫なの? すごいんだけどあの汗。
 オロオロしている私と四人を交互に見てホセミナ様は面白そうに

『ふふふ、光に当てられたのかしら? 魔力量が… 少し足りないわね。そこのローブの者。他の者を連れて離れていなさい』

 ホセミナ様は四人の中で一番魔力量が多いランドを指名して、百メートルぐらい離れた場所を指差した。頷いたランドは三人の肩を叩いて周る。圧に耐え続けていたみんなは、ハッと我に返りヨタヨタと離れていった。

『ジェシカ、私が姿を現した理由はわかるかしら?』

 イタズラしたから? まさかね~。それは違う。絶対違う気がする。

「いえ。申し訳ございません」

『そう… 困ったわね。真理に触れられない私としては、自身で少しは勘づいてもらっていないと、助言が言えないのよ』

 真理? 真実の出来事? 実際起きている現象? に触れられない、つまり言葉にできない。そして、助言。これからのヒントで合ってる?

「恐らくでよろしければ、いくつかは…」

『そうね… 口に出さなくていいから思い浮かべてみて?』

 私はいくつかの問題を思い浮かべる。私に関係し、国に、この世界に関係するもの…。

『… いくつか合っているわ。私は未来へ続く出来事をあなたと今は話せない。これは世界の理。が人間だけを、しかも一人だけを助けることは出来ない。許してちょうだいね』

「心得ております」
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