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2章 魔法使いとストッカー
58 もうしません! 2
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「では、この翻訳したものを私の手元にも残すことを許して下さい」
思わず声に出てしまった。ロダン怒るかな… 後ろを見れない。
「ははは、いいだろう。そんなことでいいのか? 欲があるのかないのか」
「はい?」
いやいや、勝手に書き写したのに。しかも、さっき言ったようにすごい物なのに、アダム様?
「お前のことだ、写本していることは想定内だ。それに今現在でこの翻訳が正確かどうか判断できるのは、お前以外いないのだから、こちら側は価値も取り扱いとしても以前と変わらん。まぁ、我々は懐が大分助かるが。ありがとう」
え~! 何? 他にない? 何か損してる気分になってきた。
「… 勝手に写本したので、怒られないのならこれでいいです。じゃぁ、今後も翻訳するものがあるなら、写本が報酬でいいですか?」
「まぁ、モノによるが… 概ねいいだろう」
しゃー! 言質とりましたよー!
「この度はありがとうございました」
「またな、ジェシカ」
アダム様はほくほく顔でエド様たちの元へ戻って行った。私たちはエド様一行を見送った後、ルーベン様達が洞窟の外のキャンプ地へ向かうのを見届けてから、こっそり転移した。
「すご~い!!! きれい!」
キラキラと水面が輝く湖畔。近くのうっそうと繁る林の木陰に着いた。ここは国の南方、エール公爵領の『女神の泉』である。
「滝に虹がかかってるよ! 見て見てマーサ!」
マーサはさっと身支度を整えてくれながら私に『そうですね』と微笑んでいるが少し緊張気味だ。リットとランドは早速周囲に注意を払っている。ロダンは湖の方へ向かって行った。
「リット、大丈夫そう?」
「あぁ、人影はないな。ランドはどうだ?」
「こっちも魔法らしき気配はないようだ」
キョロキョロと周囲を見回った二人が戻った頃、ロダンも戻ってきた。
「お嬢様、現在湖には誰もいません。早速参りましょう。で? これからどうなりますか?」
そうだった。ロダン達はグランド様に問われた『女神の泉』のヒントだけで来たんだった。
「あのね、この輪はあの賢者様の日記にあった『お仕置きの輪』で間違いなかったわ。それで、この泉で教えてもらった古代呪文を言ったらいいそうよ。結局、呪いじゃなかったわ、よかった。だから『神龍の角』は関係なかったの」
「なるほど。それは上々と言うべきか。ちなみに、泉のどことはおっしゃっていましたか? 結構広いので、上手とか下手とか場所に指定はありましたか?」
しまった。聞いてない。
「ごめんなさい。聞いてないわ。こんなに広いとは…」
って、泉だからてっきり池程度かと思っていたら…。ん? 石碑がある何だろう? ロダンがどうしようかと悩んでいる横で覗き込む。
『この泉は紀元前、創生主の女神ホセミナ様が身を清められたという聖なる伝説がある。特に女神の滝と言われる三本に流れる滝は「知恵」「豊穣」「健康」にご利益があると言い伝えられている』
へ~。女神の滝ね~。観光名所的になってるのかな? 石碑の横にまぁまぁデカイ女神像も立っていた。
「ロダン、この女神様の近くでいいんじゃない? 女神様に祈る感じで呪文を言えばいいんじゃない?」
「はぁ、まぁ、一度試してみますか。ダメならまた場所を変えましょう」
ロダンは女神様の像周辺を再度確認している。念入りだな。
「いい?」
私は泉に近づき手首を突き出した。リットがロダンと目配せし『うん』と頷く。リット、ランド、ロダンが私を囲みマーサはランドの外側に立つ。そして、私は日本語で叫んだ。
『ホセミナ様、許して下さい。もう、しません!!!』
思わず声に出てしまった。ロダン怒るかな… 後ろを見れない。
「ははは、いいだろう。そんなことでいいのか? 欲があるのかないのか」
「はい?」
いやいや、勝手に書き写したのに。しかも、さっき言ったようにすごい物なのに、アダム様?
「お前のことだ、写本していることは想定内だ。それに今現在でこの翻訳が正確かどうか判断できるのは、お前以外いないのだから、こちら側は価値も取り扱いとしても以前と変わらん。まぁ、我々は懐が大分助かるが。ありがとう」
え~! 何? 他にない? 何か損してる気分になってきた。
「… 勝手に写本したので、怒られないのならこれでいいです。じゃぁ、今後も翻訳するものがあるなら、写本が報酬でいいですか?」
「まぁ、モノによるが… 概ねいいだろう」
しゃー! 言質とりましたよー!
「この度はありがとうございました」
「またな、ジェシカ」
アダム様はほくほく顔でエド様たちの元へ戻って行った。私たちはエド様一行を見送った後、ルーベン様達が洞窟の外のキャンプ地へ向かうのを見届けてから、こっそり転移した。
「すご~い!!! きれい!」
キラキラと水面が輝く湖畔。近くのうっそうと繁る林の木陰に着いた。ここは国の南方、エール公爵領の『女神の泉』である。
「滝に虹がかかってるよ! 見て見てマーサ!」
マーサはさっと身支度を整えてくれながら私に『そうですね』と微笑んでいるが少し緊張気味だ。リットとランドは早速周囲に注意を払っている。ロダンは湖の方へ向かって行った。
「リット、大丈夫そう?」
「あぁ、人影はないな。ランドはどうだ?」
「こっちも魔法らしき気配はないようだ」
キョロキョロと周囲を見回った二人が戻った頃、ロダンも戻ってきた。
「お嬢様、現在湖には誰もいません。早速参りましょう。で? これからどうなりますか?」
そうだった。ロダン達はグランド様に問われた『女神の泉』のヒントだけで来たんだった。
「あのね、この輪はあの賢者様の日記にあった『お仕置きの輪』で間違いなかったわ。それで、この泉で教えてもらった古代呪文を言ったらいいそうよ。結局、呪いじゃなかったわ、よかった。だから『神龍の角』は関係なかったの」
「なるほど。それは上々と言うべきか。ちなみに、泉のどことはおっしゃっていましたか? 結構広いので、上手とか下手とか場所に指定はありましたか?」
しまった。聞いてない。
「ごめんなさい。聞いてないわ。こんなに広いとは…」
って、泉だからてっきり池程度かと思っていたら…。ん? 石碑がある何だろう? ロダンがどうしようかと悩んでいる横で覗き込む。
『この泉は紀元前、創生主の女神ホセミナ様が身を清められたという聖なる伝説がある。特に女神の滝と言われる三本に流れる滝は「知恵」「豊穣」「健康」にご利益があると言い伝えられている』
へ~。女神の滝ね~。観光名所的になってるのかな? 石碑の横にまぁまぁデカイ女神像も立っていた。
「ロダン、この女神様の近くでいいんじゃない? 女神様に祈る感じで呪文を言えばいいんじゃない?」
「はぁ、まぁ、一度試してみますか。ダメならまた場所を変えましょう」
ロダンは女神様の像周辺を再度確認している。念入りだな。
「いい?」
私は泉に近づき手首を突き出した。リットがロダンと目配せし『うん』と頷く。リット、ランド、ロダンが私を囲みマーサはランドの外側に立つ。そして、私は日本語で叫んだ。
『ホセミナ様、許して下さい。もう、しません!!!』
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